国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによれば、東ティモールのヤギ飼養頭数は長年の変動を経て、近年は安定的に増加しています。2022年には215,152頭に達し、過去最低であった1980年の26,400頭と比較して大幅な回復を遂げています。このデータは、地域の経済、食糧安全保障、農業開発の現状を示す重要な指標です。
東ティモールのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 215,152 |
2021年 | 205,801 |
2020年 | 191,623 |
2019年 | 179,911 |
2018年 | 171,660 |
2017年 | 164,402 |
2016年 | 157,707 |
2015年 | 158,467 |
2014年 | 178,581 |
2013年 | 177,892 |
2012年 | 168,938 |
2011年 | 160,435 |
2010年 | 152,360 |
2009年 | 140,138 |
2008年 | 137,444 |
2007年 | 134,749 |
2006年 | 132,207 |
2005年 | 129,517 |
2004年 | 126,977 |
2003年 | 111,000 |
2002年 | 95,000 |
2001年 | 79,379 |
2000年 | 75,000 |
1999年 | 189,013 |
1998年 | 218,375 |
1997年 | 196,968 |
1996年 | 186,950 |
1995年 | 172,225 |
1994年 | 158,660 |
1993年 | 126,410 |
1992年 | 116,507 |
1991年 | 100,250 |
1990年 | 97,477 |
1989年 | 91,100 |
1988年 | 82,617 |
1987年 | 79,053 |
1986年 | 75,655 |
1985年 | 73,921 |
1984年 | 65,000 |
1983年 | 55,000 |
1982年 | 45,000 |
1981年 | 35,000 |
1980年 | 26,400 |
1979年 | 50,000 |
1978年 | 100,000 |
1977年 | 140,000 |
1976年 | 188,200 |
1975年 | 190,000 |
1974年 | 191,995 |
1973年 | 197,453 |
1972年 | 210,277 |
1971年 | 217,011 |
1970年 | 204,274 |
1969年 | 166,765 |
1968年 | 196,896 |
1967年 | 210,663 |
1966年 | 250,925 |
1965年 | 251,118 |
1964年 | 226,650 |
1963年 | 235,113 |
1962年 | 226,772 |
1961年 | 223,000 |
東ティモールは、1961年の223,000頭からスタートしたヤギの飼養頭数が、1970年代から1980年代にかけて大きく減少しており、特に1980年には26,400頭と最低値に達しました。この急激な減少は、1975年以降のインドネシアによる占領期やそれに伴った紛争状態、地域の社会・経済混乱の影響と考えられます。こうした歴史的背景は、単に農業の問題にとどまらず、地政学的リスクや社会安定性が農業生産に大きな影響を与えることを示唆しています。
しかし、その後の飼養頭数は1990年代に入ってさらに増加に転じ、2022年には215,152頭まで回復しました。この復調の背景には、2002年の独立後に行われた農業部門への国際的な支援や、国内政策の安定化、農業従事者の生活支援が挙げられます。ヤギの飼育は東ティモールの畜産における重要な一端を担っており、食肉や乳製品の供給源となるだけでなく、地方経済や住民の生計の安定化にも寄与しています。
一方で、過去数年間のデータを見ると、2014年から2016年にかけて飼養頭数が減少し、その後の増加への回復基調が見られました。これは自然災害や気候変動の影響によるものである可能性が高いです。東ティモールは地震や洪水などの自然災害のリスクを抱えており、作物や家畜への悪影響が懸念されています。また、アフリカ豚熱など新興の農業関連の疫病は、ヤギの健康や飼育環境にも潜在的な影響をもたらします。
現状における課題として、農業支援の持続性、災害リスク管理及び気候変動への適応が挙げられます。ヤギの飼養拡大においては、品質の高い牧草や飼料の供給、適切な獣医サービスの提供、および持続可能な飼育システムの導入が重要です。また、地域ごとの異なる土壌特性や気候条件を考慮した農業計画の策定が求められます。
具体的な対策として、まず、農村地域における技術者の育成と農家支援ネットワークの形成が挙げられます。これにより、地域に密着した飼育技術の普及と効率的な養殖が実現できます。そして、気候変動や自然災害に備えた政府主導の防災計画や、国際機関と連携した災害リスク軽減プログラムを強化する必要があります。さらに、ヤギから得られる製品(肉・乳等)を付加価値産業として発展させ、国内市場にとどまらず輸出も視野に入れることで、農業の多角化と経済的な安定が見込まれます。
将来的には、持続可能な農業モデルを確立するために、地域間協力や技術革新を活用した開発も重要となるでしょう。特に近隣諸国であるインドネシアやオーストラリアとの農業協力により、技術や資源の共有が可能となります。また、地政学的なリスクを考慮しながら、東ティモールの食糧安全保障を確保する枠組みの構築も緊急です。
結論として、東ティモールにおけるヤギの飼養頭数の推移は、農業開発や地域の安定性を示す重要な指標であり、過去からの教訓を踏まえた上で未来志向の取り組みが必要です。政府や国際機関の積極的な関与を通じて、持続可能な農業と地域経済の発展が期待されます。