国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アンティグア・バーブーダの牛乳生産量は1961年には2,300トンから始まり、その後1978年から1985年にかけて急激に増加し、6,200トンを記録しました。しかし、1990年代以降は減少傾向に入り、近年ではさらなる低迷が見られます。2023年の牛乳生産量は2,251トンと、過去60年以上の統計で最低水準に近い値となっています。
アンティグア・バーブーダの牛乳生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 2,251 |
14.27% ↑
|
2022年 | 1,970 |
-2.4% ↓
|
2021年 | 2,019 |
-2.32% ↓
|
2020年 | 2,066 |
-3.43% ↓
|
2019年 | 2,140 |
-15.36% ↓
|
2018年 | 2,528 |
-18.44% ↓
|
2017年 | 3,100 |
1.64% ↑
|
2016年 | 3,050 |
5.17% ↑
|
2015年 | 2,900 |
-6.45% ↓
|
2014年 | 3,100 |
1.64% ↑
|
2013年 | 3,050 |
-1.61% ↓
|
2012年 | 3,100 | - |
2011年 | 3,100 |
7.03% ↑
|
2010年 | 2,896 |
-47.81% ↓
|
2009年 | 5,550 |
-1.6% ↓
|
2008年 | 5,640 |
4.44% ↑
|
2007年 | 5,400 |
-11.52% ↓
|
2006年 | 6,103 |
0.06% ↑
|
2005年 | 6,099 |
0.06% ↑
|
2004年 | 6,095 |
1.74% ↑
|
2003年 | 5,991 |
11.99% ↑
|
2002年 | 5,350 |
-8.55% ↓
|
2001年 | 5,850 |
2.71% ↑
|
2000年 | 5,696 |
-1.95% ↓
|
1999年 | 5,809 |
9.61% ↑
|
1998年 | 5,300 |
-1.85% ↓
|
1997年 | 5,400 |
-3.57% ↓
|
1996年 | 5,600 |
-6.67% ↓
|
1995年 | 6,000 |
-9.3% ↓
|
1994年 | 6,615 |
0.06% ↑
|
1993年 | 6,611 |
12.05% ↑
|
1992年 | 5,900 |
-10.65% ↓
|
1991年 | 6,603 |
19.23% ↑
|
1990年 | 5,538 |
-4.52% ↓
|
1989年 | 5,800 |
-6.45% ↓
|
1988年 | 6,200 | - |
1987年 | 6,200 | - |
1986年 | 6,200 | - |
1985年 | 6,200 |
6.9% ↑
|
1984年 | 5,800 | - |
1983年 | 5,800 | - |
1982年 | 5,800 |
5.45% ↑
|
1981年 | 5,500 |
-8.33% ↓
|
1980年 | 6,000 |
20% ↑
|
1979年 | 5,000 |
16.28% ↑
|
1978年 | 4,300 |
26.47% ↑
|
1977年 | 3,400 |
3.03% ↑
|
1976年 | 3,300 | - |
1975年 | 3,300 |
3.13% ↑
|
1974年 | 3,200 |
-3.03% ↓
|
1973年 | 3,300 | - |
1972年 | 3,300 | - |
1971年 | 3,300 |
6.45% ↑
|
1970年 | 3,100 | - |
1969年 | 3,100 |
3.33% ↑
|
1968年 | 3,000 |
7.14% ↑
|
1967年 | 2,800 |
3.7% ↑
|
1966年 | 2,700 |
-3.57% ↓
|
1965年 | 2,800 | - |
1964年 | 2,800 |
16.67% ↑
|
1963年 | 2,400 | - |
1962年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
1961年 | 2,300 | - |
アンティグア・バーブーダの牛乳生産量の推移を振り返ると、1950年代から1970年代末までの間は徐々に増加し、農業技術の導入や家畜管理の改善が生産量の向上に寄与しました。その後、1978年から1980年にかけて生産量が急激に増加し、6,000トン台に到達した要因は、農業振興政策や家畜用飼料の増産と輸入の増加が背景として考えられます。しかし、1980年代後半以降、この成長は鈍化し、1990年以降には生産量が減少に転じました。
この減少傾向の原因として、いくつかの要因が推測されます。第一に、気候変動の影響が挙げられます。アンティグア・バーブーダはカリブ海に位置しており、近年増加する熱帯性暴風雨や干ばつの影響を強く受けています。これにより、牧草地における飼料生産が困難となり、家畜の健康状態にも悪影響を及ぼしている可能性があります。第二に、農業人口の減少と高齢化が課題となっています。農業従事者の数が減少するとともに、農業分野での技術継承が滞り、効率的な生産体制の維持が困難となっていることが想定されます。第三に、輸入牛乳製品の増加が国内生産の市場競争力を低下させたことも見逃せません。
2020年から2022年にかけての新型コロナウイルス感染症の流行も、経済活動全体に影響を及ぼしました。社会的な混乱や輸送の停滞が、飼料や酪農資材の供給不足を招き、酪農産業の回復を遅らせたと考えられます。2023年には若干の回復傾向が見られるものの、過去の水準に戻るには至っていません。
アンティグア・バーブーダの牛乳生産業を将来にわたって持続させるためには、いくつかの具体的な対策が必要です。まず、気候変動への適応を含む持続可能な農業技術の導入が挙げられます。例えば、耐干ばつ性の高い牧草品種の導入や、雨水の効率的な利用を目的とした灌漑システムの構築が検討されるべきです。また、農業振興策として若い世代への農業技術教育を充実させ、農業への従事を促す政策が重要です。加えて、国内市場での地元産乳製品の競争力を高めるため、加工作品の多様化やブランド化を進めることも効果的でしょう。これには、酪農製品の付加価値を高めることで、輸入品に対抗するための市場基盤を整備することが含まれます。
国際機関や地域の協力も重要な鍵となります。近隣諸国との連携を深め、技術や資金面での支援を受けることで、効率的かつ環境に優しい酪農モデルを共同で構築することが可能です。また、多国間の協力フレームワークを通じた気候変動対策が、長期的な安定的生産に寄与することでしょう。
結論として、アンティグア・バーブーダの牛乳生産量の長期的な低迷は、気候変動や社会的要因、さらには市場競争力の課題に起因しています。サステナブルな農業技術や国内産業の強化、国際間協力の推進により、牛乳生産の持続可能な発展を実現することが不可欠です。この取り組みは、単なる酪農業の発展にとどまらず、地域全体の経済と食糧安全保障の強化にも貢献することとなるでしょう。