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アルバニアのナシ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、アルバニアのナシ(洋ナシ)生産量は、2023年に14,763トンを記録しました。生産量は全般的に大きな増加傾向を示しており、特に2010年代以降は著しい発展が見られます。一方で、1990年代前半の低迷や近年のわずかな変動も確認できます。このデータは、アルバニアの農業の進化や経済的背景、気候変動の影響を考察する上で重要な示唆を与えています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 14,763
-1.42% ↓
2022年 14,975
5.13% ↑
2021年 14,244
-0.71% ↓
2020年 14,346
1.69% ↑
2019年 14,107
4% ↑
2018年 13,565
0.8% ↑
2017年 13,458
0.55% ↑
2016年 13,384
11.12% ↑
2015年 12,045
16.15% ↑
2014年 10,370
4.01% ↑
2013年 9,970
5.84% ↑
2012年 9,420
12.14% ↑
2011年 8,400
14.66% ↑
2010年 7,326
2.03% ↑
2009年 7,180
28.9% ↑
2008年 5,570
18.51% ↑
2007年 4,700
-1.26% ↓
2006年 4,760
10.7% ↑
2005年 4,300
7.5% ↑
2004年 4,000
14.29% ↑
2003年 3,500 -
2002年 3,500
0.46% ↑
2001年 3,484
26.69% ↑
2000年 2,750
14.58% ↑
1999年 2,400 -
1998年 2,400
9.09% ↑
1997年 2,200 -
1996年 2,200
-26.67% ↓
1995年 3,000
-40% ↓
1994年 5,000
8.7% ↑
1993年 4,600
15% ↑
1992年 4,000
-20% ↓
1991年 5,000
-41.05% ↓
1990年 8,482
0.98% ↑
1989年 8,400
25.37% ↑
1988年 6,700
-2.9% ↓
1987年 6,900
-19.77% ↓
1986年 8,600
43.33% ↑
1985年 6,000
11.11% ↑
1984年 5,400
-6.9% ↓
1983年 5,800
-3.33% ↓
1982年 6,000
-9.09% ↓
1981年 6,600
15.79% ↑
1980年 5,700
-5% ↓
1979年 6,000 -
1978年 6,000
9.09% ↑
1977年 5,500 -
1976年 5,500
10% ↑
1975年 5,000 -
1974年 5,000
8.7% ↑
1973年 4,600 -
1972年 4,600
2.22% ↑
1971年 4,500 -
1970年 4,500
12.5% ↑
1969年 4,000
5.26% ↑
1968年 3,800
8.57% ↑
1967年 3,500
-7.89% ↓
1966年 3,800 -
1965年 3,800 -
1964年 3,800
-2.56% ↓
1963年 3,900
-2.5% ↓
1962年 4,000
-11.11% ↓
1961年 4,500 -

アルバニアのナシ生産量の推移を見ると、1960年代から1980年代半ばまでは3,800~8,600トンの範囲でやや緩やかな増加が見られます。しかし、1990年代に入ると1991年には5,000トン、1995年にはわずか3,000トンに落ち込みます。この劇的な減少は、1990年代初期に起きた社会主義体制崩壊後の混乱が影響していると考えられます。この混乱期には農業政策の転換が進み、生産体制が著しく変化したことが一因といえるでしょう。また、1970年代から1980年代にかけて増加した一方で、1990年代以降の急激な減少は、農地の管理不足や農民の生活環境の悪化にも関連しています。

2000年以降、ナシ生産量はじわじわと回復基調に入り、特に2010年代の後半には急激に伸びました。2012年以降はほぼ毎年成長を遂げ、2019年には過去最高の14,107トンを記録しました。そして2023年に至るまで、14,000トン以上の水準を維持しています。この成長の背景には、近年の農業技術の改善、政府の農業政策支援、地域協力による輸出拡大の努力が含まれると考えられます。例えば、EUとの協力を通じて、農産物輸出に必要な品質管理基準を満たすためのプロジェクトが進行しています。

ただし、このデータからはいくつかの課題も浮き彫りになっています。一つは、ナシ生産量の急激な減少をもたらした過去の政治・経済的リスクに対する長期的な影響です。この教訓に基づき、安定した農業政策の維持や、外部リスクに強い農業基盤の構築が求められます。また、気候変動のリスクも無視できません。特にアルバニアは地中海性気候で、近年は異常気象が農業生産に影響を及ぼすケースが増えています。そのため、耐性のあるナシの品種開発や、水管理システムの強化が大きな課題となっています。

具体的な提案として、まず、EUとの連携をさらに強化し、輸出市場の拡大を図る戦略が有効です。これには、輸送インフラの改善や、農協を通じたマーケティング支援が含まれます。また、若者を農業に引き付けるための支援政策も重要です。近年の農業従事者の高齢化は世界中の問題ですが、アルバニアでも例外ではありません。若い世代に対する教育プログラムや、補助金制度などが効果を発揮するでしょう。

さらに、気候変動への適応戦略として、灌漑技術の導入や、乾燥耐性の高い品種への投資も促進すべきです。過去、1990年代後半のような低迷期においても、生産量の底を支えた農地の存在が重要であったことは明らかです。したがって、農地の再整備や管理体制の強化も今後の重要課題となっています。

最後に、近隣諸国や日本、中国、アメリカなどの主要ナシ生産国との比較によると、アルバニアの生産量はまだ限定的で、国際市場での競争力を高めるには構造的な改善が必要です。特に、日本のように高品質な農産物で付加価値をつけたり、中国のように大規模な生産体制を築いたりする取り組みを参考にすることが有効と思われます。

アルバニアのナシ生産は、このような課題を克服しつつ、持続可能な発展を目指せば、国内の需要のみならず、地域の農業発展の一環として、将来的に国全体の経済にも寄与する可能性があります。政府と地域社会、そして国際協力がともに支え合う「農業モデル」が鍵を握るでしょう。