国際連合食糧農業機関が発表した最新データによれば、東ティモールの大豆生産量は過去数十年間で大幅な変動を示しています。一貫した生産量が見られる初期の期間から、1990年代以降、生産量の増減が顕著となり、2022年には821トンと減少傾向が続いている状況です。特に2009年には1,818トンと大きく跳ね上がった一方、2021年の362トンという低迷を記録するなど、生産性の波が深刻であることが分かります。
東ティモールの大豆生産量推移(1961年~2023年)
| 年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
|---|---|---|
| 2023年 | 854 |
4.02% ↑
|
| 2022年 | 821 |
126.82% ↑
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| 2021年 | 362 |
-57.52% ↓
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| 2020年 | 852 |
-1.86% ↓
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| 2019年 | 868 |
-2.18% ↓
|
| 2018年 | 888 |
-1.24% ↓
|
| 2017年 | 899 |
-7.19% ↓
|
| 2016年 | 968 |
-2.26% ↓
|
| 2015年 | 991 |
0.61% ↑
|
| 2014年 | 985 |
-1.47% ↓
|
| 2013年 | 999 |
-4.02% ↓
|
| 2012年 | 1,041 |
-32.99% ↓
|
| 2011年 | 1,554 |
329.28% ↑
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| 2010年 | 362 |
-80.09% ↓
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| 2009年 | 1,818 |
127.25% ↑
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| 2008年 | 800 |
-9.77% ↓
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| 2007年 | 887 |
0.16% ↑
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| 2006年 | 885 |
0.64% ↑
|
| 2005年 | 880 |
0.15% ↑
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| 2004年 | 878 |
35.11% ↑
|
| 2003年 | 650 |
1.56% ↑
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| 2002年 | 640 |
-3.03% ↓
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| 2001年 | 660 |
-17.5% ↓
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| 2000年 | 800 |
-22.33% ↓
|
| 1999年 | 1,030 |
53.27% ↑
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| 1998年 | 672 |
-14.18% ↓
|
| 1997年 | 783 |
-37.06% ↓
|
| 1996年 | 1,244 |
36.25% ↑
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| 1995年 | 913 |
36.68% ↑
|
| 1994年 | 668 |
-52.35% ↓
|
| 1993年 | 1,402 |
2.26% ↑
|
| 1992年 | 1,371 |
82.07% ↑
|
| 1991年 | 753 |
-30.02% ↓
|
| 1990年 | 1,076 |
7.6% ↑
|
| 1989年 | 1,000 | - |
| 1988年 | 1,000 | - |
| 1987年 | 1,000 | - |
| 1986年 | 1,000 | - |
| 1985年 | 1,000 | - |
| 1984年 | 1,000 | - |
| 1983年 | 1,000 | - |
| 1982年 | 1,000 | - |
| 1981年 | 1,000 | - |
| 1980年 | 1,000 | - |
| 1979年 | 1,000 | - |
| 1978年 | 1,000 | - |
| 1977年 | 1,000 | - |
| 1976年 | 1,000 | - |
| 1975年 | 1,000 | - |
| 1974年 | 1,000 | - |
| 1973年 | 1,000 | - |
| 1972年 | 1,000 | - |
| 1971年 | 1,000 | - |
| 1970年 | 1,000 | - |
| 1969年 | 1,000 | - |
| 1968年 | 1,000 | - |
| 1967年 | 1,000 | - |
| 1966年 | 1,000 | - |
| 1965年 | 1,000 | - |
| 1964年 | 1,000 | - |
| 1963年 | 1,000 | - |
| 1962年 | 1,000 | - |
| 1961年 | 1,000 | - |
東ティモールの大豆生産量の推移を見ると、1961年から1989年までの期間は非常に安定しており、1,000トンで横ばい状態を保っていました。しかし、1990年以降は大豆生産量が急激に増減を繰り返すようになります。1990年には1,076トンという若干の増加が見られたものの、1991年には753トンに落ち込み、その後も大きな上下動が繰り返されています。このような不安定な動きは1980年代以前の安定した状況とは対照的であり、何らかの要因が生産量の変動に影響を与えた可能性があります。
特筆すべきは、2009年の1,818トンという大幅な急増です。この背景には、国内の農業振興策や天候条件が一時的に整ったこと、また国際市場での大豆需要の増加が影響した可能性があります。しかし、その後2010年には362トンと急減するなど、一時の高生産量が継続できていないという課題が浮き彫りになります。近年の推移を見ると、2016年以降、大豆生産量はおおむね900トンを下回る低水準を維持しており、2021年には362トン、2022年には821トンと回復の兆しが見られるものの、2000年代の最高記録から遠い状況です。
この変動要因を考える際、東ティモールの地政学的背景や農業基盤の課題が重要です。同国はインドネシア系の支配を経て2002年に独立しましたが、独立後もインフラ整備や農業技術の普及が進んでいないことが多数報告されています。また、頻繁な干ばつや降水量の不足などの自然要因も大豆生産に影響を与えていると考えられます。加えて、大豆を栽培する農民が他の現金作物に移行するなど、農業政策の不十分さも生産量低迷の一因となっている恐れがあります。
大豆生産は、東ティモールの農業経済にとって重要な位置を占めていますが、他国と比較するとその生産規模に大きな差があります。例えば、アジア地域では中国やインドで大豆が大規模に生産されており、年間の生産量はそれぞれ1億トン以上に達しています。一方で東ティモールは1,000トン前後に留まっており、生産技術、労働力、インフラ、気候への適応力で大きな課題を抱えています。
この現状を踏まえ、将来的に課題解決が急務です。まず、インフラ整備と農業技術の向上が必要不可欠です。例えば、灌漑設備の建設や降水量に左右されにくい品種の導入を進めることが挙げられます。また、農民への技術支援や教育制度の整備を通じて、生産性を向上させる努力が求められます。さらに、地元と国際市場の橋渡しをするために、マーケティングやサプライチェーンの構築が重要です。
また、地政学的安定を保つことも大豆生産量増加には欠かせません。他国との経済協力や貿易の推進により、輸出市場を広げることで農家のインセンティブを向上させるべきです。特にASEAN諸国との連携や地域間協力の枠組みを活用することで、継続的な経済発展を目指すことが可能です。
結論として、東ティモールの大豆生産量の推移は、その国が抱える農業、経済、気候、地政学的課題の縮図を示しています。この変動を安定し、持続可能な発展を確立するためには、具体的な政策と国際的な支援が不可欠です。国際機関や近隣諸国との協力を深めつつ、農業基盤の整備と生産プロセスの改善を進めることで、東ティモールは豊かな農業資源を最大限に活用する未来を築けるはずです。