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東ティモールの米生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、東ティモールの米生産量は1961年に16,757トンから始まり、その後波を描きながら成長を続け、1980年代には年間30,000~40,000トン程度に達しました。その後1990年代から2000年代初頭に安定的な成長を見せ、2009年には120,775トンとピークに至りました。しかし、2010年代後半以降は再び減少傾向にあり、2021年には45,455トンまで落ち込みましたが、2022年には76,000トンと回復の兆しを見せています。この長期的な生産量データは、経済的要因や地政学的背景、気候変動の影響が農業に与える影響を浮き彫りにしています。

年度 生産量(トン)
2022年 76,000
2021年 45,455
2020年 49,983
2019年 47,822
2018年 57,000
2017年 62,115
2016年 60,000
2015年 71,541
2014年 88,824
2013年 87,332
2012年 119,166
2011年 98,297
2010年 112,925
2009年 120,775
2008年 80,257
2007年 60,420
2006年 55,410
2005年 58,887
2004年 34,994
2003年 65,433
2002年 53,656
2001年 53,845
2000年 51,000
1999年 33,585
1998年 36,848
1997年 37,968
1996年 52,607
1995年 46,696
1994年 41,461
1993年 51,766
1992年 52,657
1991年 66,890
1990年 46,675
1989年 40,452
1988年 37,246
1987年 42,054
1986年 40,000
1985年 40,000
1984年 42,000
1983年 36,000
1982年 33,000
1981年 32,000
1980年 30,000
1979年 28,000
1978年 28,000
1977年 26,000
1976年 24,000
1975年 25,000
1974年 23,000
1973年 19,486
1972年 16,145
1971年 10,524
1970年 12,553
1969年 12,767
1968年 21,566
1967年 15,291
1966年 11,764
1965年 9,536
1964年 12,696
1963年 14,000
1962年 15,300
1961年 16,757

東ティモールの米生産量推移では、長期にわたる重要なトレンドが見て取れます。1960年代から1970年代にかけての低い生産量は、インフラの未整備や農業技術の不足、また同国がポルトガル領として統治されていた背景が影響しています。1975年の独立後一時的に生産量は増加しましたが、それ以降1975年から1999年のインドネシアによる占領期は依然として混乱の中にあり、食料の自己生産能力が制約されたことが要因と考えられます。

1990年代終盤から2000年代初期にかけて、東ティモールは独立を達成し、国連の支援を受けながら農業セクターの再建に取り組みました。この時期にはほぼ50,000トン前後の生産量を維持し、2009年には120,775トンという過去最高を記録しました。この成長は、農業支援プロジェクトの導入や灌漑(かんがい)インフラの改善、地元農民への支援体制の強化が背景にあります。しかし、それ以降の10年間では生産量が減少し、特に2019年から2021年にかけては50,000トンを下回る水準で推移しました。この要因として、気候変動による旱魃(かんばつ)や洪水の頻発、新型コロナウイルスによる輸送や供給網の混乱が挙げられます。

興味深いのは、2022年の生産量が76,000トンと再び増加傾向を見せた点です。ここには政府や国際機関による農業支援策の再強化や天候の比較的安定が寄与していると考えられます。ただし、生産量は依然として不安定であり、国内の食料安全保障という観点では課題が多く残されています。

現在の課題として、まず挙げられるのが変動する天候に対する農業生産の脆弱性です。東ティモールは小規模農業が中心で、灌漑設備や水管理システムの普及が十分ではありません。そのため、天候に左右されやすい状況が続いています。また、家族経営農民が多く、近代的な農業技術や効率的な生産方法の導入が十分進んでいません。一方で、インフラの未整備や輸送手段の限界も、国内流通を妨げる要因となっています。

東ティモールが将来的に持続可能な米生産を実現するためには、いくつかの具体的な提言が可能です。まず、天候リスクを軽減するために、国際機関や民間セクターと連携して灌漑インフラの拡充を進める必要があります。また、小規模農家向けの技術指導や種子改善の支援を強化し、効率的な生産を可能にする体制を整えるべきです。さらに、地域間での農産物流通を円滑にするための道路や物流ネットワークの改善が求められます。これには、国家予算の増額や国際援助の積極的な活用が重要です。

気候変動や地域的な地政学的リスク(たとえばインドネシアとの国境問題)が今後の農業セクターに与える影響も無視できません。これに対応するためには、国際的な協力や周辺国との関係強化を基盤とする政策が必要です。また、食料供給が地域的な紛争や疫病の影響で脆弱になりやすいため、国内の農業アプローチだけでなく、ASEAN加盟国の枠組みを利用して地域的な食料安全保障に関与することも鍵となるでしょう。

結論として、このデータは東ティモールの米生産の歴史を通じて、同国が直面する課題とその解決に向けた足取りを明らかにしています。これからの優先事項は、持続可能な生産体系の確立と、変化する環境に適応するための柔軟な政策の構築です。国際社会のサポートと地域協力を活用することで、より安定した米生産と食料安全保障が実現できる可能性は十分にあります。