Skip to main content

ブータンのショウガ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、ブータンのショウガ生産量は1980年の2,900トンから2023年の3,076トンへとわずかな伸びを見せています。全体を通してみると、1990年代から2000年代にかけては緩やかな増加傾向が見られるものの、その後は気象条件や経済的要因による顕著な変動が観察されます。特に2016年の10,871トンがピークである一方、2022年および2023年には再び低下傾向が見られています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,076
-17.1% ↓
2022年 3,711
-48.13% ↓
2021年 7,154
-19.53% ↓
2020年 8,890
43.18% ↑
2019年 6,209
45.77% ↑
2018年 4,260
-33.91% ↓
2017年 6,445
-40.71% ↓
2016年 10,871
46.23% ↑
2015年 7,434
69.53% ↑
2014年 4,385
28.78% ↑
2013年 3,405
-32.09% ↓
2012年 5,014
9.81% ↑
2011年 4,566
12.08% ↑
2010年 4,074
8.18% ↑
2009年 3,766
-50.45% ↓
2008年 7,600
-23% ↓
2007年 9,870
30.37% ↑
2006年 7,571
9.71% ↑
2005年 6,901
10.86% ↑
2004年 6,225
24.5% ↑
2003年 5,000
13.64% ↑
2002年 4,400
7.32% ↑
2001年 4,100
-5.46% ↓
2000年 4,337
-6.23% ↓
1999年 4,625
3.02% ↑
1998年 4,490
1.24% ↑
1997年 4,435
1.25% ↑
1996年 4,380
1.27% ↑
1995年 4,325
1.29% ↑
1994年 4,270
1.3% ↑
1993年 4,215
1.32% ↑
1992年 4,160
1.34% ↑
1991年 4,105
33.02% ↑
1990年 3,086
-0.45% ↓
1989年 3,100
-11.43% ↓
1988年 3,500
-10.26% ↓
1987年 3,900
-7.14% ↓
1986年 4,200
-4.55% ↓
1985年 4,400
-3.11% ↓
1984年 4,541
16.44% ↑
1983年 3,900
5.41% ↑
1982年 3,700
8.82% ↑
1981年 3,400
17.24% ↑
1980年 2,900 -

ブータンにおけるショウガ生産量の推移は、多様な要因による影響を強く受けています。1980年代の生産量はおおよそ年間2,900~4,500トンの範囲で推移しており、ほぼ安定的に推移していました。しかし、1990年代半ば以降には年々少しずつ増加傾向を見せ、2003年にはついに5,000トンを超えました。この増加には、農業政策の改善や生産性向上のための技術導入などが貢献したと考えられます。また、2000年代半ばから2007年にかけては飛躍的な伸びが見られ、2007年には過去最高の9,870トンを記録しました。

ただし、その後の生産量には大きな揺れが見られます。例えば2009年には、前年と比較して大幅な減少が見られるなど、気象条件の影響や市場の変動、資源管理の課題などが露呈した可能性があります。また、2013年の急落(3,405トン)や2018年以降の継続的な低下も同様に、ブータンのショウガ生産が外的および内的要因に強く左右されていることを示唆しています。

特に、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが影響した2020年には、一時的に生産量が回復したかのように見えたものの、その後再び下降に転じ、2023年には1980年代の水準(3,076トン)まで戻っています。この背景には、パンデミックの影響で輸出需要が一時的に増えた可能性や、物流・労働力の制約といった対立する要因の存在が考えられます。また気候変動による降水量や気温の変化が、農業主導の生産国であるブータンの農業収穫量にも影響を及ぼしていると推測されます。

ブータンのショウガ生産が他国と比べて特異な点は、農業が小規模な家庭農家によって主に支えられている点です。特に隣国インドや中国など、ショウガの一大生産国との比較では規模・効率性において大きな差があります。このような状況で安定的な生産を維持するには、国際的な取引市場での競争力を高めるための支援が不可欠です。

今後、ショウガの生産量を安定させ、さらに持続可能な農業形態を確立するためには、いくつかの具体的な対策が求められます。例えば、気候変動対策として、耐久性の高いショウガ品種の研究開発および導入を推進することが重要です。また、農家に対する金融支援や技術指導を強化することで、小規模生産者の生産効率を向上させることが可能です。さらに、農民団体や地域協力を推進し、効果的な資源分配と市場アクセスを広げる取り組みも効果的です。

地政学的なリスクも懸念材料の一つです。ブータンは地理的にインドと中国という経済大国に挟まれており、これらの国との関係性が貿易や輸出に大きく影響します。仮に、近隣諸国との貿易関係が不安定になることがあれば、ショウガ生産における収益性も深刻な打撃を受ける可能性があります。したがって、これらのリスクを緩和するために、国内市場の活性化とともに、アジア全体での農業協力の枠組み構築が必要です。

最終的に、このデータは単なる生産量の変化を示すだけでなく、ブータンが持つ農業の脆弱性と改善の可能性を浮き彫りにしています。国際機関や政府が協力し、持続的な農業モデルの確立と、新たな市場の開拓に取り組む必要があります。このような対策は、ショウガ生産の安定化を超えて、ブータン全体の食糧安全保障や経済発展にも寄与すると考えられます。

キーワード検索