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アルバニアの馬飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新のデータによると、アルバニアにおける馬の飼養数は1961年の48,900頭から始まり、長期的にみると大きく減少しています。特に1990年代後半以降、人口変動や鉄道・モータリゼーションの進展、農業構造の変化に伴い、その数は急激に下降傾向を示しています。2022年には26,000頭まで減少しており、約60年間でほぼ半減しました。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 27,290
4.96% ↑
2022年 26,000
-10.34% ↓
2021年 29,000
-3.33% ↓
2020年 30,000
-5.21% ↓
2019年 31,649
-0.8% ↓
2018年 31,905
-1.09% ↓
2017年 32,258
1.67% ↑
2016年 31,729
2.35% ↑
2015年 31,000
-2.29% ↓
2014年 31,727
0.47% ↑
2013年 31,580
-7.08% ↓
2012年 33,986
19.67% ↑
2011年 28,400
-18.86% ↓
2010年 35,000
-7.89% ↓
2009年 38,000
-11.63% ↓
2008年 43,000
-6.52% ↓
2007年 46,000
-9.8% ↓
2006年 51,000
-3.77% ↓
2005年 53,000
-8.62% ↓
2004年 58,000
-7.94% ↓
2003年 63,000
-3.08% ↓
2002年 65,000
-2.99% ↓
2001年 67,000
6.35% ↑
2000年 63,000 -
1999年 63,000
3.28% ↑
1998年 61,000
-12.86% ↓
1997年 70,000
-5.41% ↓
1996年 74,000
4.23% ↑
1995年 71,000
14.52% ↑
1994年 62,000
6.53% ↑
1993年 58,200
31.97% ↑
1992年 44,100
-20.97% ↓
1991年 55,800
-2.45% ↓
1990年 57,200
-1.55% ↓
1989年 58,100
-3.33% ↓
1988年 60,100
-1.64% ↓
1987年 61,100
-1.45% ↓
1986年 62,000
-3.13% ↓
1985年 64,000
-1.54% ↓
1984年 65,000
8.33% ↑
1983年 60,000
20% ↑
1982年 50,000
4.17% ↑
1981年 48,000
4.8% ↑
1980年 45,800
7.76% ↑
1979年 42,500 -
1978年 42,500
-1.16% ↓
1977年 43,000 -
1976年 43,000 -
1975年 43,000
2.38% ↑
1974年 42,000 -
1973年 42,000 -
1972年 42,000
-2.33% ↓
1971年 43,000
-1.15% ↓
1970年 43,500 -
1969年 43,500 -
1968年 43,500
-0.68% ↓
1967年 43,800
-0.45% ↓
1966年 44,000
-0.45% ↓
1965年 44,200
-2.21% ↓
1964年 45,200
-2.59% ↓
1963年 46,400
-4.72% ↓
1962年 48,700
-0.41% ↓
1961年 48,900 -

アルバニアにおける馬の飼養数は、興味深い歴史を反映しています。1961年から1970年代初頭にかけての馬頭数はおおむね安定していましたが、その後、1975年以降に一時的な増加が見られた時期がありました。この時期の増加は、農村部での農業活動の増加や、機械導入が進まなかった地域での馬の利用が盛んであったためと見られます。しかし1990年代初頭のピークを迎えた後、馬の飼養数は急速に縮小しました。

特に1992年以降は飼養数が急減しており、社会主義体制の崩壊と、その後のアルバニアの市場経済移行が一因と考えられます。このような政治経済的な変革の中、公共事業の縮小や農業システムの変化、自動車や農業機械の普及が馬の必要性を低下させました。また、21世紀に入り新しい農業技術や輸送手段が更に普及したことで、馬の役割はさらに限定されたものとなっています。2022年の馬の飼養数は26,000頭となり、1961年から約46%の減少となりました。

他国と比較してみると、日本では馬の飼用は文化的な競馬や観光目的が主体となっており、産業用途としての重要性は減少しています。一方、アメリカやフランスなどの先進国では、競馬産業が馬の飼養を大きく支えており、比較的安定した傾向を示しています。これに対し、アルバニアではこうした娯楽産業は限定的であり、産業自体に多様性が不足していると言えます。

さらに、地政学的な背景も影響を及ぼしている可能性があります。アルバニアはバルカン半島に位置し、紛争や経済的制約の歴史があります。そのため、国として畜産を含む農業全般への支援が十分でなかった点も課題の一つです。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを含む近年の社会的混乱も、馬の需要や農村部の経済的存続に関わる要因として考慮されます。

未来に向けた課題としては、まず馬の飼養を持続可能とするための農村支援の枠組み作りが挙げられます。例えば、伝統的な馬文化を活用した観光産業の振興を通じて馬の飼養数を安定させる方法が考えられるでしょう。ヨーロッパ内の地域連携を活用し、競馬や馬術大会など国際的なイベントへ参画を推進することも有効です。同時に、農業機械化が進む中での適応策として、馬車文化の保存や馬を利用したエコツーリズムなども重要な方向性となります。

最後に、アルバニア政府や国際機関が他国の成功事例を参考にしつつ、農村部での畜産業の競争力を高め、飼養される馬たちが生態系の中で新たな役割を見出せるような政策を強化する必要があります。馬の飼養数はその国の農村文化や経済状況を示す一つの指標とも言えるため、アルバニアの持続的な発展のためにこのデータを活用していくことが望まれます。