国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年7月に更新された最新データによれば、ブータンのオレンジ生産量は1961年から2022年にかけて変動を示しています。1961年には16,000トンであった生産量が、1980年代半ばには約55,000トンまで増加した後、1990年代から2000年代初期にかけて減少傾向に転じました。2011年には63,609トンとピークを迎えたのち、2015年以降30,000トン以下に減少し、2022年には18,467トンに達しています。このデータは、生産環境や気候変動、人為的要因などがオレンジ生産にどのように影響を与えているかを反映したものです。
ブータンのオレンジ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 18,467 |
2021年 | 15,966 |
2020年 | 25,661 |
2019年 | 27,529 |
2018年 | 26,527 |
2017年 | 28,017 |
2016年 | 42,003 |
2015年 | 15,977 |
2014年 | 41,485 |
2013年 | 49,069 |
2012年 | 49,501 |
2011年 | 63,609 |
2010年 | 52,621 |
2009年 | 42,112 |
2008年 | 46,385 |
2007年 | 48,506 |
2006年 | 55,558 |
2005年 | 48,367 |
2004年 | 31,915 |
2003年 | 36,300 |
2002年 | 37,300 |
2001年 | 32,428 |
2000年 | 30,000 |
1999年 | 39,330 |
1998年 | 40,590 |
1997年 | 44,503 |
1996年 | 46,724 |
1995年 | 50,090 |
1994年 | 52,139 |
1993年 | 58,000 |
1992年 | 57,900 |
1991年 | 57,800 |
1990年 | 57,700 |
1989年 | 55,000 |
1988年 | 54,000 |
1987年 | 53,100 |
1986年 | 27,000 |
1985年 | 26,000 |
1984年 | 38,672 |
1983年 | 28,000 |
1982年 | 26,800 |
1981年 | 25,600 |
1980年 | 25,400 |
1979年 | 25,200 |
1978年 | 25,000 |
1977年 | 24,000 |
1976年 | 23,500 |
1975年 | 23,000 |
1974年 | 22,500 |
1973年 | 22,000 |
1972年 | 21,500 |
1971年 | 21,000 |
1970年 | 20,500 |
1969年 | 20,000 |
1968年 | 19,500 |
1967年 | 19,000 |
1966年 | 18,500 |
1965年 | 18,000 |
1964年 | 17,500 |
1963年 | 17,000 |
1962年 | 16,500 |
1961年 | 16,000 |
ブータンにおけるオレンジ生産は、その農業分野の重要な一部を占めています。特に国内外での輸出品としても評価されるオレンジは、農村部の持続可能な所得源として地域社会に貢献しています。FAOのデータによると、1961年の段階での16,000トンから1980年代にかけて順調に生産量が増加し、1987年には53,100トン、1990年には57,700トンとなり、1990年代の初頭に生産のピークを迎えました。しかしながら、その後のデータは生産の伸びが停滞し、一部の年では大幅な減少も見られます。特に2015年以降は非常に不安定な推移となり、2021年には15,966トンという大きな落ち込みが確認されています。
この生産量の変動要因としては、複数の要因が絡み合っています。まず、気候変動の影響が強く関連していると考えられます。ブータンは山岳地帯に位置し、一部の地域では温度上昇や降水量の不規則性が作物生産に悪影響を及ぼしています。さらに、オレンジの木に影響を与える疫病の流行や、害虫被害も時期によっては重大な課題です。例えば、2015年以降の低迷は、主に病害虫被害や老齢化した樹木の生産力低下によるものである可能性が指摘されています。
他のオレンジ生産国と比較すると、ブータンの2022年データである18,467トンという数値は、日本のオレンジ生産(約200,000トン)や中国(約3,000万トン)と比べても非常に小規模です。生産規模の面において、ブータンは国内需要や限定的な輸出市場に特化している状況と言えます。一方で、ブータン特有の高品質なオレンジは国際市場でニッチな競争力を持つ可能性もあり、持続可能な農業政策次第でさらなる市場拡大が期待されます。
地政学的な観点から見ると、ブータンのオレンジ生産はインドとの貿易関係に大きく依存しています。インドはブータンオレンジ輸出の主要な市場であり、これにより農村経済の成長を支えています。しかし、大規模な生産量の減少は、貿易収支や地域の経済的安定に影響しかねません。このため、持続的な生産を維持するための対策が必要です。
今後の課題として挙げられるのは、まず生産地の気候変動への適応です。適応可能な耐病品種の導入や、気候に応じた農作物管理技術の普及が急務です。また、国内農家の経済力強化や、病害虫対策を支援するインフラ整備なども欠かせません。さらに、政府や国際機関の協力を通じて市場の多角化を図ることで、インド依存からの経済リスク軽減が期待されます。
結論として、ブータンのオレンジ生産量推移は、農業部門に影響を与える自然的および経済的要因の複雑性を反映しています。持続可能な生産を確保するためには、政府や国際機関、そして現地農家が一体となり、新しい農業技術や市場戦略を模索していく必要があります。また、気候変動や地政学的背景に基づくリスクを考慮した柔軟な政策を構築することで、ブータンの農業全体の安定化と強化が可能になると考えられます。