国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、スイスにおける鶏の飼養数は、1961年に約597万羽であったのに対して、2022年では約1310万羽に達しており、約2.2倍に増加しています。この長期的な増加傾向は、主に食文化の変化や国内外の需要の拡大に対応した結果と考えられます。一方、期間中には一部の年で減少も見られることが特徴として挙げられます。
スイスの鶏飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(羽) |
---|---|
2022年 | 13,109.00 |
2021年 | 12,568.00 |
2020年 | 12,429.00 |
2019年 | 11,829.00 |
2018年 | 11,535.00 |
2017年 | 11,409.00 |
2016年 | 10,893.00 |
2015年 | 10,753.00 |
2014年 | 10,644.00 |
2013年 | 10,003.00 |
2012年 | 9,878.00 |
2011年 | 9,391.00 |
2010年 | 8,944.00 |
2009年 | 8,741.00 |
2008年 | 8,474.00 |
2007年 | 8,101.00 |
2006年 | 7,517.00 |
2005年 | 8,116.00 |
2004年 | 7,913.00 |
2003年 | 7,445.00 |
2002年 | 7,206.00 |
2001年 | 6,808.00 |
2000年 | 6,790.00 |
1999年 | 6,731.00 |
1998年 | 6,566.00 |
1997年 | 6,352.00 |
1996年 | 6,251.00 |
1995年 | 6,064.00 |
1994年 | 6,227.00 |
1993年 | 6,227.00 |
1992年 | 5,341.00 |
1991年 | 5,508.00 |
1990年 | 5,964.00 |
1989年 | 6,041.00 |
1988年 | 6,356.00 |
1987年 | 5,679.00 |
1986年 | 5,691.00 |
1985年 | 5,722.00 |
1984年 | 5,943.00 |
1983年 | 6,082.00 |
1982年 | 5,961.00 |
1981年 | 5,956.00 |
1980年 | 6,146.00 |
1979年 | 6,337.00 |
1978年 | 6,688.00 |
1977年 | 6,053.00 |
1976年 | 6,138.00 |
1975年 | 6,121.00 |
1974年 | 6,536.00 |
1973年 | 6,698.00 |
1972年 | 6,021.00 |
1971年 | 5,963.00 |
1970年 | 5,919.00 |
1969年 | 6,345.00 |
1968年 | 6,211.00 |
1967年 | 6,657.00 |
1966年 | 6,586.00 |
1965年 | 6,331.00 |
1964年 | 5,800.00 |
1963年 | 5,750.00 |
1962年 | 5,880.00 |
1961年 | 5,975.00 |
スイスの鶏飼養数は、1960年代には年間500万羽台後半で推移し、緩やかな増減を繰り返していました。たとえば1961年の597万5千羽は、1970年代初頭もおおよそ維持されていましたが、1980年代中盤にはやや減少傾向が目立ち、1985年には572万2千羽まで下がりました。これは、当時ヨーロッパ全体での食肉消費の多様化や、他動物性たんぱく質の需要の変更が影響したものと思われます。
しかしながら、1990年代以降から急速に増加の傾向を示しはじめ、特に2000年代初頭の伸びは顕著です。2000年では約679万羽だった飼養数が、2005年には811万6千羽に、さらにその10年後の2015年には1075万3千羽と、大きな増加を記録しています。この間、増加速度は年間10万羽を超えた年が多く、しばしば経済成長や消費行動の変化を背景にしています。また、パンデミックの影響を受けた2020年以降でもその増加傾向は続いており、2022年にはついに1310万9千羽と過去最高を記録しました。
この動向には、スイス国内での鶏肉消費量の増加や、大規模飼育技術の進化などが深くかかわっています。新型コロナウイルスによる外食産業の一時的な停滞が食材需要の動きを変えた一方で、家庭での肉類消費の比重が増し、特に手軽な鶏肉はその需要が高まったと考えられます。また、持続可能性が重視されるようになった社会的な背景も影響しており、牛肉など温室効果ガス排出量の多い家畜を避け、環境負荷が少ない鶏肉が選ばれる傾向もさらに強まっています。
他国との比較を行うと、たとえば日本は飼養数を2022年に向けて約3.1億羽に維持しており、スイスに比べて大規模生産体制となっています。一方、中国は世界最大級であり、数十億羽単位で飼育されています。このような状況を踏まえると、スイスの動向は他国と比べて控えめではある一方、高い増加率を見せてきた点で注目されます。
同時に、この増加が示す課題も存在します。一つには、動物福祉の観点です。特に鶏の飼育の増加に伴い、飼育密度や飼育環境の改善が喫緊の課題です。また、鶏飼養数の増加により、飼料や水、労働力などの資源需要が一層高まることも予測されます。このため、効率的な生産方法を取りつつ、自然環境への負担を軽減する対策が必要です。
今後の政策提言としては、スイス国内での畜産業の持続可能化に向けて、バイオ技術の活用や農家の教育を強化する取り組みが挙げられます。また、環境規制の厳格化や、消費者への情報提供を通じて、よりサステナブルな鶏肉生産を促進することも重要です。このほか、国内需要の充足のみならず、近隣のヨーロッパ諸国へ輸出を広げるなど、国際的な動きを踏まえた戦略も検討するべきです。
結論として、スイスにおける鶏飼養数の推移は、国内外の市場動向や社会的な要請に応じた結果であり、それを支える環境や技術の面での課題が浮き彫りになっています。この問題に対して、国内政策の充実や国際協力の強化が今後の発展に欠かせないでしょう。成功すれば、動物福祉と産業振興を両立したモデルの構築という点で、他国にとっても参考となる事例となるでしょう。