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ブータンの牛乳生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月時点の最新データによると、ブータンにおける牛乳生産量は長期的には増加傾向を示しています。特に2018年以降急激な伸びを見せ、2019年には過去最大値である61,899トンを記録しました。しかしながら、2022年には46,757トンと減少に転じるなど、不安定な動きもみられます。このデータは、ブータンの農業政策や乳製品市場における課題を浮き彫りにすると同時に、持続可能な農業の発展への重要性を示しています。

年度 生産量(トン)
2022年 46,757
2021年 58,892
2020年 62,246
2019年 61,899
2018年 56,805
2017年 50,251
2016年 47,270
2015年 39,844
2014年 34,807
2013年 30,920
2012年 29,625
2011年 27,396
2010年 25,720
2009年 25,692
2008年 22,883
2007年 20,059
2006年 21,437
1990年 36,740
1989年 31,676
1988年 29,030
1987年 29,062
1986年 28,953
1985年 30,285
1984年 30,224
1983年 30,076
1982年 30,010
1981年 29,868
1980年 27,900
1979年 27,475
1978年 27,306
1977年 26,495
1976年 25,941
1975年 24,873
1974年 24,062
1973年 23,468
1972年 23,171
1971年 22,617
1970年 22,063
1969年 21,509
1968年 20,955
1967年 20,401
1966年 19,847
1965年 19,550
1964年 18,996
1963年 18,442
1962年 18,145
1961年 17,591

ブータンの牛乳生産量データは、初期の1961年にはわずか17,591トンと非常に少なかったものの、時間の経過と共に着実な増加を見せました。特に1970年代半ばから1980年代初頭にかけては、年々の増加率が安定しており、伝統的な酪農技術の進化や農村部のインフラ整備の進展が裏付けられます。しかし、1986年以降には短期間とはいえ下降傾向がみられ、この時期には地域的な食糧生産量低下の影響が考えられます。その後、1990年に36,740トンまで大きく回復したことは、政府による農業政策の見直しや外部の援助が影響した可能性があります。

2000年代以降のデータをみると、2007年から生産量が一時的に急減しており、この変化は国内外の地政学的リスクや国内市場の停滞による影響が疑われます。ただし、2010年代後半に急激な回復がみられ、2019年には61,899トンという過去最高値を記録しています。この時期には技術革新や人口増加に対応するための乳製品生産拡大政策が進められていたと考えられます。一方で、近年の2021年以降は再び落ち込みが見られ、2022年には46,757トンに減少しました。この減少の原因には、新型コロナウイルス感染症に伴う市場の混乱や供給網の問題などが挙げられます。

ブータンは、地形的条件や資源の限界から大量生産には向いていませんが、持続可能な農業の実現に向けた取り組みに注力することが求められています。具体的には、効率的かつ環境に配慮した農業技術の導入や、地域ごとの適切な畜産計画の策定が重要です。また、国内外の市場ニーズに応じた供給調整も課題として挙げられます。たとえば、日本や韓国のように先進的な技術を取り入れた酪農の効率化や、フランスのような小規模農家の支援体制を参考にすることが有効でしょう。

今後、ブータンが直面する課題には、気候変動や自然災害の影響が含まれる可能性があります。山岳地帯の多い地理的条件が災害リスクを高めているため、これらが生産技術や物流に及ぼす影響を加味した政策が求められるでしょう。また、乳製品の自給率を一定に保ちながら、余剰分を近隣諸国への輸出ビジネスに転換することで、経済の活性化にもつなげられるのではないでしょうか。

結論として、ブータンにおける牛乳生産は全体として増加を続けており、酪農業は同国の経済と食料供給において重要な産業です。FAOのデータが示す現状を踏まえると、課題の解決には先進国の技術導入、農業政策の継続的見直し、そして地政学的リスクを見越した柔軟な対応策が不可欠です。