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ブータンの鶏飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ブータンにおける鶏飼養数は長期的に増加傾向にあります。特に2016年以降、大幅な増加が見られた一方で、2022年には減少し、975万羽に留まっています。その推移は、鶏肉や卵の需要、農業政策、病害の流行など多岐にわたる要因と密接に関連しています。本データは、食糧供給や経済的自立、地域の栄養改善に向けた重要な指標となっています。

年度 飼養数(羽) 増減率
2023年 819,000
-16% ↓
2022年 975,000
-29.55% ↓
2021年 1,384,000 -
2020年 1,384,000
6.46% ↑
2019年 1,300,000
13.54% ↑
2018年 1,145,000
7.21% ↑
2017年 1,068,000
2.89% ↑
2016年 1,038,000
62.44% ↑
2015年 639,000
15.97% ↑
2014年 551,000
-0.18% ↓
2013年 552,000
0.55% ↑
2012年 549,000
26.21% ↑
2011年 435,000
24.64% ↑
2010年 349,000
40.73% ↑
2009年 248,000
25.25% ↑
2008年 198,000
-13.91% ↓
2007年 230,000 -
2006年 230,000 -
2005年 230,000 -
2004年 230,000
4.55% ↑
2003年 220,000
-4.76% ↓
2002年 231,000
0.43% ↑
2001年 230,000
-0.43% ↓
2000年 231,000
-21.43% ↓
1999年 294,000
33.64% ↑
1998年 220,000
22.22% ↑
1997年 180,000
6.51% ↑
1996年 169,000
-5.06% ↓
1995年 178,000
12.66% ↑
1994年 158,000
5.33% ↑
1993年 150,000
11.94% ↑
1992年 134,000
-25.56% ↓
1991年 180,000
-17.81% ↓
1990年 219,000
0.46% ↑
1989年 218,000
-8.02% ↓
1988年 237,000
3.04% ↑
1987年 230,000
9% ↑
1986年 211,000
17.22% ↑
1985年 180,000
4.65% ↑
1984年 172,000
3.61% ↑
1983年 166,000
4.4% ↑
1982年 159,000
3.92% ↑
1981年 153,000
3.38% ↑
1980年 148,000
2.07% ↑
1979年 145,000
1.4% ↑
1978年 143,000
2.14% ↑
1977年 140,000
12% ↑
1976年 125,000
13.64% ↑
1975年 110,000
12.24% ↑
1974年 98,000
2.08% ↑
1973年 96,000
2.13% ↑
1972年 94,000
2.17% ↑
1971年 92,000
2.22% ↑
1970年 90,000
2.27% ↑
1969年 88,000
2.33% ↑
1968年 86,000
2.38% ↑
1967年 84,000
2.44% ↑
1966年 82,000
2.5% ↑
1965年 80,000
1.27% ↑
1964年 79,000
2.6% ↑
1963年 77,000
2.67% ↑
1962年 75,000
2.74% ↑
1961年 73,000 -

ブータンにおける鶏飼養数の推移を見ると、長期間にわたって安定的な増加を示しています。1961年には73万羽であった鶏の飼養数は、徐々に増加し、2019年には1,300万羽を超えました。特に2016年に1,000万羽を突破してからは顕著な成長を遂げています。この急激な増加は、ブータン国内における農村支援政策や近代的な養鶏技術の導入、そして都市部での卵や鶏肉の需要の高まりが要因と考えられます。一方で、2022年になると975万羽にまで減少しており、これは特定の病害の流行、気候条件の悪化、または飼養コストの上昇が背景にある可能性があります。

また、他国の鶏飼養数の動向と比較すると、それぞれの国の特徴的な背景が見えます。例えば、インドや中国などの近隣諸国では都市化とともに鶏肉や卵の需要がさらに高まり、規模の大きい商業養鶏業が発展しています。ブータンの場合、伝統的な農村社会の中での個人農家による小規模な鶏の飼育が多く、この点で他国との差異が明らかです。しかしながら、この差異こそが有機卵や放し飼い鶏肉といった市場での差別化につながり、今後の発展可能性を秘めています。

2022年の突然の減少は課題として捉えるべきですが、これには新型コロナウイルスの影響も影を落としていると考えられます。国内外の流通が制限されたこと、感染症に対する防疫措置の遅れ、また外部資材の高騰が鶏肉生産に直接的な影響を及ぼした可能性があります。さらに、2022年の疫病や自然災害が農業全般に与える影響も軽視できません。

これらの課題を克服していくためにはいくつかの具体的対策が考えられます。まず、鶏飼育の衛生管理を徹底することで病害の発生と拡散を防ぐ必要があります。また、養鶏に関する技術支援を進め、小規模農家が効率的かつ持続可能な方法で飼育を行えるようサポートすることも重要です。さらに、地理的に孤立している地域間をつなぐ物流インフラの整備や市場へのアクセス向上も、鶏の販売ルートの拡大や価格安定化につながるでしょう。

地政学的な側面としては、ブータンがモンスーン気候であることを考慮する必要があります。極端な気候変動によって穀物飼料の供給に影響が及ぶ場合、鶏の飼養数減少がさらなる農村経済の不安定化を招く可能性があります。国際機関との連携を活かし、飼料の安定的な輸入や地域協力の枠組みを確立することが課題を軽減する鍵となります。

結論として、ブータンにおける鶏飼養数の推移はポジティブな成長を見せる一方で、2022年の減少は今後を考える上で警鐘とも言える状況です。持続可能な農業政策の策定と技術支援が必要であり、短期的には疫病対策や流通システムの改善、長期的には気候変動への適応策が求められます。こうした取り組みは、ブータンの食糧自給率を向上させ、地域住民の生活の質の向上に直接寄与するでしょう。