国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、東ティモールの馬飼養数は1961年の83,000頭からスタートし、1970年代前半まで安定的に増加しました。その後、大きな減少を経て1990年代後半に再び増加の兆しを見せましたが、2000年代後半以降は再度減少傾向に転じています。2022年の時点では38,328頭と記録されており、これは1961年の飼養数に比べて大幅に減少しています。この推移には歴史的背景や地政学的な要因が大きく影響を与えていると推測されます。
東ティモールの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 38,328 |
2021年 | 40,915 |
2020年 | 39,918 |
2019年 | 39,171 |
2018年 | 45,001 |
2017年 | 47,997 |
2016年 | 50,008 |
2015年 | 50,751 |
2014年 | 52,266 |
2013年 | 51,797 |
2012年 | 53,731 |
2011年 | 55,738 |
2010年 | 57,819 |
2009年 | 66,124 |
2008年 | 65,541 |
2007年 | 64,956 |
2006年 | 63,477 |
2005年 | 63,803 |
2004年 | 48,000 |
2003年 | 48,000 |
2002年 | 48,000 |
2001年 | 45,158 |
2000年 | 42,000 |
1999年 | 38,000 |
1998年 | 33,994 |
1997年 | 32,713 |
1996年 | 31,915 |
1995年 | 31,061 |
1994年 | 49,694 |
1993年 | 27,053 |
1992年 | 26,523 |
1991年 | 26,003 |
1990年 | 24,920 |
1989年 | 24,535 |
1988年 | 24,117 |
1987年 | 23,890 |
1986年 | 23,452 |
1985年 | 23,360 |
1984年 | 30,000 |
1983年 | 50,000 |
1982年 | 60,000 |
1981年 | 69,000 |
1980年 | 78,000 |
1979年 | 87,000 |
1978年 | 96,000 |
1977年 | 85,000 |
1976年 | 94,000 |
1975年 | 103,000 |
1974年 | 112,182 |
1973年 | 119,786 |
1972年 | 119,441 |
1971年 | 114,152 |
1970年 | 106,772 |
1969年 | 104,854 |
1968年 | 101,024 |
1967年 | 99,381 |
1966年 | 105,840 |
1965年 | 100,000 |
1964年 | 94,396 |
1963年 | 91,850 |
1962年 | 87,407 |
1961年 | 83,000 |
東ティモールの馬飼養数の推移を振り返ると、幾つかの特徴的な変化が見られます。1960年代から1970年代前半にかけての増加は、農業や交通手段としての馬の需要が高まっていたことが背景にあると考えられます。この当時のピークは1972年の119,441頭で、この時期の経済活動や農村地域での馬の役割が非常に重要であったことを示しています。
しかし、1975年を境に馬の飼養数は急激に減少しています。これは1975年の東ティモール独立宣言直後に起こったインドネシアによる併合と、それに続く社会的不安や紛争の影響を受けたものと考えられます。特に1980年代は飼養環境の悪化や資源不足、馬の需要減少が重なり、1985年には最小値となる23,360頭を記録しました。ここから分断された国の経済基盤や農業の停滞が馬の頭数に与えた影響を読み取ることができます。
1990年代後半以降、馬の飼養数は緩やかに増加しましたが、近年は再び減少傾向に転じています。近年の減少理由には、馬の代替として他の技術や機械の普及、農業経済の変化、さらに馬の飼養に関連するコストや労力の増加が挙げられます。2022年には38,328頭と1961年の83,000頭の半数以下に減少する結果となりました。また、天候変動や自然災害といった要素が農業や牧畜全体への影響を及ぼし、馬の飼養にも否応なく影響を与えている可能性も十分に考えられます。
これらの背景には、東ティモールという地政学的に注目されるエリア特有の課題も見受けられます。特に1975年以降の紛争や政治的緊張は、社会の安定やインフラ整備に遅れをもたらし、農業や畜産業の発展を阻害してきました。このような緊張は地域経済にとって大きなリスクであり、結果的に馬の飼養にも悪影響を及ぼしました。
未来に向けて具体的な示唆としては、まずは農畜産業全体における持続可能性を高めるための支援が必要です。例えば、馬を農業に活用するための資材提供や技術指導、また、農村地域での教育プログラム実施による人材育成が期待されます。また、馬以外の家畜や機械化手段を導入する際にも、いかに農業生産性を向上させつつ環境負荷を抑えるかを考慮した政策策定が求められます。さらに、気候変動の影響を受けにくい農牧業の方法を模索することで、将来的な災害リスクや市場の変動に対応しやすくなる可能性があります。
最終的に、馬飼養数の安定は東ティモールの農業や農村経済を活性化する上での重要な指標となり得ます。そのためには国内の政治的安定と国際機関の支援を得ながら、農牧業の近代化と自立を目指した複合的なアプローチを進めることが不可欠です。このような取り組みこそが、長期的な地域発展に寄与すると考えられます。