国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、東ティモールのコーヒー豆生産量は、1961年から2022年にかけてその生産量に大きな変動を示してきました。特に1960年代後半、および2010年代以降に顕著な生産量の変動が見られます。1961年の1,700トンから始まり、2021年には13,314トンという急激な増加を記録しましたが、その後の2022年には11,674トンとやや減少しました。これらの数値は、東ティモールにおける農業の重要性と、自然条件や政治的状況、国際市場など複合的な要因が絡んだ生産動態を反映しています。
東ティモールのコーヒー豆生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 9,168 |
-21.47% ↓
|
2022年 | 11,674 |
-12.32% ↓
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2021年 | 13,314 |
47.27% ↑
|
2020年 | 9,041 |
46.29% ↑
|
2019年 | 6,180 |
-25.9% ↓
|
2018年 | 8,340 |
113.85% ↑
|
2017年 | 3,900 |
-20.73% ↓
|
2016年 | 4,920 |
38.98% ↑
|
2015年 | 3,540 |
-46.85% ↓
|
2014年 | 6,660 |
38.75% ↑
|
2013年 | 4,800 |
31.15% ↑
|
2012年 | 3,660 |
-56.01% ↓
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2011年 | 8,320 |
-34.24% ↓
|
2010年 | 12,653 |
25% ↑
|
2009年 | 10,122 |
-27.75% ↓
|
2008年 | 14,009 |
0.06% ↑
|
2007年 | 14,000 | - |
2006年 | 14,000 |
-3.45% ↓
|
2005年 | 14,500 | - |
2004年 | 14,500 |
20.83% ↑
|
2003年 | 12,000 |
-14.29% ↓
|
2002年 | 14,000 |
-0.95% ↓
|
2001年 | 14,134 |
8.72% ↑
|
2000年 | 13,000 |
8.33% ↑
|
1999年 | 12,000 |
9.09% ↑
|
1998年 | 11,000 |
13.13% ↑
|
1997年 | 9,723 |
-11.5% ↓
|
1996年 | 10,987 |
9.87% ↑
|
1995年 | 10,000 |
11.11% ↑
|
1994年 | 9,000 |
12.5% ↑
|
1993年 | 8,000 |
3.44% ↑
|
1992年 | 7,734 |
-9.42% ↓
|
1991年 | 8,538 |
-1.07% ↓
|
1990年 | 8,631 |
7.89% ↑
|
1989年 | 8,000 | - |
1988年 | 8,000 | - |
1987年 | 8,000 | - |
1986年 | 8,000 | - |
1985年 | 8,000 | - |
1984年 | 8,000 | - |
1983年 | 8,000 | - |
1982年 | 8,000 | - |
1981年 | 8,000 | - |
1980年 | 8,000 | - |
1979年 | 8,000 |
-5.88% ↓
|
1978年 | 8,500 | - |
1977年 | 8,500 |
41.67% ↑
|
1976年 | 6,000 |
33.33% ↑
|
1975年 | 4,500 | - |
1974年 | 4,500 |
-15.97% ↓
|
1973年 | 5,355 |
13.91% ↑
|
1972年 | 4,701 |
-10.88% ↓
|
1971年 | 5,275 |
7.52% ↑
|
1970年 | 4,906 |
-2.37% ↓
|
1969年 | 5,025 |
391.2% ↑
|
1968年 | 1,023 |
-84.5% ↓
|
1967年 | 6,602 |
216.19% ↑
|
1966年 | 2,088 |
-25.59% ↓
|
1965年 | 2,806 |
18% ↑
|
1964年 | 2,378 |
-3.06% ↓
|
1963年 | 2,453 |
15.33% ↑
|
1962年 | 2,127 |
25.12% ↑
|
1961年 | 1,700 | - |
東ティモールは世界的に知られるアラビカ種コーヒー豆の主要生産国の一つですが、その生産量には長年にわたり大きな変動が観察されています。データを見ると、1961年から1970年代初頭に至るまでで生産量は2,000トン台を維持していましたが、一部の年では6,000トン以上に急増する年もありました。この時期の変動要因としては、インフラ整備の進展や外部輸送の不安定性が一因と考えられます。
1970年代半ばから1980年代には、東ティモールがインドネシアの統治下に遭ったことが生産の安定化に大きく影響しました。特に1977年以降、生産量は毎年ほぼ8,000トンと安定していました。しかし、この安定期が終わりを迎えたのが1990年代以降です。独立への動きが強まったこの時期、9,000トン以上への伸びや独立後の生産基盤の再構築が明確に見られます。
21世紀に入ると、東ティモールのコーヒー豆生産量はさらに上昇し、2001年には14,134トンに達しました。この上昇は、国際市場での需要拡大と東ティモール政府が行った農業振興策の影響によるものとされます。しかし、2011年以降、自然災害や病害、気候変動の影響を背景に、記録的な低水準である3,660トンを記録した2012年など、生産量が急激に低下する傾向も見られます。
特に注目すべきは、2015年から2017年における急激な減少と、それに続く2018年以降の持ち直しです。この背景には持続的な農業支援政策があると同時に、世界的な気候変動とプロデューサー層の高齢化がさらなる課題として明らかになっています。2021年には一時的に13,314トンまで回復しましたが、翌2022年には11,674トンと再度減少しており、未だ不安定さがうかがえます。
東ティモールのコーヒー産業にはいくつかの課題があります。まず、地域のインフラ不足や貧弱な輸送網のため、生産地から港湾への輸送に大きなコストがかかっている現状があります。そして、栽培農家が自然災害や病害虫からの被害を受けやすいことが、長期的な安定供給を妨げています。また、農家の所得水準が低いため、若者がコーヒー生産に関心を持ちにくく、農業の後継者不足も顕著です。
未来への提言としては、まず道路や物流ネットワークの強化を通じて輸送効率を向上させる計画が重要です。また、農業研究機関を交えた病害虫対策や品種改良を進めることで、生産量の安定を図ることが求められます。さらに、コーヒー農家支援を目的とした経済的インセンティブや若年層向け農業研修プログラムの整備も有効です。これらの施策が進むことで、コーヒー豆の品質向上が促進され、国際市場における競争力も一層高まるでしょう。
総じて、東ティモールのコーヒー豆生産量の推移は、多様な地政学的、経済的、環境的要因に左右されています。この不安定さを克服して将来的な成長を実現するためには、地域的・国際的な協力の枠組みを通じた持続可能な農業の推進が不可欠です。気候変動への適応策とともに、農家の生活向上を目指した政策を組み込むことで、東ティモールはさらに発展する可能性を秘めています。