Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、ブータンの大豆生産量は過去数十年間で大幅な変動を示しています。1980年代初期には生産量が順調に増加していましたが、1990年代にかけて急減し、その後も長期的に下落する傾向が続いています。2022年の生産量はわずか58トンで、データ範囲内で最低の収量となりました。特に、2000年代以降の生産量の不安定さが目立ち、さらに最近の生産基盤の脆弱性が浮き彫りとなっています。
ブータンの大豆生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 58 |
2021年 | 90 |
2020年 | 234 |
2019年 | 171 |
2018年 | 107 |
2017年 | 204 |
2016年 | 254 |
2015年 | 220 |
2014年 | 302 |
2013年 | 425 |
2012年 | 294 |
2011年 | 826 |
2010年 | 402 |
2009年 | 546 |
2008年 | 817 |
2007年 | 1,413 |
2006年 | 1,419 |
2005年 | 1,634 |
2004年 | 1,005 |
2003年 | 125 |
2002年 | 300 |
2001年 | 500 |
2000年 | 577 |
1999年 | 610 |
1998年 | 423 |
1997年 | 339 |
1996年 | 295 |
1995年 | 262 |
1994年 | 234 |
1993年 | 235 |
1992年 | 238 |
1991年 | 242 |
1990年 | 1,311 |
1989年 | 1,300 |
1988年 | 1,300 |
1987年 | 1,600 |
1986年 | 2,000 |
1985年 | 2,300 |
1984年 | 2,795 |
1983年 | 2,100 |
1982年 | 1,300 |
1981年 | 900 |
1980年 | 600 |
ブータンの大豆生産量は、1980年から2022年のデータを見ると、初期には順調な増加を見せ、1984年には最高値の2,795トンに到達しました。この時期は、おそらく大豆を栽培するための農業施策や適切な気象条件が整った時期と考えられます。しかし、1985年以降、急激に減少傾向に転じました。1987年には約1,600トンに減少し、特に1990年代初頭には200トン台後半の低水準に落ち込みました。この時期の急激な減少は、災害や政策上の変更、開発の集中が農業分野に十分なリソースを割けなかったことに関連している可能性があります。
2000年代以降は、一部の年で小さな回復を示すものの、全体的には低迷を続けています。例えば、2004年と2005年にはそれぞれ1,005トン、1,634トンまで回復しましたが、持続可能な成長にはつながりませんでした。その後の10年間の大半では、再び400トン未満で推移しており、特に2020年以降の急激な低下(2022年の58トン)は、農業従事者の減少、気候変動の影響、または新型コロナウイルスの感染拡大による社会・経済的混乱の影響が示唆されます。
これらの背景にはいくつかの課題が挙げられます。ブータンは、国土の大部分が山岳地域であり、平坦地に比べて農業生産環境が厳しいことが挙げられます。さらに、インフラ整備の遅れや、高品質な大豆の種子供給、肥料利用の制限、農業技術への限られたアクセスが、大豆生産量の向上を妨げてきたと考えられます。また、近年増加する異常気象や洪水の影響も、大豆をはじめとする農業生産に悪影響を与える要素となっています。
今後、安定した生産基盤を築くためにはいくつかの対策が必要です。例えば、大豆栽培に適した土地を特定し、高効率な農業技術の導入を進めることが重要です。同時に、農業従事者に対する教育や技能向上の取り組みを強化し、若年層の農業参入を促す政策も検討されるべきです。さらに、気候変動によるリスクに対応するため、持続可能な農業モデルやリスク分散手法の推進が求められます。これは、国際機関や周辺諸国との協力を通じて実現することが期待されます。
近隣諸国の状況を見てみると、例えばインドや中国は、近年大豆生産において新しい技術や品種改良を積極的に取り入れ、生産性を高めています。こうした他国の取り組みを参考に、ブータンも国際市場で競争力のあるモデルを構築する必要があるでしょう。
結論として、現在の大豆生産低迷を克服し、将来的な食料自給率や農業経済の安定に寄与するためには、幅広い政策対応が重要です。持続可能な農業の枠組みを構築することで、大豆栽培はブータンの将来に新たな可能性をもたらす分野となる可能性があります。国や国際機関が協力してこれらの課題に取り組むことで、安定した生産量の確保と農村部の経済発展を両立する道が開かれるでしょう。