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コスタリカのカカオ豆生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、コスタリカのカカオ豆生産量は1960年代に10,000トンを超えるピークを迎えましたが、1970年代以降は長期的な減少傾向に転じ、1990年代後半には1,000トン未満にまで低下しました。2000年代からは抑制された状態が続き、最近では2019年以降、安定的に800トンを維持しています。カカオ生産の推移は、国内外の環境および経済的な変動と密接に関連していることが読み取れます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 800 -
2022年 800 -
2021年 800 -
2020年 800 -
2019年 800
45.45% ↑
2018年 550
0.92% ↑
2017年 545
-16.15% ↓
2016年 650
8.33% ↑
2015年 600
-14.29% ↓
2014年 700 -
2013年 700 -
2012年 700
1.45% ↑
2011年 690
3.76% ↑
2010年 665
2.31% ↑
2009年 650
9.61% ↑
2008年 593
6.85% ↑
2007年 555
23.33% ↑
2006年 450
31.2% ↑
2005年 343
-51.55% ↓
2004年 708 -
2003年 708 -
2002年 708 -
2001年 708 -
2000年 708
-20.27% ↓
1999年 888
4.59% ↑
1998年 849
6.13% ↑
1997年 800
-60% ↓
1996年 2,000 -
1995年 2,000 -
1994年 2,000
-28.57% ↓
1993年 2,800
-6.67% ↓
1992年 3,000
-11.76% ↓
1991年 3,400
-2.86% ↓
1990年 3,500
-18.03% ↓
1989年 4,270
7.39% ↑
1988年 3,976
10.69% ↑
1987年 3,592
-6.87% ↓
1986年 3,857
-13.35% ↓
1985年 4,451
7.54% ↑
1984年 4,139
91.53% ↑
1983年 2,161
-39.04% ↓
1982年 3,545
-29.79% ↓
1981年 5,049
-4.12% ↓
1980年 5,266
-49.19% ↓
1979年 10,365
-0.15% ↓
1978年 10,381
34.92% ↑
1977年 7,694
31.41% ↑
1976年 5,855
-11.41% ↓
1975年 6,609
11.66% ↑
1974年 5,919
-10.32% ↓
1973年 6,600
32% ↑
1972年 5,000
-31.51% ↓
1971年 7,300
73.81% ↑
1970年 4,200
-12.5% ↓
1969年 4,800
-47.25% ↓
1968年 9,100
26.39% ↑
1967年 7,200
-22.58% ↓
1966年 9,300
22.37% ↑
1965年 7,600
-25.49% ↓
1964年 10,200
-4.67% ↓
1963年 10,700
-15.08% ↓
1962年 12,600
18.87% ↑
1961年 10,600 -

コスタリカのカカオ豆生産量の歴史を振り返ると、1960年代には10,000トンを超える高い生産水準を誇っていました。これは、肥沃な土壌や熱帯気候の恩恵を受けた結果であり、中央アメリカ地域におけるコスタリカの特有の地理的条件が支えとなっていました。しかし、1970年代以降、生産量は顕著な下降を続け、1980年代には1,000トン規模まで縮小しました。この時期には、カカオの害虫であるカカオポッドボーラーやモンリリア菌(カカオ疫病)が蔓延したことに加え、国際市場での価格変動やコーヒーなど他の作物への転換が進んだことが生産の衰退を加速した要因と考えられます。

1990年代にはさらに深刻な状況となり、生産量は数百トンまで低下しました。この期間、コスタリカではコーヒー産業への集中が進み、カカオ生産の優先順位が下がった背景があります。また、政府による支援策が欠如していたことも一因であったとされています。2000年代以降は生産が底を打ち、2008年から2015年の間にやや増加しましたが、生産量は依然として低水準でした。

近年のデータでは、2019年以降、生産量は800トンを安定的に維持しています。この安定化は、持続可能な農業手法を導入した結果やクオリティ重視のプレミアムカカオ生産への移行が寄与していると見られています。さらに、国際市場での高品質カカオの需要増加も影響している可能性があります。しかしながら、総生産量が1960年代のピークと比較すると非常に低い水準に留まっていることは、多くの課題を浮き彫りにしています。

複数の課題を抱えるコスタリカのカカオ産業には、まずは害虫対策や気候変動に対する柔軟な対応が必要です。特に、生産の安定性を脅かすカカオ疾患を防ぐための研究と技術的な支援の拡充が求められます。さらに、カカオ農家への直接的な経済支援や生産効率向上のための政策が必要です。また、カカオ生産を持続可能にするための地域間協力や、国際的な支援を活用することも効果的です。例えば、環境に配慮した農業支援プログラムの導入や、フェアトレード商品の促進を通じて収益を向上させる取り組みが考えられます。

地政学的には、中米地域全体での農業政策の方向性がカカオ産業に影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。例えば、国々間での関税や貿易政策、そして農業補助金の配分は、コスタリカにおけるカカオの競争力に直結します。また、新型コロナウイルスのパンデミックや気候変動が農業従事者に与えた影響も無視できません。これらのリスクに対応するため、災害時の農業復興プランといった迅速な対策が必要です。

結論として、コスタリカのカカオ産業は、過去の栄光を取り戻す可能性を秘めています。科学技術の活用、持続可能な農法の推進、国際市場へのプレミアム製品の展開は、復興と成長の鍵となるでしょう。さらに、地域間協力を深めることで、地政学的リスクや市場の不確実性に対しても柔軟に対応できる基盤を整えることが重要です。国際機関や政府を含む多方面での協力が、コスタリカのカカオ産業を未来に向けて強化する助けとなるはずです。