国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新したデータによると、アルバニアの小麦生産量は1961年から1980年代後半まで増加傾向を示しましたが、1991年以降、大幅に減少と安定的な低水準を記録しています。特に、1991年以降の経済移行期と2000年代以降の低成長が特徴的です。2022年における小麦生産量は233,145トンであり、ピークの1988年の637,000トンと比較すると大幅に減少しています。
アルバニアの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 233,145 |
2021年 | 225,171 |
2020年 | 233,430 |
2019年 | 233,218 |
2018年 | 240,294 |
2017年 | 274,877 |
2016年 | 275,000 |
2015年 | 275,000 |
2014年 | 280,000 |
2013年 | 294,000 |
2012年 | 300,000 |
2011年 | 292,800 |
2010年 | 294,900 |
2009年 | 333,100 |
2008年 | 335,000 |
2007年 | 249,500 |
2006年 | 230,900 |
2005年 | 260,000 |
2004年 | 253,400 |
2003年 | 259,900 |
2002年 | 295,300 |
2001年 | 282,200 |
2000年 | 341,100 |
1999年 | 272,000 |
1998年 | 395,067 |
1997年 | 388,391 |
1996年 | 271,150 |
1995年 | 405,342 |
1994年 | 420,000 |
1993年 | 464,498 |
1992年 | 251,862 |
1991年 | 297,340 |
1990年 | 613,000 |
1989年 | 613,000 |
1988年 | 637,000 |
1987年 | 593,000 |
1986年 | 576,000 |
1985年 | 603,000 |
1984年 | 600,000 |
1983年 | 583,000 |
1982年 | 524,000 |
1981年 | 488,700 |
1980年 | 495,900 |
1979年 | 490,530 |
1978年 | 490,000 |
1977年 | 490,000 |
1976年 | 485,000 |
1975年 | 310,000 |
1974年 | 330,000 |
1973年 | 333,000 |
1972年 | 285,000 |
1971年 | 259,431 |
1970年 | 226,582 |
1969年 | 240,177 |
1968年 | 203,184 |
1967年 | 163,261 |
1966年 | 146,084 |
1965年 | 119,728 |
1964年 | 124,208 |
1963年 | 61,763 |
1962年 | 146,407 |
1961年 | 97,800 |
アルバニアの小麦生産量の推移を見ると、いくつかの注目すべき段階があります。1960年代から1970年代にかけての急速な増加は、当時の社会主義体制下で農業が国の経済政策の中核を成していたことが反映されています。特に、1970年代後半から1980年代にかけて、アルバニアは比較的高い生産量を維持し、1988年には生産量のピークである637,000トンを記録しました。これは、食糧自給の追求や集団農場の運営を中心とした政策の成果と考えられます。
しかし、1990年代初頭に社会主義体制が崩壊し、自由市場経済への移行が始まると、農業分野は急速に衰退しました。特に1991年には297,340トンへと急激に減少し、その後も低迷が続きました。この減少は、農地の分散化や農業管理の非効率化、加えて、新しい経済体制へ適応するまでの期間の不安定さによるものです。2000年代にはさらに生産量が減少し、253,400トン(2004年)や233,145トン(2022年)に低下する傾向が明確となりました。
これらの減少にはいくつかの地政学的背景があります。まず、アルバニアはヨーロッパの他国に比べて農業の近代化が進んでおらず、技術やインフラが大きく遅れていることが挙げられます。また、世界的な気候変動による極端な気象条件や干ばつの影響も考えられます。加えて、輸入小麦の価格が比較的安定しているため、小規模農家が収益面で他作物への依存を高める傾向も見受けられます。
2022年時点で生産量が233,145トンであるのは、アルバニアがこれまで築き上げてきた農業基盤の中断と新しい環境への適応が依然として進行中であることを示しています。輸入依存の高まりが続くと、地政学的リスクや国際市場の価格変動に対して脆弱となります。また、農業従事者の減少や若年層の都市部への移動も、長期的な生産能力の低下と直結します。
この状況に対処するためには、具体的な対策が必要です。一つは農業近代化の推進です。灌漑設備の整備や耐候性の高い小麦品種の導入、農業経営の効率化が求められます。また、国家レベルでの農業支援政策を拡充させ、特に若年層が農業に従事しやすい環境を作ることが重要です。さらに、国際協力を活用し、技術援助や資金提供を受けることも有効な手段となります。
結論として、アルバニアの小麦生産は過去の繁栄に対し、現在は多くの課題を抱える状況にあります。これを解決するためには、農業の近代化や政策支援の強化が欠かせません。経済基盤を安定させるためには食糧自給率の向上が不可欠であり、これが実現すれば国内経済の安定と持続可能な農業体制の確立に資することでしょう。