Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、エスワティニの牛乳生産量は1961年に24,000トンでスタートし、一時的な変動を経て増加傾向を見せました。しかし、1990年以降は伸びが鈍化し始め、特に1995年に36,300トンまで減少しました。その後ある程度の回復を見せつつも、2000年代後半から2022年に至るまで大きな変化が見られず、約39,700トンでほぼ横ばいとなっています。全体として、エスワティニの牛乳生産量は大きな成長期を経た後、現在はほぼ安定した状態にあるといえます。
---
エスワティニの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 39,719 |
2021年 | 39,674 |
2020年 | 39,630 |
2019年 | 39,381 |
2018年 | 39,187 |
2017年 | 39,284 |
2016年 | 39,369 |
2015年 | 39,651 |
2014年 | 39,909 |
2013年 | 39,979 |
2012年 | 40,410 |
2011年 | 40,159 |
2010年 | 39,909 |
2009年 | 42,000 |
2008年 | 41,337 |
2007年 | 39,000 |
2006年 | 37,500 |
2005年 | 38,700 |
2004年 | 39,317 |
2003年 | 39,500 |
2002年 | 39,764 |
2001年 | 38,000 |
2000年 | 37,500 |
1999年 | 34,000 |
1998年 | 37,600 |
1997年 | 37,100 |
1996年 | 36,700 |
1995年 | 36,300 |
1994年 | 42,400 |
1993年 | 42,000 |
1992年 | 45,000 |
1991年 | 44,000 |
1990年 | 42,000 |
1989年 | 41,000 |
1988年 | 40,000 |
1987年 | 40,000 |
1986年 | 40,000 |
1985年 | 39,000 |
1984年 | 37,500 |
1983年 | 37,500 |
1982年 | 37,000 |
1981年 | 36,500 |
1980年 | 36,500 |
1979年 | 36,000 |
1978年 | 35,000 |
1977年 | 34,000 |
1976年 | 33,000 |
1975年 | 32,000 |
1974年 | 31,000 |
1973年 | 30,000 |
1972年 | 29,000 |
1971年 | 27,000 |
1970年 | 26,000 |
1969年 | 24,000 |
1968年 | 23,000 |
1967年 | 23,000 |
1966年 | 22,000 |
1965年 | 23,000 |
1964年 | 25,000 |
1963年 | 24,000 |
1962年 | 25,000 |
1961年 | 24,000 |
エスワティニの牛乳生産量に関するデータは、同国の農業および酪農業の発展だけでなく、経済全体や国民生活の質の指標としても重要な要素となります。1961年のデータでは24,000トンと比較的控えめな生産量からスタートしましたが、その後1970年代から1980年代まではほぼ一貫して増加し、1989年には41,000トンを記録するに至りました。これは、当時の農業政策や技術開発の進展、家畜飼育の効率化が寄与した可能性があります。
しかし、1993年に45,000トンの最高値を記録した後、特に1995年には36,300トンと急激に減少します。この減少については、気候変動や農業用水の不足、また土地利用の変化が影響したと推定されます。この時期はエスワティニ全体で経済的な困難が見られたため、酪農業に割ける資源が限られたことも要因の一つと考えられるでしょう。
その後、2000年以降は39,500トン前後で比較的安定した水準に達しました。しかし、ここから明確な成長が見られない点には注意が必要です。具体的には、2022年の生産量は39,719トンで、過去20年近くほぼ横ばいな状態が続いています。一部の年でわずかな増減が観測されてはいるものの、全体的に国内需要の増加や輸出競争力強化を支えるほどの成長には至っていません。
特にこのような生産量の停滞は、複数の要因に起因している可能性があります。第一に、エスワティニにおける農業用インフラや技術投資が他国に比べ遅れていることが挙げられます。たとえば、日本や韓国といった技術力の高い国々においては、畜産業の効率化や自動化の導入が進んでいる一方で、エスワティニではそのような取り組みが限定的である可能性があります。また、土地管理や資源の利用効率も課題となっているかもしれません。さらに、地政学的リスクや気候変動の影響は、特にエスワティニのような小国において食糧生産全体に直ちに影響を与える要因です。
将来的には、いくつかの具体的な対策が考えられます。第一に、国内外からの投資を募り、酪農関連のインフラや技術の整備を進めることが重要です。第二に、気候変動の影響を軽減するための適応策を講じる必要があります。例えば、耐乾燥性の高い牧草の品種導入や地下水利用の効率化といった取り組みが有効と考えられます。また、教育や技能訓練を通じて酪農業に携わる人々の知識を向上させることも、生産性向上につながるでしょう。
さらに、高付加価値製品の開発や輸出強化も進むべき方向性の一つです。乳製品の輸出において、エスワティニは他のアフリカ諸国との競争だけでなく、ヨーロッパやアジアの大市場における競争力を高める必要があります。そのためには品質基準の向上や物流インフラの拡充が欠かせません。
最後に、新型コロナウイルスの影響についても考慮すべきです。パンデミックによる国際貿易の停滞や国内経済への打撃は、エスワティニの酪農業にも間接的に影響を及ぼした可能性があります。今後は地域内外の協力を通じ、危機管理や長期的な持続可能性に焦点を当てた政策の立案が急務となるでしょう。
総じて、エスワティニの牛乳生産業は過去の成長を経た後、現在はほぼ横ばい状態にありますが、外部環境の変化や内的課題によって将来の展望が左右される段階にあります。政府や民間セクター、さらには国際機関が連携して課題に取り組めば、持続可能な農業発展が可能であると考えられます。