国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、東ティモールの羊肉生産量は、1960年代から2023年までの間で大きな変動を示しています。特に1970年代後半から1980年代にかけて急激な減少が見られ、以後も安定しない推移が続いています。2023年現在、東ティモールの羊肉生産量は35トンで、近年の低水準となっています。このような統計からは、生産の不安定性やそれに影響を与える要因の存在が示唆されます。
東ティモールの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 35 |
-54.31% ↓
|
2022年 | 77 |
15.08% ↑
|
2021年 | 67 |
22.79% ↑
|
2020年 | 54 |
35.32% ↑
|
2019年 | 40 |
-13.53% ↓
|
2018年 | 46 |
-12.28% ↓
|
2017年 | 53 |
-5.95% ↓
|
2016年 | 56 |
-15.7% ↓
|
2015年 | 67 |
-39.57% ↓
|
2014年 | 110 |
5.21% ↑
|
2013年 | 105 |
19.32% ↑
|
2012年 | 88 |
17.33% ↑
|
2011年 | 75 |
17.19% ↑
|
2010年 | 64 |
3.23% ↑
|
2009年 | 62 |
1.64% ↑
|
2008年 | 61 |
1.67% ↑
|
2007年 | 60 |
1.69% ↑
|
2006年 | 59 |
1.72% ↑
|
2005年 | 58 |
1.75% ↑
|
2004年 | 57 |
14% ↑
|
2003年 | 50 |
16.28% ↑
|
2002年 | 43 |
22.86% ↑
|
2001年 | 35 |
9.38% ↑
|
2000年 | 32 |
-36% ↓
|
1999年 | 50 |
4.17% ↑
|
1998年 | 48 |
20% ↑
|
1997年 | 40 |
29.03% ↑
|
1996年 | 31 |
63.16% ↑
|
1995年 | 19 |
72.73% ↑
|
1994年 | 11 |
-45% ↓
|
1993年 | 20 |
11.11% ↑
|
1992年 | 18 | - |
1991年 | 18 |
5.88% ↑
|
1990年 | 17 | - |
1989年 | 17 |
30.77% ↑
|
1988年 | 13 |
-40.91% ↓
|
1987年 | 22 |
83.33% ↑
|
1986年 | 12 |
-66.67% ↓
|
1985年 | 36 |
-2.7% ↓
|
1984年 | 37 |
-7.5% ↓
|
1983年 | 40 |
-25.93% ↓
|
1982年 | 54 |
20% ↑
|
1981年 | 45 |
18.42% ↑
|
1980年 | 38 |
-15.56% ↓
|
1979年 | 45 |
-35.71% ↓
|
1978年 | 70 |
-26.32% ↓
|
1977年 | 95 |
-3.06% ↓
|
1976年 | 98 |
-2% ↓
|
1975年 | 100 |
-13.79% ↓
|
1974年 | 116 |
-8.66% ↓
|
1973年 | 127 |
-5.93% ↓
|
1972年 | 135 |
12.5% ↑
|
1971年 | 120 |
9.09% ↑
|
1970年 | 110 |
10% ↑
|
1969年 | 100 |
-16.67% ↓
|
1968年 | 120 | - |
1967年 | 120 | - |
1966年 | 120 | - |
1965年 | 120 | - |
1964年 | 120 | - |
1963年 | 120 | - |
1962年 | 120 | - |
1961年 | 120 | - |
東ティモールの1961年から2023年にかけての羊肉生産量データを見ると、1961年から1970年代前半までは比較的安定した生産量を維持していました。1960年代には年間生産量が約120トンの水準を続けており、この時期は社会的・地政学的安定が一定程度確保されていたことが背景にあると考えられます。しかし、その後1975年以降、東ティモールがインドネシアに併合された時期には、急激に生産量が減少します。特に1978年には70トン、さらに1980年には38トンへと下降しました。この生産量の減少は、紛争や政治混乱による農業システムの崩壊、家畜管理の停滞が原因と推測されます。
1980年代には、最低水準である12トン(1986年)という数値も記録されており、当時の紛争による影響が顕著に現れています。その後、1990年代から2000年代初頭にかけて、徐々に回復する兆しが見え始めています。例えば、2003年には50トンの生産量を記録し、2010年代に入ると100トン台へと回復しました。2014年には110トンと過去のピークに迫る生産量を達成しています。これは、独立回復後の政策整備や農業支援プログラムの結果と考えられます。
しかし、2015年以降には再び生産量が不安定となり、2023年には35トンと大幅に減少しています。この変動には複数の要因が考えられます。第1には、新型コロナウイルスのパンデミックによる影響が、農業従事者の活動や家畜流通に制約を与えた可能性があります。第2に、気候変動に伴う災害や降水量の変化、また土壌の劣化が、生産効率を低下させている可能性も指摘できます。さらに、家畜管理技術やインフラの不足、農業の近代化の遅れも考慮すべき要素です。
これらのデータは、持続可能な農業政策が欠如している現状を裏付けるものとも言えます。特に家畜生産の規模が小さく、地域経済のリスク耐性が低い東ティモールのような国では、生産量の増減が市場価格や地域住民の食料事情に直結します。このため、近代的な家畜管理方法の普及や、輸送インフラの改善、災害対応策など、長期的な視点での施策が必要不可欠です。
未来に向けての対策としては、政府と国際機関の連携が重要です。例えば、地域住民向けの持続可能な家畜飼育プログラムや、災害に耐えるエコシステム作りが有効です。また、隣国であるインドネシアやオーストラリアとの農業技術交流も、生産性向上の鍵となるでしょう。さらに、気候変動の影響を緩和するための施策も不可欠です。具体的には、災害に強い牧草地の開発や水資源管理の強化を通じて、安定的な生産基盤を確立することです。
結論として、東ティモールの羊肉生産量データは、地政学的背景や内部の体制問題、新たな環境問題が密接に関係していることを示しています。これを踏まえ、国際的な支援と国の中長期的な戦略が組み合わさることで、持続可能な畜産業の発展が期待されます。この取り組みは、地域住民の食の安全を向上させ、経済成長の基盤を固める大きな一歩となるでしょう。