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エスワティニの鶏飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、エスワティニの鶏飼養数は1960年代には300万羽以下で推移していましたが、1990年代後半から急増し、2000年代半ばには3,000万羽を超える水準に達しています。その後、2010年代からは3,500万羽前後で安定的に推移しています。2022年には3,640万羽となり、直近数年間ではほとんど変動が見られません。一方で、1980年代や1990年代初頭には減少の局面も確認されており、全体的な増減の背景には、経済環境や農業政策、気候条件の影響があると考えられます。

年度 飼養数(羽)
2022年 3,640.00
2021年 3,639.00
2020年 3,639.00
2019年 3,661.00
2018年 3,559.00
2017年 3,596.00
2016年 3,636.00
2015年 3,675.00
2014年 3,700.00
2013年 3,700.00
2012年 3,650.00
2011年 3,600.00
2010年 3,500.00
2009年 3,200.00
2008年 3,200.00
2007年 3,200.00
2006年 3,200.00
2005年 3,600.00
2004年 3,500.00
2003年 3,500.00
2002年 3,400.00
2001年 3,200.00
2000年 3,000.00
1999年 2,100.00
1998年 1,800.00
1997年 990.00
1996年 980.00
1995年 975.00
1994年 900.00
1993年 946.00
1992年 992.00
1991年 1,086.00
1990年 1,113.00
1989年 1,201.00
1988年 869.00
1987年 844.00
1986年 834.00
1985年 665.00
1984年 704.00
1983年 683.00
1982年 906.00
1981年 721.00
1980年 567.00
1979年 590.00
1978年 583.00
1977年 514.00
1976年 522.00
1975年 485.00
1974年 498.00
1973年 443.00
1972年 379.00
1971年 399.00
1970年 359.00
1969年 342.00
1968年 350.00
1967年 344.00
1966年 345.00
1965年 299.00
1964年 323.00
1963年 312.00
1962年 334.00
1961年 304.00

エスワティニの鶏飼養数は、1960年代から2020年代にかけて大きな変動を見せています。当初、1960年代には概ね300万羽台で推移していたものの、1970年代から増加傾向が見られるようになりました。その要因として、小規模農業の発展や家畜飼育の導入時期であったことが挙げられます。とりわけ1970年代後半から家庭用および商業用の養鶏業が発展し、1978年から1982年にかけて急速に増加しました。

1980年代から1990年代初頭にかけて、鶏飼養数は不安定な動きを見せ、特に1983年から1989年にかけて大幅な増加(1989年の1,201万羽)を記録した一方で、その後再び減少し、モザンビーク内戦などを含む地域的な不安定性が影響した可能性も示唆されます。1998年以降にはさらなる飛躍が見られ、2000年代初頭には飼養数が倍増し、3,000万羽超の新しい水準に突入しました。この急増には、エスワティニにおける農業開発援助プロジェクトや、都市部での鶏肉消費需要の拡大が寄与したと考えられます。

2004年以降、エスワティニの鶏飼養数は3,500万羽前後で比較的安定した状態が続いています。しかし、2016年以降は一部で微減傾向も見られ、2022年の3,640万羽はわずかながらピークの2013年の3,700万羽に及びません。この背景には、エスワティニ国内の経済成長の鈍化、飼料価格の上昇、天候不順による農業生産の減少、さらに新型コロナウイルス感染症が引き起こした物流の課題などが影響している可能性があります。

また、エスワティニ周辺国との比較をすると、鶏飼養数の水準は南アフリカ共和国やモザンビークに比べて相対的に少ないものの、地域内の需要と生産規模をバランスよく維持している点が特徴的です。一方で、近年の技術革新が進むアメリカや欧州諸国と比較すると、養鶏に関する生産効率や規模の面で遅れを取っていると考えられます。

将来的な課題としては、まず生産性の向上が挙げられます。特に鶏飼養を小規模農家だけでなく、大規模な商業施設やバイオセキュリティを強化した施設に移行させることで、効率的かつ安定した飼養が促進できるでしょう。また、飼料の輸入依存を削減するためにトウモロコシや大豆など国内飼料生産を増やす政策が必要です。さらに、輸出拡大のための品質基準や国際規格への対応も重要です。

地域的な地政学的リスクについても考慮が必要です。エスワティニが存在する南部アフリカでは、干ばつや洪水の頻発が農業全体に影響を与えています。気候変動への適応策として、天候に強い飼料作物の導入や災害回復力を高めるためのインフラ整備が効果的と考えられます。また、地域間協力の枠組みを活用した家禽関連製品の流通促進や、ペスト病対策としての共同防疫体制強化も望まれます。

結論として、エスワティニの鶏飼養数は大きな増加を経て安定成長期に入っていますが、ここから持続可能な成長を目指すには、効率性向上と地域協力の強化が急務です。国際機関や援助団体がこれを支援し、地域の需要と生産基地を繋ぐ架け橋を作る役割も期待されます。