国連の食糧農業機関(FAO)が提供する最新データによれば、ブータンのヤギ飼養頭数は1961年に15,000頭で安定したスタートを切りました。その後、1980年代には劇的に増加し、一部の年では50,000頭を超える急騰も見られました。しかし、1991年の急落以降、大きな変動を繰り返しながらも、近年では再び増加傾向を示しています。2022年には56,004頭となり、1961年から2022年までに約3.7倍に達しました。このデータはブータン国内の農業や経済、そして社会構造の変化を反映していると考えられます。
ブータンのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 56,004 |
2021年 | 59,577 |
2020年 | 44,119 |
2019年 | 47,735 |
2018年 | 43,839 |
2017年 | 42,689 |
2016年 | 39,513 |
2015年 | 41,983 |
2014年 | 48,864 |
2013年 | 39,264 |
2012年 | 39,019 |
2011年 | 43,734 |
2010年 | 43,134 |
2009年 | 38,618 |
2008年 | 39,099 |
2007年 | 28,300 |
2006年 | 22,207 |
2005年 | 20,507 |
2004年 | 23,850 |
2003年 | 22,950 |
2002年 | 24,071 |
2001年 | 22,950 |
2000年 | 31,328 |
1999年 | 36,007 |
1998年 | 36,000 |
1997年 | 35,593 |
1996年 | 36,320 |
1995年 | 35,109 |
1994年 | 26,731 |
1993年 | 20,000 |
1992年 | 14,500 |
1991年 | 25,100 |
1990年 | 36,909 |
1989年 | 32,594 |
1988年 | 36,847 |
1987年 | 48,055 |
1986年 | 28,000 |
1985年 | 29,283 |
1984年 | 25,307 |
1983年 | 22,548 |
1982年 | 18,820 |
1981年 | 16,966 |
1980年 | 16,500 |
1979年 | 16,300 |
1978年 | 16,100 |
1977年 | 16,000 |
1976年 | 16,000 |
1975年 | 15,900 |
1974年 | 15,800 |
1973年 | 15,700 |
1972年 | 15,650 |
1971年 | 15,600 |
1970年 | 15,500 |
1969年 | 15,500 |
1968年 | 15,400 |
1967年 | 15,350 |
1966年 | 15,300 |
1965年 | 15,200 |
1964年 | 15,000 |
1963年 | 15,500 |
1962年 | 15,000 |
1961年 | 15,000 |
ブータンにおけるヤギの飼養頭数は、1961年の15,000頭という低い数値から始まり、その後の数十年間で大きな変動を経ながら成長してきました。データを見ると、1970年代後半から1980年代にかけて緩やかだった増加傾向が急速に強まり、1987年には48,055頭に達しました。この増加の背景には、国内の農畜産業の拡大やヤギ乳や肉の需要増加が影響したと考えられます。この時期、農村部を中心にヤギが貴重な蛋白源として重要視されるようになりました。
しかし、1987年以降、頭数の急激な減少が見られました。1988年の36,847頭、1992年の14,500頭と、特に1991年から1992年にかけて急落しています。この大幅な減少は、当時の政策変化や疫病の発生、あるいは地政学的リスクや環境政策の強化による持続可能な農業への移行が影響している可能性があります。特に、ブータンでは森林伐採や放牧地の過剰利用を抑制するための厳しい環境保護政策がとられたことで、ヤギの放牧が制限された点が原因として挙げられるかもしれません。
1990年代中盤から2000年代では、やや波のある横ばい状態が続きましたが、30,000頭から40,000頭前後の範囲に収まっています。これは国内市場での需要が安定した一方で、放牧地や資源の制限、加えて農村部から都市部への人口移動(いわゆる地方の過疎化)が牧畜に影響を与えたことが要因と推察されます。
近年の動向に目を向けると、2011年以降は再び増加の兆しが見られ、特に2021年には59,577頭というピーク数値を記録しています。この急増の背景には、ヤギ製品の市場価値の向上や、農村振興政策の強化といった国家的な取り組みがある可能性があります。また、新型コロナウイルスのパンデミックにより、輸入食品への依存が減少し、国内生産の需要が高まった点も一因と考えられます。
課題としては、依然として飼養頭数が年によって大きく変動する点が挙げられます。これは環境政策や市場の変動、疫病、そして気候変動に起因するストレスなど多岐にわたる原因が考えられます。例えば、気候変動により放牧地の質が低下したり、極端な天候がヤギの健康や繁殖力に悪影響を与えたりする可能性があります。
今後の対策としては、持続可能な農業政策のさらなる推進が重要です。これは放牧地の管理や家畜の栄養補助策の改善、さらには農民への教育プログラムを含みます。また、ヤギの病気に関する予防対策の強化、生産物の流通市場の確立、そして地域協力の枠組みを通じた他国との技術共有も効果的でしょう。
最終的に、ブータンのヤギ飼養産業が安定的かつ持続可能な形で成長するためには、周辺国とも連携した政策や農業支援が欠かせません。これにより、国内の食料自給率向上に加え、農村地域の経済的自立にも寄与することが期待されます。