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ブータンのマンゴー・マンゴスチン・グアバ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、ブータンのマンゴー・マンゴスチン・グアバの生産量は、2004年の401トンから2019年の2,035トンに到達するまで、緩やかでありながら全体として増加傾向を示していました。しかし2020年以降は減少が見られ、2023年には1,126トンとなっています。このデータは、ブータンの果実産業が地理的条件や外的要因の影響を受けつつ、変動のある成長を遂げていることを示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,126
12.93% ↑
2022年 997
-26.38% ↓
2021年 1,354
-28.02% ↓
2020年 1,881
-7.54% ↓
2019年 2,035
16.69% ↑
2018年 1,743
8.02% ↑
2017年 1,614
23.3% ↑
2016年 1,309
51.86% ↑
2015年 862
47.1% ↑
2014年 586
136.29% ↑
2013年 248
-47.23% ↓
2012年 470
4.21% ↑
2011年 451
13.32% ↑
2010年 398
26.35% ↑
2009年 315
-48.36% ↓
2008年 610
-8.96% ↓
2007年 670
-16.25% ↓
2006年 800
-62.07% ↓
2005年 2,109
425.94% ↑
2004年 401 -

FAOの最新データをもとにブータンのマンゴー、マンゴスチン、グアバの生産量推移を分析すると、ここ20年間にわたる果実生産の変遷が見られます。特に2004年から2019年にかけての増加傾向は注目に値します。これは、同国の農業政策や市場ニーズの変化、あるいは農業技術の進歩が一役買ったものと考えられます。産業振興の一環としての果実栽培の奨励が、農家の収入増や地域経済の活性化に寄与した可能性も高いと言えます。

しかし、2020年以降、特に2021年や2022年にかけて生産量の急激な低下が見られます。この背景として、近年の新型コロナウイルス感染症の世界的流行が影響した可能性があります。パンデミックは輸送の制約や労働力不足を引き起こし、収穫量や市場への出荷に悪影響を及ぼしました。また、気候変動による天候の不安定化や自然災害も、この減少傾向に寄与していると推察されます。山岳地帯に位置するブータンでは、地形や気候の面で農業に適した地域が限られるため、極端な天候が生産に大きな打撃を与える可能性が高いといえます。

さらに、特に注目すべき点は、ブータンが小国でありながらも独自の農業政策を追求している点です。同国では伝統的な農法に基づき、観光業とならぶ持続可能な産業として農業が位置付けられています。しかし、自給自足を重視しつつ国外輸出も視野に入れた経済発展を図る中で、労働力や資本の限界が壁となっている可能性があります。たとえば、生産量が最も高かった2019年と比較すると、2023年には約45%減少しており、それに伴う農家や関連産業への影響が懸念されます。

ブータンの果実生産が持続可能で競争力のある産業として発展するためには、いくつかの対策が求められます。技術革新や灌漑インフラの整備を進める一方で、気候変動への適応策を講じることが不可欠です。特に、耐候性や病害に強い果樹品種の導入が生産量の安定化に寄与するでしょう。また、周辺国との農業協力を進め、特にインドやバングラデシュといった主要な近隣市場への輸出体制を強化することも重要です。これに加え、国内外の市場ニーズを踏まえた計画的な生産と付加価値の高い製品の開発(例えば加工品やオーガニック製品の輸出)は、経済的な利益をもたらす可能性があります。

さらに、労働力不足の解消に向けては、農業の魅力を向上させる施策が重要です。若年層の積極的な農業への従事を促すと同時に、地域コミュニティの教育や訓練プログラムを拡充すべきです。また、地政学的観点からは、近隣諸国との外交や貿易協定の締結を通じて市場アクセスを改善し、果実輸出の安定化を図ることが求められます。

こうした取り組みを通じて、ブータンは果実生産の安定的な成長を実現できる可能性があります。これによって同国経済が恩恵を受けるだけでなく、地域全体の持続可能な発展にも貢献することが期待されます。今後の政策や国際協力の進展に注目が集まります。