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ブータンの大麦生産量推移(1961年~2023年)

国連の国際食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ブータンの大麦生産量は1961年以降、全体として上昇と下降を繰り返しつつ、近年では著しい減少傾向を示しています。1961年には2,200トンであった生産量は1997年から1999年に5,000トンに達しましたが、2000年代には急激な変動が見られ、2023年には518トンという低水準にまで落ち込んでいます。このデータは、農業生産の安定性や持続可能性に重要な課題があることを示唆しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 518
-15.74% ↓
2022年 615
-28.26% ↓
2021年 857
-23.69% ↓
2020年 1,123
9.46% ↑
2019年 1,026
10.49% ↑
2018年 929
-53.67% ↓
2017年 2,005
17.8% ↑
2016年 1,702
-5.44% ↓
2015年 1,800
2.68% ↑
2014年 1,753
-12.7% ↓
2013年 2,008
-14.77% ↓
2012年 2,356
-24.24% ↓
2011年 3,110
115.22% ↑
2010年 1,445
-39.87% ↓
2009年 2,403
15.03% ↑
2008年 2,089
-59% ↓
2007年 5,095
12.85% ↑
2006年 4,515
-0.38% ↓
2005年 4,532
218.26% ↑
2004年 1,424
40.3% ↑
2003年 1,015
-41.63% ↓
2002年 1,739
15.93% ↑
2001年 1,500
-11.76% ↓
2000年 1,700
-66% ↓
1999年 5,000 -
1998年 5,000 -
1997年 5,000
12.21% ↑
1996年 4,456
4.46% ↑
1995年 4,266
2.81% ↑
1994年 4,149
0.59% ↑
1993年 4,125
2.33% ↑
1992年 4,031
0.14% ↑
1991年 4,025
0.63% ↑
1990年 4,000
33.33% ↑
1989年 3,000 -
1988年 3,000
-25% ↓
1987年 4,000 -
1986年 4,000
-4.76% ↓
1985年 4,200
-0.12% ↓
1984年 4,205
2.56% ↑
1983年 4,100
-4.65% ↓
1982年 4,300
7.5% ↑
1981年 4,000
5.26% ↑
1980年 3,800
-2.56% ↓
1979年 3,900
8.33% ↑
1978年 3,600
2.86% ↑
1977年 3,500
6.06% ↑
1976年 3,300
-15.38% ↓
1975年 3,900 -
1974年 3,900
11.43% ↑
1973年 3,500 -
1972年 3,500
6.06% ↑
1971年 3,300 -
1970年 3,300
3.13% ↑
1969年 3,200 -
1968年 3,200
6.67% ↑
1967年 3,000
7.14% ↑
1966年 2,800 -
1965年 2,800
3.7% ↑
1964年 2,700 -
1963年 2,700
12.5% ↑
1962年 2,400
9.09% ↑
1961年 2,200 -

1961年から集計されたデータによれば、ブータンの大麦生産量には特徴的なパターンがあります。当初は緩やかな増加が見られ、1970年代半ばには年間3,900トンを記録しましたが、1980年代後半の一時的な減少を経て、1990年代までおおむね4,000トン台を維持していました。1997年から1999年には5,000トンの最高値を記録しましたが、2000年以降には急激な減少が発生し、以後の生産量は混乱した動向を辿っています。特に、2010年代以降には持続的な低下が顕著となり、2023年には518トンと、大麦生産は大幅に縮小しました。

この変動の原因を探るには、地理的要因、気候変動、農業政策の変化、さらには地政学的な条件が関係している可能性があります。ブータンはヒマラヤ山脈に位置し、限られた平地面積や厳しい気候条件が農業活動に影響を与えています。特に近年では、地球規模の気候変動による降水量の不安定化、気温変動、洪水や干ばつ等の自然災害が、生産量の大幅減少に影響を及ぼしていると考えられます。また、伝統的な農業技術から近代的・効率的な農法への転換が進展していない点も、生産性に課題をもたらしている可能性があります。

さらに、人口の増加や都市化、他の作物への転換といった要因も大麦の生産に影響していると予測されます。特に若年層の農業離れや、他の高収入な産業への移行が進むことで、農業人口そのものが減少する傾向にある点は深刻な問題です。

これに対し、改善や対策の導入が急務とされています。具体的には、耐久性の高い大麦品種の開発や、温暖化などの気候条件に適応した農法の導入が効果的であると考えられます。国際機関や周辺国と連携し、農業技術の近代化やインフラの整備を進めることが必要不可欠です。例えば、中国やインドなど近隣諸国では、農業において最新の灌漑技術や高性能の農具を導入し、生産力を向上させています。これらの事例はブータンの持続可能な農業発展にとっての参考となるでしょう。

さらに、政府レベルで農業従事者を支援するための補助金の導入や、若年層が農業に参画しやすい環境づくりも大切です。加えて、地域衝突や疫病の拡散が農業に及ぼす影響を最小限に抑えるため、これら予測可能なリスクに対する事前対策や地域協力が求められます。

2023年の低い生産量は、単なる一時的な現象ではなく、ブータンの農業部門全体の構造的な課題を浮き彫りにしています。この課題を解決するには、地域間および世界規模での協力が鍵となります。持続可能な農業政策の早急な実行が、ブータンの農業と経済の安定、さらに国民の生活水準向上につながるでしょう。