国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、エスワティニ(旧スワジランド)のパイナップル生産量は長年にわたり変動を続けています。1961年から2023年にかけて、生産量は数千トンから過去最大の64,000トン(1989年)に達した時期もある一方、急激な減少を示した年もありました。特に2023年には、生産量が21,204トンまで落ち込んでおり、近年の大幅な減少傾向が目立ちます。このデータは、エスワティニのパイナップル産業がいかに変動しやすいものであるかを示しており、その背景や今後の対策が重要なテーマとなります。
エスワティニのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 21,204 |
-34.53% ↓
|
2022年 | 32,385 |
-7.47% ↓
|
2021年 | 35,000 |
-4.3% ↓
|
2020年 | 36,574 |
-3.75% ↓
|
2019年 | 38,000 |
5.56% ↑
|
2018年 | 36,000 |
-2.7% ↓
|
2017年 | 37,000 |
5.71% ↑
|
2016年 | 35,000 |
-0.42% ↓
|
2015年 | 35,147 |
-10.36% ↓
|
2014年 | 39,211 |
11.2% ↑
|
2013年 | 35,263 |
10.2% ↑
|
2012年 | 32,000 |
10.11% ↑
|
2011年 | 29,063 |
9.67% ↑
|
2010年 | 26,500 |
6% ↑
|
2009年 | 25,000 |
4.17% ↑
|
2008年 | 24,000 |
20% ↑
|
2007年 | 20,000 |
-4.76% ↓
|
2006年 | 21,000 |
5% ↑
|
2005年 | 20,000 |
-43.66% ↓
|
2004年 | 35,500 |
-4.14% ↓
|
2003年 | 37,033 |
15.73% ↑
|
2002年 | 32,000 |
60% ↑
|
2001年 | 20,000 |
1.63% ↑
|
2000年 | 19,680 |
96.8% ↑
|
1999年 | 10,000 |
11.11% ↑
|
1998年 | 9,000 |
6.65% ↑
|
1997年 | 8,439 |
7.53% ↑
|
1996年 | 7,848 |
-26.12% ↓
|
1995年 | 10,623 |
-47.81% ↓
|
1994年 | 20,355 |
-49.11% ↓
|
1993年 | 40,000 |
-33.33% ↓
|
1992年 | 60,000 |
1.69% ↑
|
1991年 | 59,000 |
3.51% ↑
|
1990年 | 57,000 |
-10.94% ↓
|
1989年 | 64,000 |
6.67% ↑
|
1988年 | 60,000 |
9.09% ↑
|
1987年 | 55,000 |
-3.51% ↓
|
1986年 | 57,000 |
7.55% ↑
|
1985年 | 53,000 |
21.04% ↑
|
1984年 | 43,788 |
17.31% ↑
|
1983年 | 37,327 |
6.19% ↑
|
1982年 | 35,150 |
19.83% ↑
|
1981年 | 29,334 |
6.46% ↑
|
1980年 | 27,553 |
-7.75% ↓
|
1979年 | 29,869 |
27.89% ↑
|
1978年 | 23,355 |
12.06% ↑
|
1977年 | 20,842 |
16.2% ↑
|
1976年 | 17,937 |
3.12% ↑
|
1975年 | 17,394 |
-17.93% ↓
|
1974年 | 21,193 |
52.98% ↑
|
1973年 | 13,853 |
74.96% ↑
|
1972年 | 7,918 |
-8.06% ↓
|
1971年 | 8,612 |
-12.28% ↓
|
1970年 | 9,818 |
-9.81% ↓
|
1969年 | 10,886 |
4.34% ↑
|
1968年 | 10,433 |
-22.29% ↓
|
1967年 | 13,426 |
75.14% ↑
|
1966年 | 7,666 |
36.07% ↑
|
1965年 | 5,634 |
40.85% ↑
|
1964年 | 4,000 |
33.33% ↑
|
1963年 | 3,000 | - |
1962年 | 3,000 |
50% ↑
|
1961年 | 2,000 | - |
エスワティニのパイナップル生産量についてのデータは、この地域の農業がいかに外的環境に左右されやすいかを物語っています。1961年に2,000トンという modest な生産量でスタートしたこの地域のパイナップル産業は、その後数十年間で急速に成長を遂げました。特に1980年代には毎年50,000トンを超える生産を記録し、1989年には64,000トンを達成しました。しかしその後、1990年代前半に入ると生産量は急速に低下し、1995年にはわずか10,623トンにまで減少しました。この減少の背景には、エスワティニを取り巻く環境的、経済的な問題や天候不順などが考えられます。また、1990年代はパイナップルの需要や市場動向の変化も影響を与えた可能性が高いです。
2000年代に入り、生産量は部分的に回復しましたが、それでも全盛期の数値には届かず、安定した供給とは言い難い状態が続いています。2020年代に至っては再び下落傾向が顕著になり、2023年には21,204トンと、過去10年間で最低の水準を記録しました。この減少は、気候変動の影響による天候不順や水不足、またCOVID-19パンデミックの影響による国際的な物流の混乱、さらには肥料や農業資材の価格高騰が主な要因として考えられます。
エスワティニの地政学的背景を考慮すると、同国は南部アフリカの内陸国で、周辺国との協力やインフラの整備が不十分な状況にあることが課題の一つと言えます。加えて、気候変動下では雨の降り方が不規則になり、農業にとって予測しづらい状況が続いています。このような変化は特に雨水灌漑に大きく依存する農業国に深刻な影響を与えます。エスワティニも例外ではなく、持続可能で効率的な灌漑管理が求められています。
また、国際市場での競争力強化も大きな課題です。エスワティニに比べて、生産規模や効率性が高いアジアや南米の国々、例えばフィリピンやコスタリカといった主要パイナップル輸出国が国際市場を支配しています。これに対応するためには、エスワティニ独自の高品質なブランド戦略や加工食品産業の発展が不可欠です。また、日本、中国、韓国などのアジア諸国はアフリカからの果物輸入の潜在市場として有望であり、その需要を掘り起こすことも検討の余地があります。
今後の対策として、エスワティニ政府や地域の農業団体が果たすべき役割は多岐にわたります。例えば、灌漑インフラの整備や気候変動への適応策としての気象データの活用、高効率な栽培技術の普及が必要です。また、国際的な援助機関やパートナー国との連携を強化し、技術的支援や資金援助を受けることも生産の安定化に寄与するでしょう。さらに、国内の小規模農家の支援を強化し、市場へのアクセスを拡大させる政策を実施することが求められます。
エスワティニのパイナップル産業振興のためには、地域協力や国際的な輸出戦略の強化が重要です。例えば、南アフリカ開発共同体(SADC)との連携を深めることで、技術移転や共同プロジェクトを進めることができます。さらに、気候変動に関する国際会議での発言力を高め、エスワティニ特有の課題を周知し支援を求めることも一案です。
結論として、エスワティニのパイナップル生産量が安定的に増加するためには、灌漑管理や気候変動対策の強化、国際市場でのブランド戦略の導入が不可欠です。これらの課題に対応することで、地域農業の持続可能性を高め、長期的な経済成長に寄与することが期待されます。