国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、エスワティニの小麦生産量は1970年から2022年にかけて著しい変動を示しています。特に1970年代から1980年代にかけて一時的な増加と長期間の安定を見せた後、1990年代には再び低下しました。しかし、2000年代後半以降は生産量が回復し、2022年には694トンを記録しました。この傾向は、高い生産性を発揮する他国と比較しても規模は小さいものの、着実な改善が見られることを示しています。
エスワティニの小麦生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 705 |
1.64% ↑
|
2022年 | 694 |
-0.28% ↓
|
2021年 | 696 |
0.22% ↑
|
2020年 | 694 |
0.4% ↑
|
2019年 | 691 |
-1.44% ↓
|
2018年 | 702 |
1.74% ↑
|
2017年 | 690 |
0.94% ↑
|
2016年 | 683 |
-0.52% ↓
|
2015年 | 687 |
-3.32% ↓
|
2014年 | 710 |
-1.35% ↓
|
2013年 | 720 |
2.86% ↑
|
2012年 | 700 |
25.81% ↑
|
2011年 | 556 |
23.64% ↑
|
2010年 | 450 |
7.14% ↑
|
2009年 | 420 |
8.02% ↑
|
2008年 | 389 |
19.63% ↑
|
2007年 | 325 |
-2.97% ↓
|
2006年 | 335 |
5.13% ↑
|
2005年 | 319 |
-4.76% ↓
|
2004年 | 335 |
1.08% ↑
|
2003年 | 331 |
4.02% ↑
|
2002年 | 318 |
0.63% ↑
|
2001年 | 316 |
5.39% ↑
|
2000年 | 300 | - |
1999年 | 300 |
-14.29% ↓
|
1998年 | 350 |
3.82% ↑
|
1997年 | 337 |
12.37% ↑
|
1996年 | 300 |
-33.33% ↓
|
1995年 | 450 |
-10% ↓
|
1994年 | 500 |
28.06% ↑
|
1993年 | 390 |
30.15% ↑
|
1992年 | 300 |
-25% ↓
|
1991年 | 400 |
-72.13% ↓
|
1990年 | 1,435 |
10.38% ↑
|
1989年 | 1,300 | - |
1988年 | 1,300 | - |
1987年 | 1,300 | - |
1986年 | 1,300 | - |
1985年 | 1,300 | - |
1984年 | 1,300 | - |
1983年 | 1,300 | - |
1982年 | 1,300 | - |
1981年 | 1,300 | - |
1980年 | 1,300 | - |
1979年 | 1,300 | - |
1978年 | 1,300 | - |
1977年 | 1,300 |
570.1% ↑
|
1976年 | 194 |
-56.11% ↓
|
1975年 | 442 |
-61.02% ↓
|
1974年 | 1,134 |
-20.75% ↓
|
1973年 | 1,431 |
24.76% ↑
|
1972年 | 1,147 |
45.37% ↑
|
1971年 | 789 |
644.34% ↑
|
1970年 | 106 | - |
エスワティニの小麦生産量推移にはいくつかの特徴的な時期があります。1970年から1989年にかけて、生産量は大きく上下しましたが、1980年代には1,300トンで一定の安定を見せました。この時期は開発戦略や農業政策の影響が生産量を維持する要因となった可能性があります。しかし、1990年代に入ると生産量が低下し、300~500トン程度に留まる状態が続きました。この要因として、農地の競争的利用や気候変動の影響、また食糧政策の転換が考えられます。
2000年代以降、小麦生産量はわずかながらも回復傾向を示しました。特に2010年以降、450トンから700トン台へと徐々に増加しており、2022年には694トンに到達しました。この進展は、農業技術の改善や干ばつ耐性の高い品種の導入、または農業支援政策の強化による影響を受けた可能性があります。また、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の拡大により、輸入に依存するリスクを抑制するため、国内の農業が再評価されたことも一因と考えられます。
世界的な視点で見ると、エスワティニの小麦生産量は他国と比較して依然として小規模です。例えば、同じアフリカ大陸に位置するエジプトや南アフリカ共和国においては、小麦の年間生産量が数百万トンに達する一方で、エスワティニの年間生産量はそれらと比べてごくわずかしかありません。こうした状況を考慮すると、エスワティニは食糧安全保障の観点から、国内生産量の増加だけでなく、輸入とのバランスを取ることが必要です。
エスワティニにおける課題としては、気候変動への対応が挙げられます。同国は降雨量の変動が大きい地域に位置しているため、干ばつや洪水などが頻繁に発生します。このような気候リスクは、小麦のような気候に敏感な作物の生産に直接的な影響を与えます。将来的に、小麦生産量をさらに向上させるためには、気候適応型農業技術の導入を進め、灌漑設備の拡充や土壌改良に注力する必要があります。また、農業従事者に対する技術研修や支援プログラムの充実も、重要な施策となるでしょう。
さらに、地域的な観点から言えば、エスワティニは隣国との協力を強化することが求められます。特に南アフリカ共和国、ボツワナ、モザンビークといった国々と農業分野における技術や資源を共有する仕組みを構築することで、より安定的な生産体制を作ることが可能になります。
総括すると、エスワティニの小麦生産量は長期間にわたり多様な変動を経験してきましたが、近年の回復傾向は評価に値します。ただし、将来に向けては気候リスクや国際貿易の依存度を考慮した政策立案が不可欠です。国際機関や隣国との協調を強化しつつ、自国農業の強靭化を図ることで、同国はより持続可能な食糧基盤を築くことが期待されます。