Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、エスワティニにおける牛の飼養数は、1961年から2022年にかけて大きな増減を繰り返してきました。初期の1960年代では約53万頭から始まり、1970年代から1980年代にかけて増加基調が見られ、最盛期には約75万頭に到達しました。一方、その後は減少傾向が顕著になり、2000年代以降は60万頭前後で推移しています。2022年時点での飼養数は約60.8万頭とされています。
エスワティニの牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 608,371 |
2021年 | 607,976 |
2020年 | 607,580 |
2019年 | 602,658 |
2018年 | 598,958 |
2017年 | 602,248 |
2016年 | 605,259 |
2015年 | 611,874 |
2014年 | 618,000 |
2013年 | 620,032 |
2012年 | 630,000 |
2011年 | 625,000 |
2010年 | 620,000 |
2009年 | 585,000 |
2008年 | 585,000 |
2007年 | 585,000 |
2006年 | 580,000 |
2005年 | 615,000 |
2004年 | 610,000 |
2003年 | 600,252 |
2002年 | 522,260 |
2001年 | 505,966 |
2000年 | 588,288 |
1999年 | 613,932 |
1998年 | 623,446 |
1997年 | 658,453 |
1996年 | 656,484 |
1995年 | 641,979 |
1994年 | 626,356 |
1993年 | 607,513 |
1992年 | 752,775 |
1991年 | 740,170 |
1990年 | 715,941 |
1989年 | 679,188 |
1988年 | 639,943 |
1987年 | 640,901 |
1986年 | 653,222 |
1985年 | 648,332 |
1984年 | 613,529 |
1983年 | 642,447 |
1982年 | 636,036 |
1981年 | 655,692 |
1980年 | 657,608 |
1979年 | 660,505 |
1978年 | 644,156 |
1977年 | 634,090 |
1976年 | 634,241 |
1975年 | 621,721 |
1974年 | 607,366 |
1973年 | 602,414 |
1972年 | 589,220 |
1971年 | 571,785 |
1970年 | 568,369 |
1969年 | 538,230 |
1968年 | 514,964 |
1967年 | 504,423 |
1966年 | 491,028 |
1965年 | 510,085 |
1964年 | 544,883 |
1963年 | 531,540 |
1962年 | 543,393 |
1961年 | 535,376 |
エスワティニにおける牛の飼養数の推移は、畜産業が国内経済と食料供給において占める独自の役割を浮き彫りにしています。このデータは、エスワティニの牧畜の全体像や課題、またその背景となる地政学的要素を考える上で重要です。
1961年から1975年にかけて牛の飼養数は徐々に増加し、労働力としての利用や食料源としての価値に支えられた発展が見られました。特に1972年以降は急速に上昇し、1977年には60万頭を超え、以降1980年代にかけて高水準を維持しました。しかし、1990年代初頭には減少に転じ、記録的な落ち込みを見せた1993年には約60.7万頭と、以前のピークと比べて大きく下がりました。この減少は、エスワティニにおける干ばつなどの自然災害の影響や、土地利用の変化、経済の不安定性が一因であると推察されます。
2000年代に入っても、牛の飼養数の減少傾向は続き、特に2001年には50万頭程度にまで落ち込みました。この時期、エスワティニでは食料安全保障の脆弱性が議論される一方で、牧畜業の維持に苦戦する状況が表面化しました。資金不足やインフラの未整備、さらに土地の肥沃度低下といった課題が、国内の畜産業に重大な影響を与えたと考えられます。ただし、2003年からはやや回復が見られ、以降の年間飼養数は60万頭近辺で安定的に推移しています。
エスワティニの畜産業に見られるこうした動向は、地政学的リスクや環境要因とも関連しています。同国はアフリカ南部に位置し、しばしば繰り返される干ばつや局地的気候変動の影響を強く受けています。そのため、畜産業は降水量の変動に大きく依存し、気候変動への適応が今後の重要な課題となります。また、地域的な政治不安定や農業支援政策の遅れが、牧畜業の成長を阻害している可能性も否定できません。
未来に向けた課題と対策を検討する際には、持続可能な農業・畜産への転換が欠かせません。具体的には、干ばつに強い飼料作物の導入や、水資源の管理改善、小規模農家への補助政策などが考えられます。また、牧畜業だけに偏らず、関連分野(乳製品加工や輸出市場の開拓)を発展させることで、畜産業の経済的価値を高める方向性も求められるでしょう。地域間での協力や国際機関からの支援強化も、環境への適応と経済の安定化に寄与すると考えられます。
結論として、エスワティニの牛飼養数の歴史的な推移を踏まえた政策立案は、同国の農村部の生活向上や食料安全保障を達成する上で不可欠です。国際的な協調のもとで、地元の気候条件や社会経済的背景に応じた戦略的な牧畜業の強化が図られるべきです。これに加え、気候変動などの複合的な影響を軽減するための地域的枠組みづくりも急務と言えます。