Food and Agriculture Organization(FAO)の最新データによると、アンティグア・バーブーダにおける羊の飼養数は1961年の5,100匹から長期的に増加傾向を示していましたが、2010年以降は大幅に減少しています。2022年には8,300匹となり、直近のピークである2009年の22,000匹を大きく下回っています。この変動には、多様な要因が影響を及ぼしていると考えられます。
アンティグア・バーブーダの羊飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(匹) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 8,508 |
2.51% ↑
|
2022年 | 8,300 |
-9% ↓
|
2021年 | 9,121 |
-9.23% ↓
|
2020年 | 10,048 |
-11.42% ↓
|
2019年 | 11,343 |
-17.11% ↓
|
2018年 | 13,684 |
-2.26% ↓
|
2017年 | 14,000 | - |
2016年 | 14,000 |
-0.6% ↓
|
2015年 | 14,084 |
0.6% ↑
|
2014年 | 14,000 | - |
2013年 | 14,000 | - |
2012年 | 14,000 | - |
2011年 | 14,000 | - |
2010年 | 14,000 |
-36.36% ↓
|
2009年 | 22,000 |
4.76% ↑
|
2008年 | 21,000 |
5% ↑
|
2007年 | 20,000 | - |
2006年 | 20,000 |
5.26% ↑
|
2005年 | 19,000 | - |
2004年 | 19,000 |
2.15% ↑
|
2003年 | 18,600 |
0.54% ↑
|
2002年 | 18,500 |
2.78% ↑
|
2001年 | 18,000 |
0.85% ↑
|
2000年 | 17,848 |
3.17% ↑
|
1999年 | 17,300 |
2.98% ↑
|
1998年 | 16,800 |
5% ↑
|
1997年 | 16,000 |
6.67% ↑
|
1996年 | 15,000 |
7.14% ↑
|
1995年 | 14,000 |
7.69% ↑
|
1994年 | 13,000 |
4% ↑
|
1993年 | 12,500 | - |
1992年 | 12,500 | - |
1991年 | 12,500 |
0.81% ↑
|
1990年 | 12,400 |
-1.59% ↓
|
1989年 | 12,600 |
-0.79% ↓
|
1988年 | 12,700 | - |
1987年 | 12,700 |
0.79% ↑
|
1986年 | 12,600 |
0.8% ↑
|
1985年 | 12,500 |
4.17% ↑
|
1984年 | 12,000 | - |
1983年 | 12,000 | - |
1982年 | 12,000 | - |
1981年 | 12,000 | - |
1980年 | 12,000 |
9.09% ↑
|
1979年 | 11,000 |
17.02% ↑
|
1978年 | 9,400 |
-5.05% ↓
|
1977年 | 9,900 |
-1% ↓
|
1976年 | 10,000 |
-9.09% ↓
|
1975年 | 11,000 |
-0.8% ↓
|
1974年 | 11,089 |
13.15% ↑
|
1973年 | 9,800 |
4.26% ↑
|
1972年 | 9,400 |
4.44% ↑
|
1971年 | 9,000 |
4.65% ↑
|
1970年 | 8,600 |
4.88% ↑
|
1969年 | 8,200 |
5.13% ↑
|
1968年 | 7,800 |
5.41% ↑
|
1967年 | 7,400 |
5.71% ↑
|
1966年 | 7,000 |
16.67% ↑
|
1965年 | 6,000 |
17.65% ↑
|
1964年 | 5,100 |
-1.92% ↓
|
1963年 | 5,200 |
-1.89% ↓
|
1962年 | 5,300 |
3.92% ↑
|
1961年 | 5,100 | - |
アンティグア・バーブーダの羊飼養数推移データを詳しく見ると、1961年に5,100匹であった飼養数は、1970年代から着実に増加し、2009年には最大値である22,000匹に達しました。この間、農業政策の支援や地域内での畜産業推進が羊の飼養に寄与したと考えられます。この成長は、同地域の伝統的な農業形態と地元経済への依存率が大きかったことを反映しています。一方で、2010年以降は極端な減少が見られ、2022年には8,300匹まで落ち込みました。この劇的な変化には、いくつかの要因が影響を及ぼしていると推測されます。
まず、地政学的背景と気候的影響が重要です。アンティグア・バーブーダは自然災害の影響を受けやすい地域であり、例えばハリケーンや干ばつなどの頻発は家畜の飼育に直接的な打撃を与えます。これに加えて、農地や牧草地の劣化による生産性の低下も無視できない問題です。特に2009年以降、気候変動の影響が顕在化し、羊の生育環境が悪化した可能性があります。
また、2010年代以降の経済的・社会的変化も要因として考えられます。例えば、観光業の発展に伴い、農業・畜産業が国の経済計画において優先度が低くなった可能性があります。さらに、若い労働力が畜産業から離れ、都市部や他産業に流れるという傾向も指摘されています。このような人口動態の変化は、羊飼養数の減少につながったと見られます。
さらに、羊の飼養数減少には新型コロナウイルス感染症の影響も付加的に作用したと考えられます。パンデミックは物資の輸送や国際的な貿易を停滞させ、家畜の飼料や医薬品の供給が困難になる状況を生みました。この影響は特に規模の小さい畜産業が主体であるアンティグア・バーブーダに重くのしかかった可能性があります。
これらの要因を踏まえて、アンティグア・バーブーダの羊飼養数減少に対する具体的な提案を以下に考えます。まず、気候変動対策を基盤に据えた持続可能な牧草地の管理が必要です。土壌の保全や灌漑設備の改善によって、飼育環境の安定化を図ることが求められます。さらに、地元の若者を畜産業に取り込むためのインセンティブ政策や教育プログラムを設けることも重要です。特に地元大学や専門教育機関と連携し、農業・畜産分野での技術革新を推進することで、未来の担い手を育成する道筋を作ることが考えられます。
さらに、国際的な協力も視野に入れ、国連や地域内の他国との連携を深めて資金や技術支援を得ることが必要です。同様に、持続可能な観光業と畜産業を両立させる新しい経済モデルへの転換も、長期的に見て現実的な選択肢となり得ます。
以上のように、アンティグア・バーブーダの羊飼養数推移から見えるのは、地元の畜産産業が直面する多面的な課題とその解決のための多様なアプローチの必要性です。これらの課題に正面から向き合うことで、羊飼養の安定と国全体の持続可能な成長を実現できるでしょう。