国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2009年度の世界のカカオ豆生産量ランキングによると、世界最大のカカオ豆生産国はコートジボワールで生産量が1,223,153トンでした。2位はインドネシア(809,583トン)、3位はガーナ(710,638トン)で、これら3カ国が生産量の大部分を占めています。アフリカ地域が世界のカカオ豆産業をリードしている反面、他地域の生産量は相対的に低く、分布の偏りが見られます。このランキングから、世界のチョコレートおよびカカオ製品産業における供給構造と地政学的リスクの影響を考慮した課題を明確にすることができます。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
アフリカ | 1,223,153 |
| 2 |
|
アジア | 809,583 |
| 3 |
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アフリカ | 710,638 |
| 4 |
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アフリカ | 363,510 |
| 5 |
|
アフリカ | 235,500 |
| 6 |
|
南アメリカ | 218,487 |
| 7 |
|
南アメリカ | 120,581 |
| 8 |
|
アフリカ | 105,000 |
| 9 |
|
南アメリカ | 60,000 |
| 10 |
|
オセアニア | 59,400 |
| 11 |
|
南アメリカ | 54,994 |
| 12 |
|
南アメリカ | 44,740 |
| 13 |
|
南アメリカ | 36,803 |
| 14 |
|
南アメリカ | 20,920 |
| 15 |
|
アジア | 18,152 |
| 16 |
|
アフリカ | 15,000 |
| 17 |
|
アフリカ | 14,577 |
| 18 |
|
アジア | 11,820 |
| 19 |
|
南アメリカ | 10,591 |
| 20 |
|
アフリカ | 10,000 |
| 21 |
|
南アメリカ | 8,536 |
| 22 |
|
アフリカ | 8,500 |
| 23 |
|
アフリカ | 8,000 |
| 24 |
|
アフリカ | 5,470 |
| 25 |
|
アジア | 5,134 |
| 26 |
|
アフリカ | 4,600 |
| 27 |
|
オセアニア | 4,553 |
| 28 |
|
南アメリカ | 4,510 |
| 29 |
|
アフリカ | 2,500 |
| 30 |
|
アジア | 1,750 |
| 31 |
|
南アメリカ | 1,550 |
| 32 |
|
オセアニア | 1,500 |
| 33 |
|
南アメリカ | 1,387 |
| 34 |
|
南アメリカ | 1,350 |
| 35 |
|
アフリカ | 1,200 |
| 36 |
|
南アメリカ | 1,108 |
| 37 |
|
アフリカ | 800 |
| 38 |
|
アジア | 781 |
| 39 |
|
南アメリカ | 650 |
| 40 |
|
南アメリカ | 600 |
| 41 |
|
南アメリカ | 561 |
| 42 |
|
南アメリカ | 500 |
| 43 |
|
オセアニア | 480 |
| 44 |
|
南アメリカ | 365 |
| 45 |
|
アフリカ | 336 |
| 46 |
|
南アメリカ | 210 |
| 47 |
|
アフリカ | 200 |
| 48 |
|
南アメリカ | 180 |
| 49 |
|
アジア | 137 |
| 50 |
|
南アメリカ | 132 |
| 51 |
|
南アメリカ | 110 |
| 52 |
|
アフリカ | 100 |
| 53 |
|
アフリカ | 100 |
| 54 |
|
南アメリカ | 39 |
| 55 |
|
アフリカ | 34 |
| 56 |
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オセアニア | 33 |
| 57 |
|
南アメリカ | 6 |
| 58 |
|
オセアニア | 5 |
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2009年度のカカオ豆生産量ランキングを通じて、世界のカカオ豆供給構造の現状を理解することができます。生産量トップのコートジボワールは、世界全体のカカオ豆供給量の約37%を占め、アフリカ西部のガーナ(710,638トン、全体の約22%)やナイジェリア(363,510トン、約11%)とともに、アフリカ地域がこの産業の中心地であることが分かります。特にコートジボワールは、生産量でも明らかな世界のカカオ市場を牽引する国となっています。
これに対し、インドネシア(809,583トン、全体の約25%)のようなアジアの主要生産国もカカオ豆市場における存在感を高めています。一方、アメリカ大陸ではブラジル(218,487トン)やエクアドル(120,581トン)のような国がランクインしていますが、その生産量はアフリカやアジアに比べて低めです。
本ランキングからは、いくつかの重要な課題が浮かび上がります。まず、アフリカ西部地域に生産が集中していることから、地政学的なリスクがカカオ市場に大きな影響を及ぼす可能性があります。この地域は紛争や不安定な政情の影響を受けやすいため、供給の安定性に懸念が残ります。また、カカオ豆の大部分が発展途上国で生産され、収穫後の商品価値を高める加工などは先進国に依存している点も注目に値します。この構造は、カカオの生産国に十分な経済的利益が還元されにくい原因となり、農民の生活の質向上や貧困削減の妨げにもなっています。
さらに、気候変動や気象の不安定化がカカオ農業に深刻な影響を与える可能性もあります。たとえば、カカオの栽培には一定の温度や湿度が必要ですが、温暖化により適した栽培地域が狭まり、生産量の減少につながる恐れがあります。この影響は特にアフリカの生産国にとって喫緊の課題です。
これらの課題に対処するためには、まず生産国での加工産業の発展が求められます。例えば、生産国でのチョコレート加工施設の増設により、高付加価値製品を輸出することで経済効果を引き上げることができます。また、カカオ生産に依存する農業経済を補完する形での多角化も必要です。さらに、国際協力を進め、持続可能な農業技術の導入や気候変動に対応した品種改良の取り組みが重要です。
地政学的リスクへの対応としては、多国間の安全保障および経済協力体制を強化し、地域の安定化を図るべきです。具体的には、西アフリカ諸国内での経済共同体(例えばECOWAS)などの枠組みを活用し、農業分野における支援や投資を拡大することが効果的です。また、消費国である欧米諸国や日本、中国などの協力も欠かせません。
結論として、2009年度のカカオ豆生産量データは、この産業の地理的、経済的な偏りを明確に示しています。生産地における農業技術や加工産業の発展が進まなければ、供給の不安定性や農家の貧困問題が今後も続く可能性があります。国際社会が積極的に連携し、カカオ産業を持続可能な形で発展させるための取り組みが一層重要になると考えられます。