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ブータンのサツマイモ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が公開したデータによると、ブータンのサツマイモの生産量は2004年の297トンを起点に、その後急激に増加したものの、2000年代後半以降は減少傾向を辿っています。2022年には28トンと過去最小値に達しました。ピークとなった2005年の1,284トンから比べると、その生産量は非常に縮小しています。このような顕著な変動には複数の地理的、経済的、そして政策的要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 33
19.83% ↑
2022年 28
-47.81% ↓
2021年 53
-20.56% ↓
2020年 67
40.73% ↑
2019年 48
48.68% ↑
2018年 32
-59.81% ↓
2017年 80
175.86% ↑
2016年 29
-40.82% ↓
2015年 49
-38.85% ↓
2014年 80
-2.24% ↓
2013年 82
-56.69% ↓
2012年 189
-12.78% ↓
2011年 217
39.09% ↑
2010年 156
48.57% ↑
2009年 105
-72.13% ↓
2008年 377
-21.18% ↓
2007年 478
-6.49% ↓
2006年 511
-60.19% ↓
2005年 1,284
332.4% ↑
2004年 297 -

ブータンのサツマイモの生産量推移を詳しく見ると、2004年から2005年にかけて急激な増加が見られ、この時期には1,284トンという高い生産量を記録しました。しかし、2005年以降のデータからは一貫して減少の傾向が明らかであり、2022年には28トンと極めて少ない値にとどまっています。この長期的な減少は、農業生産の多様化、都市化および気候変動が絡み合う結果と考えられます。

ブータンは山岳地帯が多く、耕地面積が限られるため、農産物の栽培には地形的な制約がついて回ります。特にサツマイモは、比較的耕作に適応性がある作物ではありますが、それでも肥沃な土地や平地を必要とします。しかし、食文化や経済的な価値が他の農作物と比較して相対的に低いため、生産が優先される作物とは言えません。この背景には、国全体の経済成長と蓄積される富に基づく主食の多様性の増加や、近年重要視されている高付加価値農産物の生産方針が影響している可能性があります。

さらには近年の気候変動もサツマイモの生産に負の影響を与えていると考えられます。ブータンはその立地上、大雨や土砂崩れ、季節的不安定性に悩まされることがあり、こうした自然条件がサツマイモの栽培面積や収穫量に直結している可能性があります。特に2009年から2010年、そして2013年から2016年にかけてのデータから明らかなように、一部の年では減少が顕著であり、この時期の天候条件などを精査することが必要だと考えられます。

また、都市化の進展や労働力の変化も影響しています。特に若年層が伝統的な農業から離れ、経済や教育の中心地である都市部での生活を志向する傾向が強いため、地方での農作物生産は供給される労働力を確保するのに苦労していると推察されます。このようなマクロ的な変化は、サツマイモのような伝統的で付加価値の低い作物の生産量を減少させる一因として解釈されます。

この状況を鑑み、いくつかの具体的提案が求められます。第一に、品種改良による生産性向上が挙げられます。寒冷や高地環境に適応した品種の開発と普及を進めることで、収穫量の向上が見込めます。また、灌漑用水施設や土地改良のためのインフラ整備を政策として実施することも重要です。第二に、農業労働力の確保を課題として認識し、地域住民が農業に携わりやすい形でのインセンティブの提供も求められます。そして第三に、気候変動への対応策として、土壌管理や災害への迅速な対応を含む長期的な農業計画の策定が不可欠です。

結論として、サツマイモの生産量の低下は農業政策や社会変動、環境要因など多岐にわたる要因の影響を受けているといえます。この動向を逆転させるためには、農業支援策や環境適応策を包括的に設計する必要があります。また、国際機関や周辺諸国との連携を模索することで、必要な技術支援や人的リソースを共有することも一助となるでしょう。ブータンのサツマイモ生産は小規模でありながら地域経済を支える重要な一面を持つため、その保護と発展が喫緊の課題です。