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カンボジアのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、カンボジアのコーヒー豆生産量は過去数十年にわたり大きな変化を経てきました。1960年代から1970年代前半にかけて増加傾向を見せましたが、1975年以降に急激に減少。その後、1980年代から徐々に回復し、1990年代には安定的な増加傾向を記録しました。2000年代以降は300トン台での推移が続き、近年は緩やかな増加を示しています。2022年の生産量は374トンと、過去20年で比較的高い水準となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 365
-2.48% ↓
2022年 374
1.17% ↑
2021年 370
-1.97% ↓
2020年 377
0.51% ↑
2019年 375
5.18% ↑
2018年 357
0.05% ↑
2017年 357
-0.88% ↓
2016年 360
-2.68% ↓
2015年 370
3.68% ↑
2014年 357
0.98% ↑
2013年 353
0.88% ↑
2012年 350
0.36% ↑
2011年 349
-3.72% ↓
2010年 362
3.51% ↑
2009年 350
6.06% ↑
2008年 330
3.13% ↑
2007年 320
6.67% ↑
2006年 300
-6.12% ↓
2005年 320
3.09% ↑
2004年 310
1.63% ↑
2003年 305
1.62% ↑
2002年 300
0.06% ↑
2001年 300 -
2000年 300 -
1999年 300
3.45% ↑
1998年 290
3.57% ↑
1997年 280
12% ↑
1996年 250
25% ↑
1995年 200
5.26% ↑
1994年 190
-4.08% ↓
1993年 198
10.04% ↑
1992年 180
5.88% ↑
1991年 170
6.25% ↑
1990年 160
6.67% ↑
1989年 150
7.14% ↑
1988年 140
7.69% ↑
1987年 130
8.33% ↑
1986年 120
20% ↑
1985年 100
11.11% ↑
1984年 90
12.5% ↑
1983年 80
14.29% ↑
1982年 70
2.94% ↑
1981年 68
-2.86% ↓
1980年 70
40% ↑
1979年 50
-30.56% ↓
1978年 72
-15.29% ↓
1977年 85
-5.56% ↓
1976年 90
-10% ↓
1975年 100 -
1974年 100
-19.35% ↓
1973年 124
-73.62% ↓
1972年 470
-21.67% ↓
1971年 600 -
1970年 600
30.43% ↑
1969年 460
31.43% ↑
1968年 350
-19.17% ↓
1967年 433
-9.79% ↓
1966年 480
20% ↑
1965年 400
14.29% ↑
1964年 350
-12.5% ↓
1963年 400
14.29% ↑
1962年 350
45.83% ↑
1961年 240 -

カンボジアのコーヒー産業は、長年にわたる政治的、経済的、環境的な変化の影響を受け、その生産量に大きな波が見られます。1960年代には生産量が順調に伸び、1970年から1971年には600トンと最盛期を迎えました。この時期は、カンボジア国内での農業基盤の発展と比較的安定した政治状況が背景にあると考えられます。

しかし、1975年以降、クメール・ルージュ政権の統治や内戦の影響を受け、農業インフラが破壊され生産量が急激に減少しました。1979年には50トンまで低下しており、これが歴史的最低水準として記録されています。この減少は、土地政策の荒廃や農業技術の停滞、さらには輸出市場の崩壊に起因していました。1980年代以降、ようやく回復の兆しが見え始め、90年代には国内外の需要に応える形で年間生産量の増加が続きました。

2000年代に入ると、コーヒー豆生産は300トン前後で安定する傾向が見られます。2020年代に至り、さらに緩やかな増加が記録され、2022年には374トンに到達しました。この増加は、主に地元の農民が有益な作物としてコーヒー栽培に取り組む一方で、政府や国際機関による農業技術の向上支援プログラムが進展したことが影響しています。また、気候変動の影響を受ける農産物が多い中でも、コーヒー豆が比較的気候の変動に耐性がある作物とされていることも安定の要因といえます。

一方、カンボジアの生産量は、主要なコーヒー生産国と比較すると依然として少ない状況です。同じ東南アジアのベトナムは、世界第2位の生産国として年間約200万トン以上を生産しており、カンボジアの規模との差は非常に大きいです。さらに、品質面や国際競争力においても未解決の課題が残されています。日本やアメリカの消費市場を見ても輸出市場へのアクセスが限られており、ブランドとしての認知度を高める必要があると考えられます。

課題としては、まず気候変動の影響が挙げられます。将来的には雨量の減少や気温上昇に伴う栽培条件の悪化が予測されており、生産量が再び減少するリスクが存在します。地政学的にも、アジア地域における農業用水資源への競争が激化し、地方部の農民が引き続き不安定な生計を強いられる可能性があります。さらには、持続可能な農法の採用が今後必要ですが、資金や教育が十分でない一部農業地域ではその実践が困難です。

対策としては、まず高付加価値コーヒーの生産に転換し、国際市場向けに特化したブランド構築を進めることが重要です。たとえば、オーガニック認証を取得し、環境配慮型の栽培方法を取り入れることが考えられます。また、政府主導で農業技術トレーニングを実施し、農家への技術移転を進めるべきです。さらに、地域協力の枠組みを活用してベトナムやラオスなど近隣諸国との協調を強化し、輸出のインフラや物流体制を改善することも挙げられます。

結論として、カンボジアのコーヒー豆生産量は徐々に回復の軌道に乗りつつありますが、さらなる発展には複合的な支援と長期的な視点が必要です。カンボジア政府および国際機関が協力して対応策を講じることで、この重要な経済セクターが地域経済にもたらす利益を最大化できるでしょう。