FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、エスワティニのトマト生産量は、1961年の2,458トンから2022年の5,576トンまで、長期的には増加傾向にあります。しかし、1980年代後半から1990年代にかけて停滞し、その後2000年代初頭に減少が見られた時期もあります。ここ10年間では、特に2010年以降は回復基調にあり、比較的安定した増加を見せています。他国と比較すると、エスワティニの生産量は依然として小規模で、地域特有の課題も存在しています。
エスワティニのトマト生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 5,288 |
-5.16% ↓
|
2022年 | 5,576 |
1.24% ↑
|
2021年 | 5,508 |
0.65% ↑
|
2020年 | 5,472 |
-4.81% ↓
|
2019年 | 5,748 |
8.4% ↑
|
2018年 | 5,303 |
-1.16% ↓
|
2017年 | 5,365 |
-0.95% ↓
|
2016年 | 5,417 |
-4.61% ↓
|
2015年 | 5,678 |
5.62% ↑
|
2014年 | 5,376 |
3.47% ↑
|
2013年 | 5,196 |
3.92% ↑
|
2012年 | 5,000 |
4.17% ↑
|
2011年 | 4,800 |
1.05% ↑
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2010年 | 4,750 |
9.2% ↑
|
2009年 | 4,350 |
9.88% ↑
|
2008年 | 3,959 |
8.7% ↑
|
2007年 | 3,642 |
7.12% ↑
|
2006年 | 3,400 |
-5.56% ↓
|
2005年 | 3,600 |
2.86% ↑
|
2004年 | 3,500 |
2.01% ↑
|
2003年 | 3,431 |
0.92% ↑
|
2002年 | 3,400 | - |
2001年 | 3,400 | - |
2000年 | 3,400 |
-2.86% ↓
|
1999年 | 3,500 |
-2.78% ↓
|
1998年 | 3,600 |
2.86% ↑
|
1997年 | 3,500 |
0.27% ↑
|
1996年 | 3,491 |
-1.34% ↓
|
1995年 | 3,538 |
-1.79% ↓
|
1994年 | 3,602 |
-2.53% ↓
|
1993年 | 3,696 |
-2.74% ↓
|
1992年 | 3,800 |
-5% ↓
|
1991年 | 4,000 |
14.51% ↑
|
1990年 | 3,493 |
-16.83% ↓
|
1989年 | 4,200 | - |
1988年 | 4,200 | - |
1987年 | 4,200 | - |
1986年 | 4,200 | - |
1985年 | 4,200 |
5% ↑
|
1984年 | 4,000 | - |
1983年 | 4,000 | - |
1982年 | 4,000 | - |
1981年 | 4,000 | - |
1980年 | 4,000 | - |
1979年 | 4,000 | - |
1978年 | 4,000 | - |
1977年 | 4,000 | - |
1976年 | 4,000 | - |
1975年 | 4,000 |
2.56% ↑
|
1974年 | 3,900 |
2.63% ↑
|
1973年 | 3,800 |
2.7% ↑
|
1972年 | 3,700 | - |
1971年 | 3,700 | - |
1970年 | 3,700 |
1.51% ↑
|
1969年 | 3,645 |
13.91% ↑
|
1968年 | 3,200 | - |
1967年 | 3,200 | - |
1966年 | 3,200 |
10.34% ↑
|
1965年 | 2,900 |
7.41% ↑
|
1964年 | 2,700 |
3.85% ↑
|
1963年 | 2,600 |
4% ↑
|
1962年 | 2,500 |
1.71% ↑
|
1961年 | 2,458 | - |
1961年から2022年のエスワティニのトマト生産量データによれば、トマト生産量は着実な増加を遂げてきました。初期段階の1960年代から1970年代半ばにかけて、農業技術の進歩や農地拡大による生産性向上が寄与したと考えられます。特に1960年代末から1970年代初頭の数年間では、生産量が一定額で安定しつつもゆるやかな成長を実現しました。その後、1980年代半ばに生産量は4,200トンとピークに達しましたが、1990年代にはわずかながら減少が始まります。主要な原因としては、気候変動の影響や灌漑設備の不足、または地域の政治的不安定さが考えられます。
さらに、2000年代初頭の停滞や減少期には、干ばつなどの異常気象が重要な要因となった可能性があります。同時に、エスワティニ国内の農業インフラの老朽化や資金不足、農作物市場の競争激化が生産効率をさらに阻害しました。しかしながら、2008年以降のデータでは、徐々に前述の問題に対応する施策が成果を上げたことがうかがえます。特に2010年代に入り、灌漑システムの刷新や農業技術の適用が進み、2019年には5,748トンという過去最高を記録しました。
また、エスワティニのトマト生産量が増加している一方で、日本をはじめとする先進国や中国、インドと比較すると依然として規模が小さいことが明らかです。たとえば、中国ではトマト生産量が何千万トンという桁違いの数字を示しており、世界的にも圧倒的なシェアを占めています。同じアフリカでも、エジプトやナイジェリアといった国々が非常に高い生産量を誇り、エスワティニとの差は明確です。このような背景の中で、生産性向上においてエスワティニが直面している課題がより浮き彫りになっています。
エスワティニには特有の地政学的リスクも存在します。小国であることから、近隣諸国との経済的連携や農業製品の輸出ルートの確保が重要でありながらも、地域紛争や物流の弱さがしばしば障壁となっています。さらに、気候変動によって農業全体が脅かされる中、自然災害への備えも喫緊の課題となっています。
これらの課題に対する具体的な提案として、まずは地域経済共同体との協力強化が挙げられます。たとえば、南部アフリカ共同体(SADC)と連携し、地域輸送ネットワークの整備や市場の多様化を図ることが有効でしょう。また、気候変動の影響を軽減するために、より耐候性のあるトマト品種の導入や、効率的な灌漑技術を導入するプロジェクトが必要です。加えて、農家への教育や資金援助の拡充を通じて、生産性向上をサポートする取り組みは長期的な安定に寄与します。
結論として、エスワティニのトマト生産は長い停滞期を経て増加基調に乗っており、技術革新やインフラ整備、地域協力がさらなる成長の鍵となります。この成長を持続可能にしながら、国際市場における競争力を高めるため、気候変動や地域特有の課題への対応を優先することが重要です。国や農業関係者だけでなく、国際機関や民間企業も協働して支援できる体制を整えることが求められるでしょう。