国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、1996年度のカカオ豆生産量ランキングでは、コートジボワールが1位(1,235,300トン)、ガーナが2位(403,000トン)、インドネシアが3位(350,800トン)という結果でした。上位3カ国の合計生産量は全世界の供給の約70%を占め、カカオ生産は特定の国々に集中していることがわかります。このランキングは、カカオが主に熱帯地域で栽培されていることや、農業生産力、地理的条件、政策の影響を反映しています。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
アフリカ | 1,235,300 |
| 2 |
|
アフリカ | 403,000 |
| 3 |
|
アジア | 350,800 |
| 4 |
|
アフリカ | 323,000 |
| 5 |
|
南アメリカ | 256,777 |
| 6 |
|
アフリカ | 125,726 |
| 7 |
|
アジア | 120,071 |
| 8 |
|
南アメリカ | 89,928 |
| 9 |
|
南アメリカ | 62,938 |
| 10 |
|
南アメリカ | 49,635 |
| 11 |
|
南アメリカ | 39,347 |
| 12 |
|
オセアニア | 36,000 |
| 13 |
|
南アメリカ | 22,867 |
| 14 |
|
南アメリカ | 17,124 |
| 15 |
|
アフリカ | 14,200 |
| 16 |
|
アフリカ | 11,000 |
| 17 |
|
アジア | 7,895 |
| 18 |
|
アフリカ | 7,576 |
| 19 |
|
アジア | 6,282 |
| 20 |
|
アフリカ | 4,500 |
| 21 |
|
アフリカ | 4,318 |
| 22 |
|
アフリカ | 4,300 |
| 23 |
|
南アメリカ | 4,200 |
| 24 |
|
南アメリカ | 3,860 |
| 25 |
|
アフリカ | 3,753 |
| 26 |
|
アジア | 3,649 |
| 27 |
|
南アメリカ | 2,700 |
| 28 |
|
アフリカ | 2,500 |
| 29 |
|
アフリカ | 2,500 |
| 30 |
|
オセアニア | 2,464 |
| 31 |
|
南アメリカ | 2,461 |
| 32 |
|
南アメリカ | 2,292 |
| 33 |
|
南アメリカ | 2,000 |
| 34 |
|
南アメリカ | 1,900 |
| 35 |
|
アフリカ | 1,858 |
| 36 |
|
南アメリカ | 1,712 |
| 37 |
|
南アメリカ | 1,407 |
| 38 |
|
アフリカ | 1,022 |
| 39 |
|
オセアニア | 939 |
| 40 |
|
南アメリカ | 791 |
| 41 |
|
アフリカ | 700 |
| 42 |
|
オセアニア | 485 |
| 43 |
|
アジア | 400 |
| 44 |
|
南アメリカ | 260 |
| 45 |
|
南アメリカ | 200 |
| 46 |
|
アフリカ | 200 |
| 47 |
|
南アメリカ | 185 |
| 48 |
|
南アメリカ | 126 |
| 49 |
|
オセアニア | 126 |
| 50 |
|
南アメリカ | 100 |
| 51 |
|
アジア | 83 |
| 52 |
|
南アメリカ | 55 |
| 53 |
|
アフリカ | 48 |
| 54 |
|
オセアニア | 33 |
| 55 |
|
南アメリカ | 32 |
| 56 |
|
アフリカ | 24 |
| 57 |
|
南アメリカ | 22 |
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1996年度のカカオ豆生産量ランキングを見ると、主たる生産国がアフリカ西部と東南アジアを中心に分布していることが明らかです。特に、コートジボワール(約123万トン)とガーナ(約40万トン)、インドネシア(約35万トン)の3カ国が上位を占めており、これらの国々が世界のカカオ供給を支えている重要な役割を担っています。この3カ国の生産量だけで全世界の総生産量の大部分を占めていることからも、特定国への依存度が非常に高いことがわかります。
カカオ生産がこれらの国々で高い水準にある理由は、大きく分けて地理的要因、労働集約型農業の普及、そして市場需要への応答力に起因します。カカオは主に熱帯性気候で栽培され、湿度や降雨量が安定している広大な土地を必要とします。とりわけコートジボワールやガーナのようなアフリカ西部の国々ではこれらの条件が整っており、さらに歴史的な植民地時代からの輸出志向型農業の延長としてカカオ生産が促進されました。また、これらの国では伝統的に家族経営の小規模農家によるカカオ栽培が中心となっており、生産コストを効率的に抑えることが可能です。
しかしながら、カカオ生産において、いくつかの重要な課題も見えます。アフリカ西部の主要生産国では、生産者が低い収入に苦しんでおり、貧困や児童労働も広く報告されています。また、気候変動が地域に及ぼす影響も無視できません。カカオ栽培には一定の気候条件が必要であり、気温上昇や降雨パターンの変化によって、生産地が今後縮小する可能性が指摘されています。このようなリスクに対応するためには、より耐候性の高い品種の開発や、農業技術の向上が求められます。
さらに、供給の偏重による地政学的リスクについても議論が必要です。例えば、コートジボワールやガーナは国内の政治的不安定さや地域紛争の影響を受けやすく、これが将来のカカオ市場に与える影響は計り知れません。また、生産量の79%をアフリカ、アジア、南アメリカに依存している現状では、天候不順や病害虫による生産障害が供給や価格にも直結します。そのため、国際市場において特定の生産国への依存度を減らす分散型サプライチェーンの構築が必要です。
具体的な対策の例として、大規模な国際的資金協調により農業従事者への技術支援や教育を強化すること、貿易公正の枠組みを強化してフェアトレードを推進することが挙げられます。また、カカオバリューチェーンの透明性の向上や、有機栽培の普及、サステナブルな農業活動を支援する政策が役立つでしょう。たとえば、日本を含む消費国はカカオ製品の購買力を利用し、ゴールデン豆(高品質のカカオ豆)に対する需要増加によって、持続可能な生産を促進する役割を果たすことができます。
結論として、1996年度のカカオ豆生産量ランキングは、特定地域に集中した供給構造や産業の課題を示しています。これを克服するには、栽培国と消費国の協調的な努力が必要不可欠です。環境、社会、経済に配慮した持続可能な生産体制を築き、国際社会全体で将来のリスクを共有・軽減していくことが求められます。