国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したアンティグア・バーブーダにおけるレモン・ライム生産量の最新データによると、2023年の生産量は431トンとなり、長期的には持続的な増加傾向を示しています。特に1960年代から1980年代初めにかけての不安定な生産量を経て、1980年代半ば以降急激な成長をみせています。2000年代以降は年間200~400トン台で安定しており、直近の2020年以降は430トン前後で推移しています。
アンティグア・バーブーダのレモン・ライム生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 431 |
-1.42% ↓
|
2022年 | 437 |
0.45% ↑
|
2021年 | 435 |
0.61% ↑
|
2020年 | 433 |
-2.51% ↓
|
2019年 | 444 |
3.33% ↑
|
2018年 | 429 |
1.14% ↑
|
2017年 | 425 |
0.46% ↑
|
2016年 | 423 |
0.33% ↑
|
2015年 | 421 |
3.92% ↑
|
2014年 | 405 |
2.54% ↑
|
2013年 | 395 |
-5.88% ↓
|
2012年 | 420 |
12.72% ↑
|
2011年 | 373 |
-1.65% ↓
|
2010年 | 379 |
12.97% ↑
|
2009年 | 335 |
5.38% ↑
|
2008年 | 318 |
4.35% ↑
|
2007年 | 305 |
1.67% ↑
|
2006年 | 300 |
50% ↑
|
2005年 | 200 |
-29.82% ↓
|
2004年 | 285 |
7.55% ↑
|
2003年 | 265 |
6% ↑
|
2002年 | 250 |
8.7% ↑
|
2001年 | 230 |
2.22% ↑
|
2000年 | 225 |
-5.01% ↓
|
1999年 | 237 |
-0.69% ↓
|
1998年 | 239 |
0.65% ↑
|
1997年 | 237 |
0.5% ↑
|
1996年 | 236 |
7.17% ↑
|
1995年 | 220 |
-9.32% ↓
|
1994年 | 243 |
-2.61% ↓
|
1993年 | 249 |
-11.04% ↓
|
1992年 | 280 |
9.2% ↑
|
1991年 | 256 |
-5.04% ↓
|
1990年 | 270 |
8% ↑
|
1989年 | 250 |
0.4% ↑
|
1988年 | 249 |
19.71% ↑
|
1987年 | 208 |
4% ↑
|
1986年 | 200 |
11.11% ↑
|
1985年 | 180 |
25.87% ↑
|
1984年 | 143 |
1687.5% ↑
|
1983年 | 8 |
-46.67% ↓
|
1982年 | 15 |
-28.57% ↓
|
1981年 | 21 |
50% ↑
|
1980年 | 14 |
-80% ↓
|
1979年 | 70 |
483.33% ↑
|
1978年 | 12 |
20% ↑
|
1977年 | 10 |
-37.5% ↓
|
1976年 | 16 |
33.33% ↑
|
1975年 | 12 |
-20% ↓
|
1974年 | 15 |
-34.78% ↓
|
1973年 | 23 |
-57.41% ↓
|
1972年 | 54 |
80% ↑
|
1971年 | 30 |
11.11% ↑
|
1970年 | 27 |
35% ↑
|
1969年 | 20 |
17.65% ↑
|
1968年 | 17 |
41.67% ↑
|
1967年 | 12 |
20% ↑
|
1966年 | 10 | - |
アンティグア・バーブーダのレモン・ライム生産量推移は、独立国家としての歴史や農業政策の歩みを反映しています。1960年代末から1970年代にかけては、年ごとの生産量が10~70トンの範囲で大きく変動していました。この時期の農業体制の脆弱性や、気候条件、インフラの未整備が不安定要因となっていたと考えられます。一方で、1984年以降、生産量は急激に増加し、200トンを超える水準を安定的に維持するようになりました。この急増には、農業技術の導入や輸出市場の拡大といった要因が寄与している可能性があります。さらに2000年代以降は、300トン以上を超える持続的な成長が達成され、2020年代にはその水準がさらに高まり430トン前後で安定しました。
ただし、2023年の生産量(431トン)は2022年の437トンからわずかに減少しており、これは気候変動や新型コロナウイルス感染症の影響を含めた経済や労働力への影響が考えられるため、注意が必要です。新型コロナウイルスの世界的な影響は、農業従事者の労働供給や輸出入体制に影響を及ぼし、これが全体の生産能力に影響している可能性もあります。
また、アンティグア・バーブーダのレモン・ライム生産において興味深い点は、その増加傾向が他のカリブ地域の国々と比較しても目立つものであることです。人口規模や土地面積が限定的であるにもかかわらず、農業の効率化や市場ニーズへの対応につながる施策が奏功していると推測されます。一方で、世界的なレモン・ライムの主要生産国であるインドやメキシコ(それぞれ2022年に推定で300万トン以上)は、大規模生産体系を活用しています。これと比較すると、アンティグア・バーブーダは非常に小規模な生産国となりますが、地域のニッチ市場や高品質な輸出戦略を活かす道筋が見いだせるのではないでしょうか。
課題として挙げられるのは、気候変動が与える影響の制御や、持続的な生産体制の確保です。特にカリブ地域はハリケーンなどの自然災害に直面しやすく、それに伴う農業被害も少なくありません。また、農業従事者の高齢化や若年層の農業離れといった労働力問題も深刻です。こうした課題に対応するためには、灌漑技術や天候に抗える農業インフラの更新が必要です。同時に、地元青年層や外国労働者を対象とした農業支援プログラムや、新しい技術を学ぶための教育が重要になります。
未来に向けた具体的な提言として、地域間協力の枠組みを活用した気候変動への耐性構築や、他国との技術共有が挙げられます。また、農産物の輸出促進のためのブランド化戦略も効果的です。例えば、アンティグア・バーブーダ産のレモン・ライムを有機栽培や環境保護を意識した「プレミアム製品」として海外マーケットに売り込むことも重要です。
最終的には、現在の安定した生産基盤を維持しつつ、気候変動や経済変化、国際市場のニーズに迅速に対応できる農業体制の構築が必要です。このような取り組みが成功すれば、アンティグア・バーブーダの農産物生産が地域経済の持続可能な発展に大きく寄与することが期待されます。