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スイスの牛乳生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したスイスの牛乳生産量データ(1961年~2023年)を分析すると、スイスの牛乳生産量は長期的には着実な増加傾向を示したものの、近年は生産量の減少が見られています。特に1980年代後半から2000年代にかけては年間約380万~400万トンを安定的に維持していましたが、2020年代に入り減少傾向が顕著となりました。2022年には3,711,400トンと直近のピークである2011年の4,116,500トンを大きく下回っています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,738,000
0.72% ↑
2022年 3,711,400
-2.63% ↓
2021年 3,811,500
0.82% ↑
2020年 3,780,500
-0.31% ↓
2019年 3,792,200
-3.09% ↓
2018年 3,913,000
0.53% ↑
2017年 3,892,500
-1.63% ↓
2016年 3,956,800
-2.12% ↓
2015年 4,042,500
-0.59% ↓
2014年 4,066,600
1.6% ↑
2013年 4,002,700
-1.98% ↓
2012年 4,083,600
-0.8% ↓
2011年 4,116,500
0.91% ↑
2010年 4,079,400
0.27% ↑
2009年 4,068,500
-0.07% ↓
2008年 4,071,300
4.09% ↑
2007年 3,911,500
0.87% ↑
2006年 3,877,700
0.17% ↑
2005年 3,871,200
0.03% ↑
2004年 3,870,200
0.55% ↑
2003年 3,849,000
-0.82% ↓
2002年 3,880,700
0.18% ↑
2001年 3,873,800
1.2% ↑
2000年 3,827,800
-0.2% ↓
1999年 3,835,400
-0.13% ↓
1998年 3,840,400
1.52% ↑
1997年 3,783,000
-0.3% ↓
1996年 3,794,500
-1.74% ↓
1995年 3,861,600
1.14% ↑
1994年 3,818,200
0.54% ↑
1993年 3,797,800
-0.23% ↓
1992年 3,806,700
-1.75% ↓
1991年 3,874,500
0.22% ↑
1990年 3,866,000
-0.67% ↓
1989年 3,892,000
3.07% ↑
1988年 3,776,000
0.4% ↑
1987年 3,761,000
-2.18% ↓
1986年 3,845,000 -
1985年 3,845,000
-0.21% ↓
1984年 3,853,000
3.21% ↑
1983年 3,733,000
1.91% ↑
1982年 3,663,000
0.19% ↑
1981年 3,656,000
0.03% ↑
1980年 3,655,000
0.22% ↑
1979年 3,647,000
3.67% ↑
1978年 3,518,000
0.83% ↑
1977年 3,489,000
1.07% ↑
1976年 3,452,000
2.28% ↑
1975年 3,375,000
1.08% ↑
1974年 3,339,000
1.99% ↑
1973年 3,274,000
1.87% ↑
1972年 3,214,000
2.36% ↑
1971年 3,140,000
-1.35% ↓
1970年 3,183,000
-0.31% ↓
1969年 3,193,000
-3.24% ↓
1968年 3,300,000
1.48% ↑
1967年 3,252,000
3.86% ↑
1966年 3,131,000
1.16% ↑
1965年 3,095,000
2.69% ↑
1964年 3,014,000
-2.52% ↓
1963年 3,092,000
-0.67% ↓
1962年 3,113,000
1.53% ↑
1961年 3,066,000 -

スイスの牛乳生産量に関するデータは、国の農牧業や経済、さらには国際市場におけるスイス製品(例:チーズやバター)供給の基盤を理解する上で重要な指標です。1961年からデータを追うと、1970年代から1980年代にかけて生産量は徐々に増加し、特に1984年には3,853,000トンと当時の最高値を記録しました。その後も1990年代にかけて安定した増加が見られましたが、2000年代後半に入るとわずかながら減少や横ばい傾向が見られ始めました。

2011年に4,116,500トンというピークを迎えたのち、輸出市場の変化、国内需要の動向、農業政策の影響などから減少傾向に転じました。特筆すべきは、2022年には3,711,400トンとこの数十年間の水準より約10%減少しており、これが最近の重要な問題として浮上しています。

スイスの牛乳生産にはいくつかの独自性があります。その一つが、アルプスの豊かな自然環境を背景に育まれる放牧型の酪農スタイルです。しかし、この環境の特異性が同時に課題にもつながります。まず、アルプスの気候変動の影響が挙げられます。近年の温暖化や降水パターンの変化により牧草地の生産性が低下し、多くの酪農家が生産コストの増加と向き合うことを余儀なくされました。また、スイスの農業従事者の高齢化問題も生産の減少を加速させる要因となっています。

さらに多くの農家は輸出市場での競争力維持に苦労しています。特にEU諸国との関税や市場規制の問題が、スイスの乳製品市場に影響を及ぼしました。例えばドイツやフランスのような主要競合国では、より大規模な農業経営とコスト効率を追求する体制が整備されており、スイスのような中小規模酪農中心の国では対抗が難しくなっています。

こうした現状を踏まえた解決策が求められています。第一に、政府による支援や助成金の強化が必要です。特に若手酪農家の育成に向けた投資は、農業人口の減少を防ぐカギとなるでしょう。また、牧草地の持続可能性を高めるために新技術や遺伝子改良された牧草の導入を進めることも有効です。第二に、輸出市場の多様化が求められます。例えば、アジア市場への輸出を拡大するための戦略を立てることで、新たな需要を掘り起こす可能性があります。

さらに、温暖化対策として持続可能な農業モデルを推進することも重要です。これには、温室効果ガス排出量の削減や再生可能エネルギーの利用拡大が含まれます。このような対策は国際的な環境基準に適合し、スイス製品の高品質なイメージをさらに強化する助けとなるでしょう。

結論として、スイスの牛乳生産量推移は経済・環境・社会の複数の要素が絡み合った結果であり、短期的な増産だけでなく、長期的な持続可能性を見据えた農業の再設計が求められています。スイス政府および国際機関はこの分野でさらなる協力体制を築くべきです。