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アルバニアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、アルバニアの牛乳生産量は1961年から2023年にかけて大きな変動を見せています。1961年の78,300トンから1996年には最高値の894,556トンに達しました。その後、多少の増減を繰り返したものの2000年代後半には停滞の兆しが現れ、2020年代には減少傾向が鮮明となっています。このような長期的な推移の背景には、農業政策、経済構造の変化、地政学的要因、そして気候変動の影響が関わっていると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 788,307
-7.22% ↓
2022年 849,690
-4.01% ↓
2021年 885,160
-4.23% ↓
2020年 924,270
-5.2% ↓
2019年 974,960
-2.77% ↓
2018年 1,002,730
-0.92% ↓
2017年 1,011,990
0.77% ↑
2016年 1,004,250
1.13% ↑
2015年 993,030
-0.09% ↓
2014年 993,950
-0.41% ↓
2013年 998,070
1.25% ↑
2012年 985,710
0.21% ↑
2011年 983,650
2.69% ↑
2010年 957,900
5.5% ↑
2009年 908,000
1.45% ↑
2008年 895,000
3.11% ↑
2007年 868,000
-9.21% ↓
2006年 956,000
2.8% ↑
2005年 930,000
1.42% ↑
2004年 917,000
1.44% ↑
2003年 904,000
2.96% ↑
2002年 878,000
4.52% ↑
2001年 840,000
4.09% ↑
2000年 807,000
6.04% ↑
1999年 761,000
5.42% ↑
1998年 721,850
2.07% ↑
1997年 707,200
-20.94% ↓
1996年 894,556
13.06% ↑
1995年 791,200
22.21% ↑
1994年 647,400
20.63% ↑
1993年 536,700
10.36% ↑
1992年 486,300
14.99% ↑
1991年 422,900
0.45% ↑
1990年 421,000
15.66% ↑
1989年 364,000
3.41% ↑
1988年 352,000
6.34% ↑
1987年 331,000
8.52% ↑
1986年 305,000
4.1% ↑
1985年 293,000
-9.57% ↓
1984年 324,000
-0.15% ↓
1983年 324,500
3.34% ↑
1982年 314,000
1.13% ↑
1981年 310,500
5.86% ↑
1980年 293,300
3.27% ↑
1979年 284,000
5.19% ↑
1978年 270,000
8.87% ↑
1977年 248,000
11.56% ↑
1976年 222,300
3.4% ↑
1975年 215,000
2.38% ↑
1974年 210,000
-0.76% ↓
1973年 211,600
14.38% ↑
1972年 185,000
6.63% ↑
1971年 173,490
18.19% ↑
1970年 146,784
12.76% ↑
1969年 130,173
8.78% ↑
1968年 119,661
3.84% ↑
1967年 115,237
13.02% ↑
1966年 101,963
5.85% ↑
1965年 96,332
7.04% ↑
1964年 90,000
5.88% ↑
1963年 85,000
5.72% ↑
1962年 80,400
2.68% ↑
1961年 78,300 -

アルバニアの牛乳生産量は、1961年から2023年にかけて劇的な変動を示しました。1961年の78,300トンという低いベースから始まった生産量は、主に国内農業の成長や家畜飼育の拡大と共に、1996年には894,556トンという過去最高の水準に達しました。この成長期には、国民の食料供給拡充や農業従事者支援政策が重要な役割を果たしたと考えられます。また、冷戦終結後の経済自由化も農業セクターの拡大に寄与しました。しかし、その後の政治的不安定や経済の不安定が、特に1997年に牛乳生産量を707,200トンまで急落させる一因となりました。

2000年代初頭には生産量が再び上昇し、2016年には1,004,250トンというピークに到達しましたが、その後は2020年以降を境に減少傾向に転じました。この減少の背景には、複雑な複数の要素が絡んでいます。一つは、近年の乾燥した気候や気温の上昇が酪農業に負の影響を与えている点です。気候変動による水資源不足や飼料価格の高騰が、アルバニアの伝統的な牧畜業に深刻な影響を与えていると考えられます。さらに、新型コロナウイルスの流行も農業労働力や物流面での課題を浮き彫りにし、生産減少の一因となった可能性があります。

国際的な視点から見ると、アルバニアの牛乳生産量の推移は他国と比較する際に特徴的なパターンが見られます。例えば、同じく酪農を主要産業とするドイツやフランスでは、技術革新や効率的な生産体系が整っているため、経済や気候の変動にも関わらず比較的安定した生産を続けています。一方でアルバニアでは、依然として労働力に依存した生産体制が主流であり、生産効率の改善が急務です。この点では、隣国のギリシャやトルコのように地域間協力を通じて技術支援を受けることが有用な対策になり得るでしょう。

さらに、地政学的な側面にも留意する必要があります。アルバニアが属するバルカン地域は、歴史的な紛争や資源競争が影響を及ぼしてきました。特に経済の安定性は酪農業へ直結した影響を与えるため、地域レベルでの協調的な政策が求められています。牛乳の市場価格の変動や輸出機会の拡大も、地政学的な影響を受けやすい分野といえます。

今後の対策としては、いくつかの具体的な提案が挙げられます。まず、気候変動に対応する技術開発を促進し、持続可能な酪農経営を目指すことが重要です。具体的には、牧草の栽培技術や飼料供給体制の効率化に関する研究開発投資が必要です。また、自国の酪農業の強化だけでなく、周辺国との協力体制を築くことも、長期的な安定成長の鍵となるでしょう。同時に、EU農業政策への参画や国際援助を通じて資金調達を行うことも有効です。

結論として、アルバニアの牛乳生産量は過去数十年の経済、気候、地政学的背景を反映した複雑な推移を見せてきました。現状を受けて、持続可能性を目指した政策転換や国際協力の強化が求められており、それらが成功すれば、国内の酪農業は再び安定した成長軌道に戻ることが期待されます。