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カンボジアの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、カンボジアの牛乳生産量は1961年に12,495トンからスタートし、1990年代には一時的に大幅な増加を記録しましたが、2000年代以降は停滞、そして近年はやや減少傾向にあります。2023年の生産量は23,143トンで、直近のピークである2009年の27,975トンよりも約17%低下しています。この推移には、経済的、地政学的、環境的な要素が複雑に絡んでいると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 23,143
-3.17% ↓
2022年 23,902
-0.66% ↓
2021年 24,061
1.06% ↑
2020年 23,808
-0.83% ↓
2019年 24,007
-1.23% ↓
2018年 24,306
-0.61% ↓
2017年 24,454
1.47% ↑
2016年 24,100 -
2015年 24,100
-2.03% ↓
2014年 24,600
-8.92% ↓
2013年 27,009
0.01% ↑
2012年 27,005
0.63% ↑
2011年 26,838
-1.79% ↓
2010年 27,326
-2.32% ↓
2009年 27,975
2.4% ↑
2008年 27,318
2.47% ↑
2007年 26,658
1.39% ↑
2006年 26,293
4.21% ↑
2005年 25,230
3.71% ↑
2004年 24,327
1.84% ↑
2003年 23,888
-0.41% ↓
2002年 23,985
0.01% ↑
2001年 23,982
0.01% ↑
2000年 23,979
0.01% ↑
1999年 23,975
1.43% ↑
1998年 23,637
2.2% ↑
1997年 23,128
1.5% ↑
1996年 22,787
0.39% ↑
1995年 22,700
1.07% ↑
1994年 22,459
0.85% ↑
1993年 22,270
3.99% ↑
1992年 21,415
2.76% ↑
1991年 20,839
20.16% ↑
1990年 17,342
2.01% ↑
1989年 17,000 -
1988年 17,000
1.01% ↑
1987年 16,830
2.06% ↑
1986年 16,490
1.04% ↑
1985年 16,320
1.05% ↑
1984年 16,150
1.06% ↑
1983年 15,980
2.17% ↑
1982年 15,640
2.22% ↑
1981年 15,300
5.88% ↑
1980年 14,450
21.43% ↑
1979年 11,900
-22.22% ↓
1978年 15,300
-18.18% ↓
1977年 18,700
4.76% ↑
1976年 17,850 -
1975年 17,850
5% ↑
1974年 17,000 -
1973年 17,000
-4.76% ↓
1972年 17,850
-4.55% ↓
1971年 18,700
-4.35% ↓
1970年 19,550
-4.17% ↓
1969年 20,400
5.82% ↑
1968年 19,278
8.83% ↑
1967年 17,714
12.65% ↑
1966年 15,725
4.52% ↑
1965年 15,045
4.12% ↑
1964年 14,450
6.25% ↑
1963年 13,600
3.23% ↑
1962年 13,175
5.44% ↑
1961年 12,495 -

カンボジアの牛乳生産量の推移を見ていくと、1960年代には着実な成長が記録され、特に1961年から1969年にかけては毎年安定的に生産量が増加しました。この時期の伸びは、農業技術の改善や酪農分野の基盤整備が進行していた可能性を示唆しています。しかしながら、1970年代になると内戦を始めとする政治的な不安定要因により、生産量が減少または停滞しました。特に1978年には15,300トンと大幅な減少が見られ、この急激な変化は、当時の政情不安や社会的混乱が農業全体に与えた影響を反映していると考えられます。

1980年代以降、安定期に入ると緩やかな回復が見られ、1991年からは急速な生産量の伸びが記録されました。この増加は、内戦終結後の経済再建や国際的な支援、農村再生計画が寄与していると言えます。1996年以降は安定した増加傾向が見られ、2009年には27,975トンのピークに達しました。しかし、それ以降は環境変動や市場需要の停滞、小規模酪農への投資不足により、生産量が停滞、さらには減少し始めています。

2023年の数値は23,143トンで、ピーク時と比較すると減少傾向が明らかです。この要因の一つとして、気候変動による旱魃や洪水などの影響が示唆されます。牛乳生産は水資源に依存するため、これらの自然環境の変化が飼料供給や乳牛の生産性に影響を与えている可能性が高いです。また、国内市場での牛乳需要が他の乳製品や代替品に押されていることも、生産意欲低迷の要因として考えられます。

また、牛乳生産の停滞はカンボジアが抱えるインフラ整備不足と資本投資の課題を浮き彫りにしています。特に地方での冷蔵設備や物流網の未整備が、牛乳の流通量を制約する要因となっています。さらには、国内酪農が輸入乳製品との価格競争に直面していることも、国内生産の減少に影響を与えています。

このような状況を改善するためには、まず国内酪農の競争力強化が必要です。一例として、政府が小規模農家への教育・技術指導を継続し、新しい酪農技術の導入を支援する取り組みが挙げられます。また、牛乳生産チェーンにおけるインフラ整備、具体的には保冷輸送網の拡充や冷蔵庫の普及を進めるべきです。加えて、より環境に配慮した酪農技術を導入し、気候変動の影響を軽減する政策を展開することも重要です。

さらに、地域間協力を進めて乳製品の市場開拓を模索することも有効です。例えば、ASEAN諸国との協力による牛乳および乳製品市場の拡大は、新たな収益源を提供し得ます。国際的な視点からは、国際金融機関や開発援助機関の支援を得て、カンボジアの農家が安定的に成長する仕組みを構築することが理想的です。

結論として、カンボジアの牛乳生産量推移はその国の歴史的背景や地域的課題を強く反映しています。今後、生産量を増やし自給率を向上させるためには、政策面での支援だけでなく、農業技術の進展および気候変動対策を組み合わせた包括的な取り組みが求められます。このような多角的なアプローチにより、カンボジアの酪農業は将来的に復興と成長を遂げる可能性を秘めています。