Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)のデータによると、1982年度のカカオ豆生産量ランキングでは、コートジボワールがトップとなり、生産量は360,445トンでした。これに続くのはブラジル(351,149トン)とガーナ(202,500トン)であり、これら上位3カ国だけで世界のカカオ豆生産の大部分を占めています。一方で、上位10カ国の生産量は全体の大半を構成する一方で、50位以内には多くの小規模生産国も含まれており、生産の集中と分散が明確に見られます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
アフリカ | 360,445 |
| 2 |
|
南アメリカ | 351,149 |
| 3 |
|
アフリカ | 202,500 |
| 4 |
|
アフリカ | 156,000 |
| 5 |
|
アフリカ | 105,153 |
| 6 |
|
南アメリカ | 96,941 |
| 7 |
|
アジア | 61,000 |
| 8 |
|
南アメリカ | 41,013 |
| 9 |
|
南アメリカ | 39,400 |
| 10 |
|
南アメリカ | 34,921 |
| 11 |
|
オセアニア | 25,909 |
| 12 |
|
アジア | 17,260 |
| 13 |
|
アフリカ | 15,100 |
| 14 |
|
アフリカ | 13,800 |
| 15 |
|
南アメリカ | 13,257 |
| 16 |
|
アフリカ | 7,000 |
| 17 |
|
南アメリカ | 6,045 |
| 18 |
|
アジア | 6,000 |
| 19 |
|
アジア | 5,348 |
| 20 |
|
アフリカ | 5,100 |
| 21 |
|
アフリカ | 4,600 |
| 22 |
|
南アメリカ | 4,490 |
| 23 |
|
アフリカ | 4,300 |
| 24 |
|
アフリカ | 4,000 |
| 25 |
|
南アメリカ | 3,545 |
| 26 |
|
アジア | 3,000 |
| 27 |
|
アフリカ | 2,900 |
| 28 |
|
アフリカ | 2,492 |
| 29 |
|
南アメリカ | 2,408 |
| 30 |
|
南アメリカ | 2,342 |
| 31 |
|
南アメリカ | 2,279 |
| 32 |
|
南アメリカ | 2,247 |
| 33 |
|
アフリカ | 1,895 |
| 34 |
|
南アメリカ | 1,706 |
| 35 |
|
南アメリカ | 1,515 |
| 36 |
|
オセアニア | 1,300 |
| 37 |
|
南アメリカ | 1,200 |
| 38 |
|
アフリカ | 1,159 |
| 39 |
|
南アメリカ | 1,000 |
| 40 |
|
オセアニア | 668 |
| 41 |
|
オセアニア | 528 |
| 42 |
|
南アメリカ | 492 |
| 43 |
|
南アメリカ | 400 |
| 44 |
|
南アメリカ | 400 |
| 45 |
|
アジア | 300 |
| 46 |
|
アフリカ | 200 |
| 47 |
|
南アメリカ | 135 |
| 48 |
|
オセアニア | 130 |
| 49 |
|
アフリカ | 100 |
| 50 |
|
南アメリカ | 50 |
| 51 |
|
南アメリカ | 42 |
| 52 |
|
アフリカ | 40 |
| 53 |
|
南アメリカ | 40 |
| 54 |
|
南アメリカ | 30 |
| 55 |
|
アジア | 20 |
| 56 |
|
アフリカ | 20 |
| 57 |
|
南アメリカ | 5 |
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1982年度における世界のカカオ豆生産量を見てみると、コートジボワール、ブラジル、ガーナが圧倒的なシェアを誇っています。これらの国々は、気候的にカカオ栽培に適した地域であり、特に西アフリカ諸国はカカオ生産の中心地と言えます。コートジボワールの360,445トンという数字は、当時の世界市場における重要性を示し、ブラジルの351,149トンもほぼ同等の規模で二大生産国として突出しています。このような集中した生産は、国際市場の価格決定や需給の均衡に大きな影響を与える要因となっています。
また、西アフリカだけでなく、中南米諸国や東南アジアといった別の地域でも一定の生産が見られます。特にエクアドルやマレーシアなどは、中堅生産国として引き続き注目されています。しかしながら、生産量1位のコートジボワールと10位のドミニカ共和国(34,921トン)を比べると、その差は約10倍となることから、上位数カ国がほぼ市場を支配している状態です。
このような生産の集中には、特定の国や地域の経済的依存が問題となり得ます。特に西アフリカ諸国では、経済の他分野への多様化が進まず、カカオ価格の変動や天候異常が直接的に国の収益に影響を及ぼすリスクがあります。たとえば、コートジボワールやガーナでは、カカオ豆の輸出に収益の多くを依存しており、世界市場における価格の暴落や農業従事者の労働環境の問題が長期的な課題として残っています。
一方で、インドネシアやマレーシアなどの東南アジア諸国は、この時点ではまだ生産量が小規模ですが、気候条件や農業技術の導入次第で、力強い成長が期待されます。これは、生産をアフリカ以外に分散させることで市場の安定性も高まるという点で国際的にも意義のある動きとなるでしょう。
地政学的リスクの観点でも、カカオ生産国の大部分が発展途上国であることを考慮すると、地域紛争や政情不安がカカオ豆の供給に直接的な影響を与える可能性があります。そのため、国際市場はこれらの地域での安定的な生産を確保するため、生産国における持続可能な農業の支援や、農村開発への投資を行うことが求められます。
未来の課題としては、気候変動の影響や農地減少がカカオ生産に打撃を与えるリスクが指摘されています。例えば、気温の上昇や降雨パターンの変化は、生産量を大幅に減少させ、すでに地球温暖化の影響が報告されている国々では、緩和策の導入が急がれます。また、森林伐採と引き換えの農地拡大も環境問題を深刻化させています。これらの課題に対しては、国際的な協力を通じて気候適応型の農法を普及させることや、生産効率を向上させる取り組みが必要です。
国際連合やその他の国際機関は、こうした課題に対応するため、フェアトレードを通じた生産者の利益向上や、低環境負荷の農業技術を推奨するべきです。個々の国としては、カカオ依存から脱却し、観光業や他の輸出作物による収益源の多様化を進めることが鍵となりそうです。また、カカオ豆の加工や製品化を国内で行うことで付加価値を国内経済に還元する取り組みも拡大していく必要があります。
このように、1982年度のデータから読み解けるのは、カカオ豆生産が特定の地域に強く依存している現状と、それに伴う脆弱性です。生産国、消費国、そして国際市場全体が協力し、持続可能で公平なカカオ産業を構築する必要があります。