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ブータンの豚飼育数推移(1961-2022)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ブータンにおける豚飼育数は1961年から2022年にかけて大きく変動しています。1960年代から1980年代半ばまではゆるやかな増加傾向を示していましたが、その後、急激な増減を繰り返し、近年においても不安定な推移を見せています。2022年の飼育数は33,082頭で過去数年と比較すると増加傾向にありますが、全体的な長期の低下傾向は否定できません。

年度 飼育数(頭)
2022年 33,082
2021年 22,954
2020年 17,577
2019年 20,070
2018年 21,810
2017年 18,815
2016年 15,324
2015年 15,727
2014年 14,204
2013年 15,373
2012年 29,484
2011年 18,810
2010年 19,711
2009年 22,184
2008年 25,476
2007年 26,966
2006年 25,743
2005年 28,161
2004年 35,255
2003年 38,548
2002年 40,088
2001年 40,829
2000年 41,401
1999年 52,264
1998年 52,000
1997年 49,294
1996年 61,010
1995年 47,691
1994年 45,968
1993年 45,000
1992年 44,534
1991年 50,000
1990年 59,598
1989年 63,285
1988年 65,891
1987年 73,287
1986年 88,600
1985年 60,079
1984年 58,900
1983年 57,742
1982年 56,610
1981年 55,500
1980年 54,000
1979年 54,000
1978年 53,500
1977年 53,000
1976年 52,500
1975年 52,000
1974年 52,000
1973年 51,800
1972年 51,500
1971年 51,000
1970年 50,900
1969年 50,700
1968年 50,500
1967年 50,000
1966年 49,000
1965年 48,000
1964年 47,000
1963年 46,000
1962年 45,000
1961年 44,000

1961年以降、ブータンの豚飼育数はまず安定的な増加を見せました。特に1980年代初頭には持続的な伸びが観察され、1985年には60,079頭に到達しています。これは当時、農業や畜産業が経済の中心であり、家畜の増加が政府や農業政策によって奨励されていたことが背景にあると考えられます。しかし、1986年には88,600頭と急増した後、大幅な減少が見られるようになり、1990年代以降は一貫して減少する傾向が顕著になりました。

特に2005年から2011年にかけて飼育数は急激に低下し、28,161頭から18,810頭にまで減少しました。そして2013年には15,373頭と記録的な低水準に達しました。この下降の要因としては、養豚業の採算性の低下、飼料供給の困難、農村部の人口減少、さらには豚肉需要そのものの減少が挙げられる可能性があります。加えて、疫病や感染症の発生、農村地域での家計経済の転換も大きな影響を与えたと考えられます。

しかしながら、2022年には飼育数が33,082頭となり、近年の増加傾向が見られます。この回復には、政府の農村地域支援政策や新たな技術導入、さらには従来の飼育方法の改善が寄与していると考えられます。特に2021年から2022年にかけての増加は顕著で、これは飼料となる農作物の供給改善が一因と考えられます。また、新型コロナウイルスの影響により、国民の地元産食材への関心が高まり、地産地消の取り組みや小規模な自給的養豚が進展したことも関係していると見られます。

ブータンの豚飼育数の推移を他国と比較すると、人口が同程度の国や近隣国であるネパールやバングラデシュに比べ、豚の生産が特に低いことが明らかです。中国やインドのように豚肉が多く消費される国々とは異なり、ブータンでは文化的・宗教的背景から豚肉の需要がやや低水準にあると言えます。この点は豚飼育業界の成長に対する鍵となる課題となります。

今後の課題として、安定した飼料供給体制の確立、育種技術の向上、感染症対策の強化が挙げられます。また、伝統的な農業形態に根付いた養豚業をいかに近代化し、かつ環境に配慮した持続可能な形態へと移行していくかが重要です。さらに、地元市場における豚肉製品の需要を喚起するマーケティングキャンペーンや、輸出を視野に入れた生産体制の整備も必要です。

地政学的背景を考慮すると、ブータンは陸に囲まれた内陸国であり、周辺地域と良好な貿易関係を築くことが飼料の輸入や豚肉製品の輸出において重要な役割を果たします。しかし近年では、自然災害やパンデミックの影響が、国内供給網や市場需要を円滑に保つことを妨げています。これに対応するためには、地域間協力や災害時の備蓄体制の強化が求められます。

結論として、最新データからは、ブータンの豚飼育数が一時的な回復傾向を見せる一方で、長期的な低迷を克服するには多くの課題が残されていることが示されています。今後、政府や国際機関の協力を得て、養豚業の持続可能性と競争力の向上に向けた包括的対策が必要です。また、地域経済の自立や農村振興を目指した政策の一環として養豚業を位置づけることで、地元経済と環境の両方に利益をもたらす可能性があります。