エスワティニのバナナ生産量は、1961年の1,418トンから長い低迷期を経て、2000年代に急激な増加を見せています。特に2006年以降の伸びが顕著で、最終的に2022年には17,957トンに到達しています。この50年以上のデータは、エスワティニの農業政策の変遷や地政学的背景、気候変動の影響などを反映した動向を示しています。
エスワティニのバナナ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 18,625 |
3.72% ↑
|
2022年 | 17,957 |
5.63% ↑
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2021年 | 17,000 |
17.24% ↑
|
2020年 | 14,500 |
-9.38% ↓
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2019年 | 16,000 |
12.43% ↑
|
2018年 | 14,231 |
9.99% ↑
|
2017年 | 12,938 |
11.67% ↑
|
2016年 | 11,587 |
13.15% ↑
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2015年 | 10,240 |
23% ↑
|
2014年 | 8,326 |
15.43% ↑
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2013年 | 7,212 |
20.21% ↑
|
2012年 | 6,000 |
3.45% ↑
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2011年 | 5,800 |
0.87% ↑
|
2010年 | 5,750 |
0.88% ↑
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2009年 | 5,700 |
6.68% ↑
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2008年 | 5,343 |
-10.95% ↓
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2007年 | 6,000 |
100% ↑
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2006年 | 3,000 |
50% ↑
|
2005年 | 2,000 |
100% ↑
|
2004年 | 1,000 |
40.42% ↑
|
2003年 | 712 |
6.44% ↑
|
2002年 | 669 |
6% ↑
|
2001年 | 631 |
6.16% ↑
|
2000年 | 595 |
6.39% ↑
|
1999年 | 559 |
-24.18% ↓
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1998年 | 737 |
5.75% ↑
|
1997年 | 697 |
8.44% ↑
|
1996年 | 643 |
8.04% ↑
|
1995年 | 595 |
6.87% ↑
|
1994年 | 557 |
1.45% ↑
|
1993年 | 549 |
9.75% ↑
|
1992年 | 500 |
-37.5% ↓
|
1991年 | 800 |
-26.47% ↓
|
1990年 | 1,088 |
8.8% ↑
|
1989年 | 1,000 | - |
1988年 | 1,000 | - |
1987年 | 1,000 | - |
1986年 | 1,000 | - |
1985年 | 1,000 | - |
1984年 | 1,000 | - |
1983年 | 1,000 | - |
1982年 | 1,000 | - |
1981年 | 1,000 | - |
1980年 | 1,000 | - |
1979年 | 1,000 | - |
1978年 | 1,000 | - |
1977年 | 1,000 | - |
1976年 | 1,000 |
4.71% ↑
|
1975年 | 955 |
1.06% ↑
|
1974年 | 945 |
-55.88% ↓
|
1973年 | 2,142 |
33.88% ↑
|
1972年 | 1,600 |
-3.9% ↓
|
1971年 | 1,665 |
179.83% ↑
|
1970年 | 595 |
14.42% ↑
|
1969年 | 520 |
4.21% ↑
|
1968年 | 499 |
-28.71% ↓
|
1967年 | 700 |
-22.48% ↓
|
1966年 | 903 | - |
1965年 | 903 |
-9.7% ↓
|
1964年 | 1,000 |
10.25% ↑
|
1963年 | 907 |
-52.74% ↓
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1962年 | 1,919 |
35.33% ↑
|
1961年 | 1,418 | - |
エスワティニのバナナ生産量推移からは、同国の農業構造や気候および経済状況の変化が読み取れます。1960年代から1990年代までは、生産量が概して横ばいないし減少傾向を示しており、この時期の平均生産量は1,000トン前後に留まっています。特に1967年以降の減少は顕著で、1968年には499トンと著しい落ち込みを記録しました。この時期は、農業技術の未成熟、灌漑設備の不足、そして国の経済的な資源配分の制約が影響したと考えられます。また、この期間中、旱魃や洪水などの自然災害が生産量に影響を与えた可能性も高いです。
しかし、2000年代に入ると劇的な変化が見られます。2006年には3,000トンを記録し、翌年の2007年には6,000トンと倍以上の伸びを経験しました。この急増には、政府および国際機関による農業プロジェクトの開始が大きく寄与していると言えます。特に土地活用の効率化や輸出市場へのアクセスの改善が進められた結果と考えられます。また、この時期のバナナは輸出商品としても注目され、アフリカ南部において競争力を向上させる戦略が取られた可能性があります。
2013年以降はさらに企業的農業の進展と技術的イノベーションが進み、生産量は毎年増加を続けました。2019年には16,000トンに達し、2021年には17,000トン、2022年にはついに17,957トンを記録しました。しかし、2020年には生産量が14,500トンにやや落ち込んでおり、これは新型コロナウイルスの感染拡大による物流の遅延や労働力不足が影響したものと推察されます。
このバナナ生産量の急成長にも関わらず、課題は残されています。まず、気候変動による旱魃や豪雨などのリスクが依然として懸念材料です。降水パターンの不安定化や気温上昇の影響でバナナの収穫に悪影響が出る可能性があります。また、国内のインフラの脆弱性が、収穫したバナナを効率的に市場に流通させる妨げとなっている可能性もあります。さらに、バナナ農業に過度に依存することは、国全体の経済的な単一商品依存性を強める危険性があります。この点については、日本や韓国のような多品種農業へと分散化させる政策が参考になるかもしれません。
今後、エスワティニが継続的な成長を維持するためには、以下の取り組みが重要です。まず、クリーンな灌漑技術の導入や農業技術の普及を進め、気候変動の影響を緩和する必要があります。また、地域間協力を強化し、南部アフリカ地域全体の輸出市場を活性化させる取り組みが求められます。さらに、持続可能な農業への転換を進めるため、バナナ以外の収益性の高い作物の導入や、生産者の生活水準を支えるための教育プログラムも有効です。国際的な支援を受け入れる姿勢を維持しつつ、自主的な農業政策の構築が鍵となります。
以上から、エスワティニのバナナ生産量の推移は、努力と課題が交錯する中で、農業が国の経済発展に果たしている重要な役割を明確に示しています。このデータを踏まえ、多角的かつ持続可能な農業政策の実現が期待されます。