国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、ブータンにおけるキュウリ類の生産量は、2007年から2009年にかけて増加したものの、それ以降は減少と増加を繰り返しつつ、2023年には1,037トンと、過去17年間で最低水準に落ち込んでいます。この傾向は、国内および地域の農業動態や気候条件、社会経済的要因に関連している可能性があります。
ブータンのキュウリ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 1,037 |
-7.9% ↓
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2022年 | 1,126 |
-5.72% ↓
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2021年 | 1,194 |
-39.38% ↓
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2020年 | 1,970 |
-26.81% ↓
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2019年 | 2,691 |
21.51% ↑
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2018年 | 2,215 |
13.69% ↑
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2017年 | 1,948 |
63.38% ↑
|
2016年 | 1,192 |
-29.71% ↓
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2015年 | 1,696 |
-31.74% ↓
|
2014年 | 2,485 |
4.46% ↑
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2013年 | 2,379 |
-0.08% ↓
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2012年 | 2,381 |
-14.84% ↓
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2011年 | 2,796 |
10.47% ↑
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2010年 | 2,531 |
-12.45% ↓
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2009年 | 2,891 |
24.87% ↑
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2008年 | 2,315 |
36.35% ↑
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2007年 | 1,698 | - |
ブータンのキュウリ類の生産量は、2007年の1,698トンから2009年の2,891トンまで増加した後、一転して2023年には1,037トンまで減少を続けてきました。この間、ブータンの生産量は大きな変動が見られますが、その背景には主に三つの要因が考えられます。
まず一つ目に、ブータンの地理的条件や気候変動の影響が挙げられます。この地域は山岳地帯が多く、耕作可能な土地が限られているうえ、気候変動による降雨パターンの変化や気温変動が、農作物の生育環境を不安定にしています。2015年から2023年にかけての生産量の着実な減少は、これらの環境的要因の影響を受けていると推測されます。
二つ目は、農業インフラの発展や投入資源の制約です。他国と比較すると、ブータンは農業技術やインフラが発展途上にあり、肥料や農薬の利用が十分ではないと指摘されています。例えば、日本や韓国などの農業先進国では、生産性を高めるために高度な技術を利用している一方で、ブータンではこれらの技術が十分導入されていないことが、生産の減少につながっている可能性があります。
三つ目に、社会経済的状況とパンデミックの影響が影を落としている点が挙げられます。特に2020年以降の新型コロナウイルスの影響により、労働力の不足や物流の停滞が生産体制に大きな打撃を与えた可能性があります。これは、生産量が2019年の2,691トンから2020年には1,970トンと急激に減少した動きを説明する要因となりえます。
また、2023年の1,037トンというデータは、ブータン国内だけでなく、国際的な食糧供給の安定性に対する懸念も示唆しています。他国と比較すると、インドや中国といった近接地域ではキュウリ類の生産は引き続き安定しているため、ブータンの地域競争力を高めるためには、さらなる努力が求められる状況といえます。
これらの課題に対処するために、いくつか具体的な対策が必要です。一例として、気候変動に対応した栽培技術の普及や、灌漑設備などのインフラ整備を進めることが重要です。また、農業分野における技術革新に投資し、効率的な生産体制を構築する取り組みが求められます。さらに、近年のパンデミックのような突発的な事象による影響を軽減するため、サプライチェーンの強化や労働力の安定確保も必要です。
加えて、ブータンの特性である有機農業の推進を活用し、国際市場での差別化を図ることも有望な戦略といえます。特に環境に優しい農業生産は、世界的に需要が高まっているため、高付加価値商品としてのマーケティングを強化することが期待されます。
総じて、現在のブータンのキュウリ類生産状況は、多くの課題を抱えていますが、それらに対応するための具体的な政策を打ち出し、地域的・国際的な協力を強化すれば、持続可能な発展に向けた道筋を見出す可能性があります。これにより、食糧供給の安定のみならず、農村経済の振興にも寄与する成果が上がることが期待されます。