国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年の最新データによると、エスワティニの米生産量は過去数十年にわたり劇的な変動を経験した後、近年は安定していることがわかります。特に1960年代から1980年代にかけては、生産量が年ごとに振幅を繰り返し、その後1990年代以降大きく減少。ただし、2000年以降は徐々に回復し、2018年以降は安定的に1,000トンの水準を維持する傾向があります。
エスワティニの米生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 1,000 |
2021年 | 1,000 |
2020年 | 1,000 |
2019年 | 1,000 |
2018年 | 1,000 |
2017年 | 944 |
2016年 | 895 |
2015年 | 903 |
2014年 | 862 |
2013年 | 823 |
2012年 | 781 |
2011年 | 736 |
2010年 | 689 |
2009年 | 643 |
2008年 | 648 |
2007年 | 556 |
2006年 | 504 |
2005年 | 451 |
2004年 | 397 |
2003年 | 344 |
2002年 | 292 |
2001年 | 241 |
2000年 | 170 |
1999年 | 100 |
1998年 | 105 |
1997年 | 411 |
1996年 | 265 |
1995年 | 1,000 |
1994年 | 916 |
1993年 | 1,000 |
1992年 | 1,839 |
1991年 | 3,000 |
1990年 | 3,312 |
1989年 | 3,000 |
1988年 | 3,000 |
1987年 | 3,000 |
1986年 | 3,000 |
1985年 | 3,000 |
1984年 | 2,574 |
1983年 | 1,593 |
1982年 | 1,614 |
1981年 | 3,000 |
1980年 | 5,000 |
1979年 | 5,000 |
1978年 | 5,000 |
1977年 | 5,000 |
1976年 | 5,073 |
1975年 | 4,418 |
1974年 | 3,614 |
1973年 | 4,537 |
1972年 | 5,639 |
1971年 | 7,111 |
1970年 | 7,348 |
1969年 | 7,983 |
1968年 | 5,625 |
1967年 | 6,359 |
1966年 | 6,568 |
1965年 | 5,942 |
1964年 | 6,314 |
1963年 | 6,709 |
1962年 | 5,767 |
1961年 | 4,173 |
エスワティニの米生産量は、最初の観測期間である1960年代にはおおむね5,000トンから7,000トンの間で推移していました。その後、1970年代半ば以降、生産量は減少傾向を見せ、1982年には大幅に落ち込み1,614トンを記録。その後も安定性を欠きながら低生産量が続き、1998年には記録的な最低値の105トンに達しました。しかし2000年以降、地道な回復が見られ、2018年には1,000トンの生産量に到達し、それ以降はこの水準を維持しています。
このデータから、エスワティニの米生産は少なくとも二つの主要な特徴を見出すことができます。一つは、長期的な生産レベルの低さ、もう一つは近年の安定化です。これらの背後には、複数の要因が影響していると考えられます。エスワティニはその地理的特性から気候の変動に敏感な国であり、特に干ばつの影響が顕著です。また、耕作可能地の不足や生産技術の遅れ、農業インフラの未整備などの課題も大きく影響している可能性があります。例えば、1970年代半ばから進行した生産量の減少は、多くのアフリカ諸国で共通して観察されている干ばつや土壌劣化が一因とされます。また、1990年代の最低レベルの生産量は、国内農業政策の不備やインフラの課題が影響している可能性があります。
一方で、2000年以降の回復傾向は注目に値します。国際機関や政府による農業支援、種子改良、灌漑技術の強化が影響したものと考えられます。2018年以降、1,000トンという安定した水準に達しているのは、農家の育成や米栽培の技術革新、農業資材の供給体制の改善などの成果が実を結んでいる可能性があります。
しかし、エスワティニの人口増加や食料需要を考慮すると、1,000トンの生産量では国内の需要を満たすには不十分です。このことは、同国が他国からの輸入に依存している要因ともなっています。例えば、日本では米生産が年間数百万トンに達し、GDPにおける農業部門の割合が小さいながらも自給率は高い状況にあります。一方、中国やインドでは米が主要穀物として生産量・消費量ともに世界的に突出しており、国内需要を賄うだけでなく輸出も行っています。エスワティニがこれら主要米生産国と競争することは現実的ではないものの、地域間での生産性向上を図るための少なくとも国内の需要を満たせる計画が求められます。
エスワティニが直面する課題の一つは、干ばつや気候変動など地政学的リスクへの対応です。気象パターンの変動は農業生産に打撃を与える可能性が高く、このリスクを軽減するには灌漑施設の強化や土壌保全の施策が不可欠です。また、国際協力の枠組みを活用し、技術や資金の提供を得て農業を営む環境を改善することも有効でしょう。
今後、主要な提言としては、以下のような具体策が挙げられます。まず第一に、灌漑や農地整備といったインフラ投資を進め、気候リスクに対応できる農業体制を整備することです。また、気候に強い品種の開発や導入を奨励し、農業技術の普及を推進することが重要です。加えて、地域共同体の協力を促進し、効果的な農業協力モデルを構築することも取り組むべき課題です。特に、近隣諸国との農業技術の共有や、貿易枠組みの拡大は、エスワティニの米生産・供給体制の安定化につながると考えられます。
エスワティニの米生産量の安定は国の食料安全保障に直結しており、適切な政策と国際支援を通じてさらなる成長が期待されます。同国がこれらの課題に取り組むことで、地域全体の食料安定にも寄与する可能性があります。したがって、今後は国内資源の最大限の活用を図りつつ、気候変動や地政学的リスクに配慮した持続可能な農業政策が求められます。