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カンボジアの鶏卵生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、カンボジアの鶏卵生産量は1961年の3,570トンから2023年の18,867トンまで約60年間で約5倍に増加しています。特に1980年代以降、安定した成長傾向が見られますが、2014年以降の生産量は20,000トンを超えることのない横ばいに近い状態が続いています。一方で、他国の成長率や技術進展と比較すると、停滞の要因や課題も浮かび上がります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 18,867
0.2% ↑
2022年 18,830
0.17% ↑
2021年 18,798
-0.93% ↓
2020年 18,973
1.35% ↑
2019年 18,720
0.11% ↑
2018年 18,700
-4.1% ↓
2017年 19,500
4.28% ↑
2016年 18,700
-1.58% ↓
2015年 19,000
-5% ↓
2014年 20,000
5.26% ↑
2013年 19,000
2.7% ↑
2012年 18,500
2.78% ↑
2011年 18,000
2.27% ↑
2010年 17,600
5.88% ↑
2009年 16,622
11.04% ↑
2008年 14,969
4.21% ↑
2007年 14,365
2.83% ↑
2006年 13,970
5.15% ↑
2005年 13,285
-0.11% ↓
2004年 13,300
2.31% ↑
2003年 13,000
-1.52% ↓
2002年 13,200
12.82% ↑
2001年 11,700 -
2000年 11,700 -
1999年 11,700
1.74% ↑
1998年 11,500
4.55% ↑
1997年 11,000
5.26% ↑
1996年 10,450
0.48% ↑
1995年 10,400 -
1994年 10,400
4% ↑
1993年 10,000
3.09% ↑
1992年 9,700
5.43% ↑
1991年 9,200
4.55% ↑
1990年 8,800
4.76% ↑
1989年 8,400
7.69% ↑
1988年 7,800
2.63% ↑
1987年 7,600 -
1986年 7,600
7.04% ↑
1985年 7,100
5.97% ↑
1984年 6,700
6.35% ↑
1983年 6,300
8.62% ↑
1982年 5,800
5.45% ↑
1981年 5,500
3.77% ↑
1980年 5,300
-1.85% ↓
1979年 5,400
-3.57% ↓
1978年 5,600
-9.68% ↓
1977年 6,200
1.64% ↑
1976年 6,100
1.67% ↑
1975年 6,000
3.45% ↑
1974年 5,800
1.75% ↑
1973年 5,700
3.64% ↑
1972年 5,500
1.85% ↑
1971年 5,400
5.88% ↑
1970年 5,100
6.25% ↑
1969年 4,800
9.09% ↑
1968年 4,400
4.76% ↑
1967年 4,200
2.44% ↑
1966年 4,100
2.5% ↑
1965年 4,000
2.56% ↑
1964年 3,900
2.63% ↑
1963年 3,800
2.7% ↑
1962年 3,700
3.64% ↑
1961年 3,570 -

カンボジアにおける鶏卵の生産量データを見ると、過去60年余りの間に着実な上昇が見られます。特に、1960年代から1980年代前半にかけて緩やかながらも安定した成長が続き、1989年以降は8,000~18,000トンを超える規模に達しています。これは、国内の農村部を中心とした伝統的な養鶏法と、次第に進みつつある商業ベースの畜産が手を携えた結果ともいえます。

2009年から2014年の間は急激な増加が見られ、16,622トンから20,000トンに達しました。これは、家禽業界全体での技術的な進歩や政策支援、さらには地域的な消費需要の高まりが生産に貢献した時期を示しています。しかし、2015年以降、年ごとの生産量は20,000トンを超えることなく小幅な変動を示しており、一種の停滞が確認できます。

地域課題として、その背景にはいくつかの要因が考えられます。まず一つ目は、依然として多くの生産者が家族経営の小規模な養鶏を行っている点です。これにより、効率的な生産や市場への供給が限定されることがあります。また、隣国であるタイやベトナムでは、技術革新が進んだ商業養鶏がすでに生産性を大幅に向上させており、カンボジアとの差を広げています。さらに、過去の内戦や政治的不安定の歴史もインフラ整備の遅れを招き、畜産業の発展を遅らせた要因とも関連しています。

一方で、地政学的な視点から見ると、カンボジアの鶏卵生産がASEAN市場の食品供給構造の一部としてさらに重要性を高める可能性もあります。ASEAN域内の協力による市場統合や輸出促進プログラムは、カンボジア国内の生産量向上、技術共有、国際市場へのアクセスを改善するための大きなチャンスとなり得ます。ただし、地域内での競争環境や規格化された品質基準への適応などが新たな課題となるでしょう。

直近の2020年から2023年は、わずかながら上向きの傾向が見られますが、新型コロナウイルスの影響により、供給チェーンの混乱や地元経済への悪影響が生じたことが推測されます。特に国内市場の消費低迷や飼料の輸入難が、家禽業界に短期的な停滞をもたらした可能性があります。

今後、カンボジアがこの産業を活性化し、持続可能な発展を遂げるにはいくつかの具体的なステップが必要です。まず、農家への技術支援プログラムや金融制度の改善により、効率的な養鶏技術の導入を推進すべきです。第二に、インフラ整備や物流ネットワークの強化を通じて、首都圏だけでなく地方市場や輸出先へのアクセスを容易にする必要があります。また、持続可能な飼育環境の構築に対する国際基準を取り入れ、国内外の消費者からの信頼を高めることも重要です。

FAOのデータが示すとおり、カンボジアの鶏卵生産量は長期的に見れば着実に成長を遂げているものの、近年の停滞傾向や地域的な競争環境を考慮すると、現状維持ではさらなる発展は望めないかもしれません。域内協力を基盤にしつつ、効率的な生産体制と輸出戦略を立案することで、カンボジアの養鶏業が地域的にも国際的にも確固たる地位を築くことが期待されます。