国際連合食糧農業機関(FAO)が提供する最新データによれば、アンティグア・バーブーダの羊肉生産量は1961年に18トンから始まり、2008年の77トンをピークに増加しました。しかし、2010年以降は急激な減少が見られ、2023年にはわずか2トンにまで落ち込みました。この大幅な減少は、農業や食糧システムにおける深刻な課題を示唆しています。
アンティグア・バーブーダの羊肉生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 2 |
-37.74% ↓
|
2022年 | 4 |
-9.25% ↓
|
2021年 | 4 |
-9.09% ↓
|
2020年 | 4 |
10% ↑
|
2019年 | 4 |
8.11% ↑
|
2018年 | 4 |
-66.36% ↓
|
2017年 | 11 | - |
2016年 | 11 |
-8.33% ↓
|
2015年 | 12 |
9.09% ↑
|
2014年 | 11 |
-15.38% ↓
|
2013年 | 13 |
18.18% ↑
|
2012年 | 11 |
10% ↑
|
2011年 | 10 |
-47.37% ↓
|
2010年 | 19 |
-74.46% ↓
|
2009年 | 74 |
-3.38% ↓
|
2008年 | 77 |
6.94% ↑
|
2007年 | 72 |
20% ↑
|
2006年 | 60 |
9.09% ↑
|
2005年 | 55 |
9.56% ↑
|
2004年 | 50 |
2.03% ↑
|
2003年 | 49 |
1.23% ↑
|
2002年 | 49 |
2.53% ↑
|
2001年 | 47 |
0.64% ↑
|
2000年 | 47 |
3.29% ↑
|
1999年 | 46 |
2.7% ↑
|
1998年 | 44 |
5.71% ↑
|
1997年 | 42 |
6.06% ↑
|
1996年 | 40 |
6.45% ↑
|
1995年 | 37 |
6.9% ↑
|
1994年 | 35 | - |
1993年 | 35 | - |
1992年 | 35 | - |
1991年 | 35 |
3.57% ↑
|
1990年 | 34 | - |
1989年 | 34 | - |
1988年 | 34 |
-6.67% ↓
|
1987年 | 36 |
3.45% ↑
|
1986年 | 35 | - |
1985年 | 35 |
3.57% ↑
|
1984年 | 34 | - |
1983年 | 34 |
1.82% ↑
|
1982年 | 33 |
1.85% ↑
|
1981年 | 32 | - |
1980年 | 32 |
12.5% ↑
|
1979年 | 29 |
9.09% ↑
|
1978年 | 26 |
-4.35% ↓
|
1977年 | 28 | - |
1976年 | 28 |
-8% ↓
|
1975年 | 30 | - |
1974年 | 30 |
4.17% ↑
|
1973年 | 29 |
9.09% ↑
|
1972年 | 26 |
4.76% ↑
|
1971年 | 25 |
5% ↑
|
1970年 | 24 |
5.26% ↑
|
1969年 | 23 |
2.7% ↑
|
1968年 | 22 |
2.78% ↑
|
1967年 | 22 |
5.88% ↑
|
1966年 | 20 |
17.24% ↑
|
1965年 | 17 |
-3.33% ↓
|
1964年 | 18 | - |
1963年 | 18 |
-6.25% ↓
|
1962年 | 19 |
6.67% ↑
|
1961年 | 18 | - |
アンティグア・バーブーダにおける羊肉生産量の推移は、同国の農業活動や経済、さらには気候変動の影響を反映しています。1960年代から1990年代半ばまでは、緩やかな増加傾向が続き、羊肉は安定した食糧源の一つとして位置づけられていました。2000年代初頭にはさらに大幅な増加が見られ、2008年には77トンに到達しました。これは、設備投資や農業技術の向上、そして需要の高まりが要因と考えられます。
しかし翌年から減少傾向が見られ、2010年には突如19トンにまで落ち込み、その後も下落が続きました。2023年には2トンと、記録開始以来最低の数値となりました。この急激な変動の背景には、いくつかの要因が考えられます。
まず、気候変動による影響が大きな要因と推測されます。アンティグア・バーブーダは熱帯気候にあり、近年では干ばつや異常気象が頻発しています。このような気象状況は牧草地の維持を難しくし、家畜を飼育する環境に重大な影響を及ぼします。また、2009年以降世界的に頻発した異常気象や災害が、この小国の農業基盤に深刻なダメージを与えたともいえます。
次に、同国の経済的背景も影響している可能性があります。農業部門への投資が低下し、経験を持つ人材の国外流出が進むと、国内生産力は弱体化する傾向があります。また、新型コロナウイルスの世界的な流行は、貿易や国内産業に広範囲な悪影響を与えましたが、アンティグア・バーブーダもその例外ではありません。周辺国からの輸入品に依存しがちな構造の中で、国内の肉生産が競争力を失った可能性があります。
さらに、地政学的視点から見ると、この地域における国際的食品価格の高騰や輸入品への過剰依存が、国内生産縮小の主因として挙げられます。アンティグア・バーブーダのような小規模の島国は、世界市場の変化に対して脆弱であり、これは地域経済の安定に関わる重要な課題です。
この現状を改善するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。まず、気候変動に適応した持続可能な農業方法の採用が急務です。たとえば、干ばつ耐性のある牧草や餌の導入、家畜の飼育方法の改善などがあります。また、政府や国際機関が農業部門に対する投資を増加させることで、生産能力を高めるための基盤を整えられる可能性があります。特に、低コストの栄養豊富な家畜用飼料の開発や、地元農家への教育が重要です。
さらに、地域協力の枠組みを強化し、近隣諸国との食糧交流を促進することで外部からの支援を最大化することも有効です。例えば、カリブ海諸国連合(CARICOM)のような地域団体と連携し、技術移転やリソースの共有を進めることで、農業の回復力を高める仕組みを作ることができます。
結論として、アンティグア・バーブーダの羊肉生産量の急激な減少は、気候変動、経済的課題、地政学的影響など多岐にわたる要因が関与しています。この問題は国内の食糧安全保障に影響を及ぼすだけでなく、国全体の経済基盤の脆弱性を示しています。今後、持続可能な農業技術の導入と地域協力の強化を通じて、持続可能な食糧生産体制の再構築が求められています。