国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アルバニアのさくらんぼ生産量は長期的には大きな成長を見せており、2023年は19,696トンを記録しました。1960年代には500トン前後で推移していた生産量は、1990年代後半から急激に増加し、2015年以降、20,000トン前後で安定しています。しかしながら、2023年のデータでは前年度(2022年)の24,357トンから減少しており、その背景には生産環境の変化や経済的動向がある可能性があります。
アルバニアのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 19,696 |
-19.14% ↓
|
2022年 | 24,357 |
10.46% ↑
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2021年 | 22,050 |
7.71% ↑
|
2020年 | 20,471 |
4.01% ↑
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2019年 | 19,681 |
2.45% ↑
|
2018年 | 19,210 |
0.22% ↑
|
2017年 | 19,169 |
-0.48% ↓
|
2016年 | 19,261 |
-4.4% ↓
|
2015年 | 20,147 |
13.63% ↑
|
2014年 | 17,730 |
-6.29% ↓
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2013年 | 18,920 |
11.49% ↑
|
2012年 | 16,970 |
17.85% ↑
|
2011年 | 14,400 |
14.94% ↑
|
2010年 | 12,528 |
15.24% ↑
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2009年 | 10,871 |
35.89% ↑
|
2008年 | 8,000 |
6.67% ↑
|
2007年 | 7,500 |
-2.34% ↓
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2006年 | 7,680 |
6.67% ↑
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2005年 | 7,200 |
4.35% ↑
|
2004年 | 6,900 |
9.52% ↑
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2003年 | 6,300 |
5% ↑
|
2002年 | 6,000 |
-11.76% ↓
|
2001年 | 6,800 |
36% ↑
|
2000年 | 5,000 |
11.11% ↑
|
1999年 | 4,500 | - |
1998年 | 4,500 |
4.65% ↑
|
1997年 | 4,300 |
-15.69% ↓
|
1996年 | 5,100 |
70% ↑
|
1995年 | 3,000 |
92.44% ↑
|
1994年 | 1,559 |
289.73% ↑
|
1993年 | 400 |
-19.41% ↓
|
1992年 | 496 |
6.06% ↑
|
1991年 | 468 |
-6.41% ↓
|
1990年 | 500 |
-28.57% ↓
|
1989年 | 700 |
40% ↑
|
1988年 | 500 | - |
1987年 | 500 |
-28.57% ↓
|
1986年 | 700 |
133.33% ↑
|
1985年 | 300 |
-25% ↓
|
1984年 | 400 |
-20% ↓
|
1983年 | 500 | - |
1982年 | 500 | - |
1981年 | 500 |
-37.5% ↓
|
1980年 | 800 |
-11.11% ↓
|
1979年 | 900 | - |
1978年 | 900 |
5.88% ↑
|
1977年 | 850 | - |
1976年 | 850 |
6.25% ↑
|
1975年 | 800 | - |
1974年 | 800 |
14.29% ↑
|
1973年 | 700 | - |
1972年 | 700 | - |
1971年 | 700 | - |
1970年 | 700 |
16.67% ↑
|
1969年 | 600 |
20% ↑
|
1968年 | 500 |
25% ↑
|
1967年 | 400 |
-20% ↓
|
1966年 | 500 |
25% ↑
|
1965年 | 400 | - |
1964年 | 400 | - |
1963年 | 400 |
-20% ↓
|
1962年 | 500 |
-28.57% ↓
|
1961年 | 700 | - |
アルバニアのさくらんぼ生産量は、過去60年にわたって著しい変化を遂げてきました。1960年代から1980年代までの低生産量(年間500トン前後)を経て、1994年に約1,500トンと初めて飛躍的に増加しました。その後、1990年代半ばから2000年代初頭にかけての経済構造の変化と農業政策の強化に伴い、さくらんぼの生産量は急速な上昇を見せました。2008年以降は安定期に入り、特に2010年代中頃からは年間20,000トン前後の水準で推移しています。
このような成長の背景には、国内の農業改革と輸出志向型の農業政策が影響しています。1990年代のアルバニアは大規模な経済改革を経験しました。この際、果物栽培が強化されたことや、ヨーロッパ市場へのアクセスが増えたことが、さくらんぼの生産を押し上げました。また、地中海性気候を活かした栽培技術の改善や、それに伴う品質の向上も、生産量と市場競争力の向上に寄与したと考えられます。近年では特に、EU市場における人気の高まりと需要増加が見込まれており、輸出産業としての地位も向上しています。
しかしながら、2023年のデータは24,357トンを記録した2022年に比べ、減少しています。この減少の原因として、気候変動による異常気象や、水不足、農業インフラの脆弱性が考えられます。さらに、新型コロナウイルスの影響により国際的な物流や人手確保に問題が生じた可能性も否定できません。このような要因が、生産に負の影響を与えたと推測されます。
アルバニアのような小規模農業が主流の国では、産業全体の持続可能性を高めるための対策が急務です。例えば、気候変動に対応した耐病性や耐干性の強いさくらんぼ品種の育成が重要な課題です。また、効率的な潅漑施設の整備や、農地管理を向上させる技術援助など、外部からの支援も有効です。さらに、国際的な需要の変化に対応するため、EU諸国や他の主要市場との連携強化も求められます。
国際比較の視点で見ると、アルバニアのさくらんぼ生産量は主要生産国であるトルコやアメリカ、中国などとは大きな差があります。例えば、トルコの生産量は年間50万トンを超え、アルバニアはまだその競争において小規模です。しかし、輸出に特化し、品質重視の戦略を取ることで、国際市場におけるニッチな地位を築く可能性は十分にあります。
今後、アルバニアがさくらんぼ産業をさらに発展させるためには、農業分野への投資強化が必要です。例えば、政府主導の補助金制度や、EUなどの外部資金を活用した農業インフラの改善が有効です。また、地域間での農場協力や、研究機関との提携による革新的技術の導入も奨励すべきです。さくらんぼ栽培を中心とした地域経済の活性化と、農業従事者の生活向上を目指した政策は、アルバニアの持続可能な発展に寄与するでしょう。
結論として、アルバニアのさくらんぼ生産量の推移は国の経済や農業の変遷を反映するとともに、外部要因や政策が生産に大きな影響を与えていることを示しています。今後は、気候変動や国際的な市場動向を考慮しつつ、持続可能な生産と市場価値の向上を同時に追求する必要があります。アルバニアは、小規模ながらも市場競争力を高め、さくらんぼ産業をさらなる経済成長の推進役とする可能性を秘めています。