Skip to main content

東ティモールの米生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、東ティモールの米生産量は1961年に16,757トンから始まり、その後波を描きながら成長を続け、1980年代には年間30,000~40,000トン程度に達しました。その後1990年代から2000年代初頭に安定的な成長を見せ、2009年には120,775トンとピークに至りました。しかし、2010年代後半以降は再び減少傾向にあり、2021年には45,455トンまで落ち込みましたが、2022年には76,000トンと回復の兆しを見せています。この長期的な生産量データは、経済的要因や地政学的背景、気候変動の影響が農業に与える影響を浮き彫りにしています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 83,000
9.21% ↑
2022年 76,000
67.2% ↑
2021年 45,455
-9.06% ↓
2020年 49,983
4.52% ↑
2019年 47,822
-16.1% ↓
2018年 57,000
-8.23% ↓
2017年 62,115
3.52% ↑
2016年 60,000
-16.13% ↓
2015年 71,541
-19.46% ↓
2014年 88,824
1.71% ↑
2013年 87,332
-26.71% ↓
2012年 119,166
21.23% ↑
2011年 98,297
-12.95% ↓
2010年 112,925
-6.5% ↓
2009年 120,775
50.49% ↑
2008年 80,257
32.83% ↑
2007年 60,420
9.04% ↑
2006年 55,410
-5.9% ↓
2005年 58,887
68.28% ↑
2004年 34,994
-46.52% ↓
2003年 65,433
21.95% ↑
2002年 53,656
-0.35% ↓
2001年 53,845
5.58% ↑
2000年 51,000
51.85% ↑
1999年 33,585
-8.86% ↓
1998年 36,848
-2.95% ↓
1997年 37,968
-27.83% ↓
1996年 52,607
12.66% ↑
1995年 46,696
12.63% ↑
1994年 41,461
-19.91% ↓
1993年 51,766
-1.69% ↓
1992年 52,657
-21.28% ↓
1991年 66,890
43.31% ↑
1990年 46,675
15.38% ↑
1989年 40,452
8.61% ↑
1988年 37,246
-11.43% ↓
1987年 42,054
5.14% ↑
1986年 40,000 -
1985年 40,000
-4.76% ↓
1984年 42,000
16.67% ↑
1983年 36,000
9.09% ↑
1982年 33,000
3.13% ↑
1981年 32,000
6.67% ↑
1980年 30,000
7.14% ↑
1979年 28,000 -
1978年 28,000
7.69% ↑
1977年 26,000
8.33% ↑
1976年 24,000
-4% ↓
1975年 25,000
8.7% ↑
1974年 23,000
18.03% ↑
1973年 19,486
20.69% ↑
1972年 16,145
53.41% ↑
1971年 10,524
-16.16% ↓
1970年 12,553
-1.68% ↓
1969年 12,767
-40.8% ↓
1968年 21,566
41.04% ↑
1967年 15,291
29.98% ↑
1966年 11,764
23.36% ↑
1965年 9,536
-24.89% ↓
1964年 12,696
-9.31% ↓
1963年 14,000
-8.5% ↓
1962年 15,300
-8.69% ↓
1961年 16,757 -

東ティモールの米生産量推移では、長期にわたる重要なトレンドが見て取れます。1960年代から1970年代にかけての低い生産量は、インフラの未整備や農業技術の不足、また同国がポルトガル領として統治されていた背景が影響しています。1975年の独立後一時的に生産量は増加しましたが、それ以降1975年から1999年のインドネシアによる占領期は依然として混乱の中にあり、食料の自己生産能力が制約されたことが要因と考えられます。

1990年代終盤から2000年代初期にかけて、東ティモールは独立を達成し、国連の支援を受けながら農業セクターの再建に取り組みました。この時期にはほぼ50,000トン前後の生産量を維持し、2009年には120,775トンという過去最高を記録しました。この成長は、農業支援プロジェクトの導入や灌漑(かんがい)インフラの改善、地元農民への支援体制の強化が背景にあります。しかし、それ以降の10年間では生産量が減少し、特に2019年から2021年にかけては50,000トンを下回る水準で推移しました。この要因として、気候変動による旱魃(かんばつ)や洪水の頻発、新型コロナウイルスによる輸送や供給網の混乱が挙げられます。

興味深いのは、2022年の生産量が76,000トンと再び増加傾向を見せた点です。ここには政府や国際機関による農業支援策の再強化や天候の比較的安定が寄与していると考えられます。ただし、生産量は依然として不安定であり、国内の食料安全保障という観点では課題が多く残されています。

現在の課題として、まず挙げられるのが変動する天候に対する農業生産の脆弱性です。東ティモールは小規模農業が中心で、灌漑設備や水管理システムの普及が十分ではありません。そのため、天候に左右されやすい状況が続いています。また、家族経営農民が多く、近代的な農業技術や効率的な生産方法の導入が十分進んでいません。一方で、インフラの未整備や輸送手段の限界も、国内流通を妨げる要因となっています。

東ティモールが将来的に持続可能な米生産を実現するためには、いくつかの具体的な提言が可能です。まず、天候リスクを軽減するために、国際機関や民間セクターと連携して灌漑インフラの拡充を進める必要があります。また、小規模農家向けの技術指導や種子改善の支援を強化し、効率的な生産を可能にする体制を整えるべきです。さらに、地域間での農産物流通を円滑にするための道路や物流ネットワークの改善が求められます。これには、国家予算の増額や国際援助の積極的な活用が重要です。

気候変動や地域的な地政学的リスク(たとえばインドネシアとの国境問題)が今後の農業セクターに与える影響も無視できません。これに対応するためには、国際的な協力や周辺国との関係強化を基盤とする政策が必要です。また、食料供給が地域的な紛争や疫病の影響で脆弱になりやすいため、国内の農業アプローチだけでなく、ASEAN加盟国の枠組みを利用して地域的な食料安全保障に関与することも鍵となるでしょう。

結論として、このデータは東ティモールの米生産の歴史を通じて、同国が直面する課題とその解決に向けた足取りを明らかにしています。これからの優先事項は、持続可能な生産体系の確立と、変化する環境に適応するための柔軟な政策の構築です。国際社会のサポートと地域協力を活用することで、より安定した米生産と食料安全保障が実現できる可能性は十分にあります。