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エスワティニの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、エスワティニの牛乳生産量は1961年の24,000トンから長期的に増加傾向を示していましたが、1990年代半ば以降は変動が激しくなっています。2000年代以降はおおむね39,000トン台を維持していたものの、2023年には35,801トンにまで減少しています。この動向は、農業や環境、経済に関連する複数の課題を反映している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 35,801
-9.86% ↓
2022年 39,719
0.11% ↑
2021年 39,674
0.11% ↑
2020年 39,630
0.63% ↑
2019年 39,381
0.5% ↑
2018年 39,187
-0.25% ↓
2017年 39,284
-0.22% ↓
2016年 39,369
-0.71% ↓
2015年 39,651
-0.65% ↓
2014年 39,909
-0.18% ↓
2013年 39,979
-1.07% ↓
2012年 40,410
0.62% ↑
2011年 40,159
0.63% ↑
2010年 39,909
-4.98% ↓
2009年 42,000
1.6% ↑
2008年 41,337
5.99% ↑
2007年 39,000
4% ↑
2006年 37,500
-3.1% ↓
2005年 38,700
-1.57% ↓
2004年 39,317
-0.46% ↓
2003年 39,500
-0.66% ↓
2002年 39,764
4.64% ↑
2001年 38,000
1.33% ↑
2000年 37,500
10.29% ↑
1999年 34,000
-9.57% ↓
1998年 37,600
1.35% ↑
1997年 37,100
1.09% ↑
1996年 36,700
1.1% ↑
1995年 36,300
-14.39% ↓
1994年 42,400
0.95% ↑
1993年 42,000
-6.67% ↓
1992年 45,000
2.27% ↑
1991年 44,000
4.76% ↑
1990年 42,000
2.44% ↑
1989年 41,000
2.5% ↑
1988年 40,000 -
1987年 40,000 -
1986年 40,000
2.56% ↑
1985年 39,000
4% ↑
1984年 37,500 -
1983年 37,500
1.35% ↑
1982年 37,000
1.37% ↑
1981年 36,500 -
1980年 36,500
1.39% ↑
1979年 36,000
2.86% ↑
1978年 35,000
2.94% ↑
1977年 34,000
3.03% ↑
1976年 33,000
3.13% ↑
1975年 32,000
3.23% ↑
1974年 31,000
3.33% ↑
1973年 30,000
3.45% ↑
1972年 29,000
7.41% ↑
1971年 27,000
3.85% ↑
1970年 26,000
8.33% ↑
1969年 24,000
4.35% ↑
1968年 23,000 -
1967年 23,000
4.55% ↑
1966年 22,000
-4.35% ↓
1965年 23,000
-8% ↓
1964年 25,000
4.17% ↑
1963年 24,000
-4% ↓
1962年 25,000
4.17% ↑
1961年 24,000 -

エスワティニの牛乳生産量のデータを年代ごとに見ると、1960年代から1970年代後半にかけては比較的一貫して増加傾向を示していました。この時期、国内の乳業は徐々に拡大し、農業インフラの整備や技術の導入が進んでいたと推察されます。特に1970年代から1980年代半ばにかけて、約1,000トンのペースで生産量が積み重ねられ、1985年には39,000トンに達しました。しかし、1990年代に入ると、牛乳生産量は安定期に入りつつも、例外的に1995年には36,300トンまで大幅に減少しています。この減少には、地域的な要因や経済政策の変化が影響を与えた可能性があります。

2000年代以降は39,000トン台が一定の基準値として見られましたが、この平均的な水準は決して万能ではありません。特筆すべきは、2010年以降のデータです。この時期からわずかながらも生産量が下降線をたどり始めています。具体的には2015年から2018年の間、毎年微細に減少し、その間の減少分も約300トン弱となっています。また、2023年には35,801トンと著しい減少が観察されました。これは、過去10年間と比較して明らかな逸脱であり、農業環境や政策的背景の深刻な問題を示唆しています。

牛乳生産量が減少する主な要因としては、まず気候変動が挙げられます。エスワティニは南部アフリカに位置し、干ばつリスクの高い地域にあります。この地域では気温の上昇や降水量の不規則化が牧草地の質や供給量に直接的な影響を及ぼし、乳牛の生産力を低下させることがあります。また、経済的不安定さも影響しています。特に2023年における生産量の急減は、地域的なインフレ圧力や国際的な経済変動、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている可能性があります。例えば、輸入飼料の価格高騰や農業従事者への賃金支払いの遅滞などが供給チェーン全体を乱している恐れがあります。

さらに、地政学的課題についても触れる必要があります。エスワティニは周辺国として南アフリカ共和国に近接していますが、この地政学的位置は時に不安定な貿易関係を生み出します。輸出用乳製品の価格競争力が低下することで、国内農業の投資が停滞するリスクが考えられます。同時に、エスワティニ国内の農業政策も課題を抱えており、効率的な酪農経営を促進するための政策的支援が不足している可能性があります。

これらの課題を踏まえると、エスワティニが安定した牛乳生産を維持し、さらには増加を目指すためには、いくつかの具体的な対策が求められます。第一に、気候変動に対応するための耐性の高い乳牛種の採用や、持続可能な牧草地管理のための教育プログラムが必要です。第二に、輸入飼料に頼らない自給的資源の開発や、国際支援機関からの補助を活用した技術革新も重要です。また、地域貿易の強化を目的に、南部アフリカ共同体(SADC)の枠組みを利用した農業協力体制を構築することが求められます。

結論として、エスワティニの牛乳生産量の歴史的推移には、農業技術の進歩や社会経済的変化が反映されています。ただし近年の減少傾向は、気候や経済、政策上の複合的な問題を明るみにしており、これらに対応するための包括的かつ長期的な戦略が必要です。国際協力機関や国内政策の適切な支援によって、エスワティニは安定した酪農産業を再構築できる可能性があります。