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ラオス人民民主共和国の牛飼養数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、ラオス人民民主共和国における牛の飼養数は、1961年に290,000頭であったのに対し、2022年には2,428,000頭まで増加しており、約60年間で約8倍以上の増加を記録しています。特に、1980年代後半以降の成長は顕著で、年間平均増加率が加速していることがわかります。一時的な減少が見られる時期があるものの、全体的には増加傾向が続いている点が特徴です。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 2,542,707
4.72% ↑
2022年 2,428,000
5.61% ↑
2021年 2,299,000
5.07% ↑
2020年 2,188,000
3.7% ↑
2019年 2,110,000
3.39% ↑
2018年 2,040,907
2.87% ↑
2017年 1,984,000
3.17% ↑
2016年 1,923,000
5.2% ↑
2015年 1,828,000
3.51% ↑
2014年 1,766,000
3.03% ↑
2013年 1,714,000
1.3% ↑
2012年 1,692,000
10.01% ↑
2011年 1,538,000
4.34% ↑
2010年 1,474,000
3.08% ↑
2009年 1,430,000
2.36% ↑
2008年 1,397,000
3.25% ↑
2007年 1,353,000
2.42% ↑
2006年 1,321,000
3.85% ↑
2005年 1,272,000
-0.7% ↓
2004年 1,281,000
2.97% ↑
2003年 1,244,000
1.88% ↑
2002年 1,221,000
0.36% ↑
2001年 1,216,600
5.15% ↑
2000年 1,157,000
15.7% ↑
1999年 1,000,000
-11.24% ↓
1998年 1,126,600
-8.22% ↓
1997年 1,227,500
3.5% ↑
1996年 1,186,000
3.5% ↑
1995年 1,145,870
5.99% ↑
1994年 1,081,100
6.01% ↑
1993年 1,019,800
2.7% ↑
1992年 993,000
10.44% ↑
1991年 899,100
6.79% ↑
1990年 841,900
3.11% ↑
1989年 816,526
6.86% ↑
1988年 764,097
8.75% ↑
1987年 702,630
8.71% ↑
1986年 646,364
3.17% ↑
1985年 626,510
14.54% ↑
1984年 547,000
12.55% ↑
1983年 486,000
2.81% ↑
1982年 472,700
3.9% ↑
1981年 454,970
1.78% ↑
1980年 447,000
12.03% ↑
1979年 399,000
2.54% ↑
1978年 389,130
10.86% ↑
1977年 351,000
7.7% ↑
1976年 325,900
-14.24% ↓
1975年 380,000
5.56% ↑
1974年 360,000
2.86% ↑
1973年 350,000
-2.78% ↓
1972年 360,000
-2.7% ↓
1971年 370,000
-2.63% ↓
1970年 380,000
-2.56% ↓
1969年 390,000 -
1968年 390,000
2.6% ↑
1967年 380,135
0.81% ↑
1966年 377,086
11.89% ↑
1965年 337,000
2.45% ↑
1964年 328,937
6.11% ↑
1963年 310,000
3.33% ↑
1962年 300,000
3.45% ↑
1961年 290,000 -

ラオスにおける牛の飼養数の推移を分析すると、国家の経済状況や農業政策、地政学的背景が反映されていることが分かります。1960年代から1970年代前半にかけては、飼養数は緩やかに増加しましたが、戦争や社会的混乱の影響とみられる1970年代後半には飼養数が一時的に減少していることが確認されます。しかし、1980年代以降、ラオス経済の逐次的な安定化と農業分野の政策強化により、牛の飼養が本格的に増加へと転じています。特に1984年以降の急上昇は、農業技術の改善、家畜育成支援プロジェクトなどが奏功した結果と考えられます。

2000年代以降も増加は続いており、特に2010年代以降の一貫した飼養数の増加は注目に値します。この時期は、ラオスが地域経済の統合やASEAN地域との連携強化を進める中で農産物輸出を拡大する動きが加速し、一方で国民の生活水準が向上したことで、農畜産物の需要が増加したと考えられます。また、牛肉市場や乳製品産業の成長が促進されたことで、畜産業が農業経済の重要な柱となっています。

ただし、1998年や1999年のように、飼養数が突然減少する年も見られます。この要因として、気候変動による干ばつや洪水、家畜病の流行などの自然環境要因が関わっている可能性が高いです。このような事象は農業・畜産業に大きなリスクをもたらします。そのため、将来の飼養数の持続的な拡大には、気候変動に対する適応策や家畜病の予防対策を強化する必要があるといえます。

また、ラオスが持続可能な畜産業を実現するためには、牛の飼養による森林減少や環境への影響を軽減する努力も必要です。過度な放牧や森林伐採が進むと、土地の利用可能性が制限され、将来的に農業と環境のバランスが崩れる可能性があります。これには、放牧管理の技術向上や、牛の飼育を効率化する新たな技術の導入が効果的でしょう。

地域的な比較に目を向けると、ラオスは中国やインドといった大規模農畜産国に比べるとまだ飼養数は少ないですが、東南アジア諸国の中では持続的に成長している国の一つといえます。特に、カンボジアやミャンマーなど似た経済状況の国々と比較した場合、ラオスの増加率は顕著です。しかし、例えばベトナムのような輸出を主軸に据えた戦略を採用する国に比べると、飼養数増加のペースはやや遅く、農業生産性の向上が今後の課題となるでしょう。

さらに、地政学的背景と関連して、ラオスは中国、タイ、ベトナムなど経済力の高い国々に囲まれており、これら隣国との経済連携や市場開拓が重要な鍵となります。特に中国は近年、牛肉の消費需要が急増しており、これはラオスの輸出機会を拡大する可能性を秘めています。ただし輸出先の拡大にあたり、国際市場の品質基準を満たすための技術革新や品質管理の強化が必要です。

結論として、ラオスの牛飼養数の増加は、経済や農業の成長を象徴する一面を持ちながら、同時に環境負荷や気候変動対応といった課題も浮き彫りにしています。将来的には、家畜飼育の革新技術、環境対策の強化、そして国際市場を見据えた戦略的な輸出政策を組み合わせることで、持続可能で競争力のある畜産業を築くことが求められるでしょう。地域における協力体制の構築や国際機関との連携も、その成功を促進する重要な要素となるはずです。