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アルバニアの羊の毛生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、アルバニアの羊の毛生産量は近年減少傾向にあります。1960年代には平均約2,800トンで推移していましたが、一部の年で急減することもありました。その後、1980年代初頭に一時的に3,000トンを超えるピークを迎えましたが、1984年から約2,000トン前後の低い水準を繰り返しました。1990年代には再び増加し、1995年には4,000トンを記録するも、2000年代後半から横ばいが続き、最近の2020年から2022年では約2,300トン前後まで減少しています。この減少は、国内外の市場や地政学的背景、農業・畜産業の変化など複数の要素が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン)
2022年 2,341
2021年 2,632
2020年 2,831
2019年 3,182
2018年 3,000
2017年 3,000
2016年 3,000
2015年 3,115
2014年 3,117
2013年 3,000
2012年 3,000
2011年 3,400
2010年 3,300
2009年 3,200
2008年 3,000
2007年 3,800
2006年 3,200
2005年 3,400
2004年 3,255
2003年 3,100
2002年 3,300
2001年 3,300
2000年 3,400
1999年 3,000
1998年 3,029
1997年 2,916
1996年 3,155
1995年 4,000
1994年 3,300
1993年 3,197
1992年 2,930
1991年 2,800
1990年 2,900
1989年 2,000
1988年 2,000
1987年 2,000
1986年 2,000
1985年 2,000
1984年 2,000
1983年 3,146
1982年 3,062
1981年 3,000
1980年 3,000
1979年 2,600
1978年 2,500
1977年 2,400
1976年 2,100
1975年 2,100
1974年 2,100
1973年 2,100
1972年 2,100
1971年 2,234
1970年 2,352
1969年 2,294
1968年 2,235
1967年 2,742
1966年 2,706
1965年 2,850
1964年 2,800
1963年 2,800
1962年 2,800
1961年 2,832

アルバニアの羊の毛生産量データから見られるトレンドを総合的に分析すると、いくつかの明確な段階的変化が浮かび上がります。1960年代から1970年代にかけてはおおむね安定した生産水準を保っていましたが、1970年代後半から1980年代にかけて、一時的な増加と急減が繰り返されました。この時期の変動は、アルバニアの社会主義下の中央集権的な農業政策や、国土の牧草地管理状況、そして国内の羊毛使用需要の変化による可能性が考えられます。1974年以降の低迷については、集中管理の失敗やインフラの脆弱さが影響しているとの見解があります。

その後、1990年には冷戦終結とともにアルバニア経済が市場経済へと移行します。この転機は羊の毛生産量にも影響を与え、1990年代の前半には一時的な増加を示しました。特に1995年には4,000トンまで到達し、過去最高を記録しましたが、これは農業改革による個人経営の増加と市場ニーズの活性化が要因ではないかと考えられます。ただし、1996年以降の下落傾向は、経済危機や政情不安が農畜産業全体に悪影響を及ぼしたためと推察されます。

21世紀に入り、アルバニアの羊の毛生産は再び比較的安定化しましたが、その水準は低迷しています。特に2020年からは2,800トン、2022年に至っては2,341トンまで減少しています。これは、近年の地域紛争による地政学的な不安定要素や、世界的な気候変動による影響、さらには新型コロナの影響で労働力や供給チェーンが停止したことが関連していると考えられます。また、都市化の進行による地方部の農業労働人口の減少や、貿易パートナーの減少も要因の一つです。

この分野における課題は、何よりもまず畜産農家の収益性の向上が必要です。具体的には、輸出市場の多様化や、政府による直接的な補助金制度の導入が基本的な対策となり得ます。また、羊毛の品質向上に向けた技術研修や、消費者ニーズを捉えた製品の高付加価値化も求められます。例えば、韓国のように「高品質羊毛」としてブランド化する取り組みは、シンプルながらも効果的な方法です。同時に、デジタルマーケティングを活用した国際市場へのアプローチにも挑戦するべきです。

さらに、アルバニア国内のみならず、他国との地域間協力を強化することで、輸出先市場の確保や国際価格の変動リスクを減らすことが期待されます。例えば、近隣諸国のギリシャやコソボとの協力を通じた地域的な供給チェーンの整備が考えられます。持続可能性に配慮した農業技術(エコフレンドリーな飼育管理方法)の導入も、今後の重要な方向性です。

結論として、現在のアルバニアの羊の毛生産量は、農業・畜産業の重要性を考慮した場合、さらなる改善が求められます。この分野の収益性向上と安定した生産量確保を目指すためには、国内政策の強化と国際協力が鍵となります。国際的な需要も見据えた市場戦略を打ち出すことで、アルバニアの羊の毛産業が新たな安定軌道に入る可能性があります。