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ブータンのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公表した統計によると、ブータンのニンジン・カブ類の生産量は2003年以降、急速な増加と減少を繰り返す不安定な動向を示しています。特に、生産量が4,351トンに躍進した2004年以降、2009年や2021年に著しい落ち込みが見られる一方、2016年や2017年には持ち直し、2023年には4,645トンに回復しました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 4,645
27.29% ↑
2022年 3,649
-9.57% ↓
2021年 4,036
-66.85% ↓
2020年 12,172
14.11% ↑
2019年 10,667
7.97% ↑
2018年 9,879
-28.61% ↓
2017年 13,838
17.52% ↑
2016年 11,775
2.24% ↑
2015年 11,517
7.5% ↑
2014年 10,713
1.9% ↑
2013年 10,514
22.55% ↑
2012年 8,579
377.14% ↑
2011年 1,798
-36.75% ↓
2010年 2,843
-70.52% ↓
2009年 9,643
-22.6% ↓
2008年 12,459
-21.01% ↓
2007年 15,773
13.39% ↑
2006年 13,911
41.11% ↑
2005年 9,858
126.57% ↑
2004年 4,351
5550.65% ↑
2003年 77 -

ブータンの農業統計からは、特にニンジンやカブといった根菜類の生産量が、2003年から2023年までの20年間で波のある動きを見せていることが分かります。2003年の生産量はわずか77トンでしたが、翌年には4,351トンと一気に増加し、2007年には15,773トンでピークに達しました。しかしながら、その後は環境的、経済的、社会的要因が絡み合い、生産量は減少と増加を繰り返しています。

ブータンはヒマラヤ山脈に位置しており、その地理的条件や農業の基盤が限られていることが、この不安定な生産量の背景に影響を与えていると考えられます。例えば、山岳地帯での農業では耕作地の広さや灌漑(かんがい)の整備が制約されるため、気候変動や自然災害(例えば洪水や地滑り)の影響を受けやすいです。加えて、労働力の減少や農業技術の普及不足も課題として挙げられます。

2021年と2022年にかけての大幅な減少は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けた可能性が高いです。多くの国と同様に、ブータンでも移動制限やサプライチェーンの寸断が問題となり、農作物の生産や輸送が難しくなったと推測できます。この時期はまた、農業従事者の減少や、都市部への人口流出も深刻化していた時期でもあります。

一方で、2020年や2023年に見られるような生産量の回復は、政府や国際機関の支援プログラムの成果の表れである可能性があります。ブータン政府は近年、農村部の生活向上を目的とした政策を採用しており、生産効率を高めるための教育や農業インフラの強化が行われています。しかし、全体的な生産の拡大には、更なる投資や国際的な協力が必要不可欠です。

ブータンのような小規模農業国において、ニンジンやカブのような根菜類の生産は国民の食生活を支える重要な役割を果たしています。そのため、今後安定した生産を確保するためには、3つの具体的な対策が考えられます。第一に、気象データを活用したスマート農業の導入です。これにより、悪天候や災害への事前対応が可能となります。第二に、灌漑設備や農機具の活用を増やし、生産性を向上させることが必要です。そして第三に、若年層への農業教育を強化することで、後継者不足の解消と技術力アップを目指すべきです。

また、地域間の連携や隣国インドとの協力も重要です。インドは農業技術や輸送網の面で進んでいるため、ブータンに技術を供与することで互恵的な関係を築くことが可能です。他方で環境保全を柱とした農業「オーガニック」の推進を図り、輸出用高付加価値野菜として育成することも、国の経済利益に繋がると考えられます。

結論として、ブータンのニンジン・カブ類の生産は依然として不安定であるため、国内外での積極的な支援が求められます。特に環境対策と技術革新、そして効率的な国際協力が進めば、こうした根菜類の供給はより安定し、地域住民の食生活や収入増加にも寄与するでしょう。この努力が実現すれば、ブータン農業全体の持続可能性向上や、ひいては経済基盤の強化にも繋がることが期待されます。