国際連合食糧農業機関(FAO)が公開した最新データによると、スイスのニンジン・カブ類の年間生産量は、長期的には多様な変動がみられるものの、21世紀初頭からおおむね安定的な推移を示しています。しかしながら、2021年以降、急激に生産量が減少しており、2023年には50,203トンと、近年の平均値を大きく下回る状況です。これは、天候異常、気候変動、及び市場需要の変化など、多様な要因が複雑に絡み合う結果と考えられます。
スイスのニンジン・カブ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 50,203 |
-21.15% ↓
|
2022年 | 63,668 |
34% ↑
|
2021年 | 47,512 |
-30.65% ↓
|
2020年 | 68,508 |
-2.05% ↓
|
2019年 | 69,941 |
-0.03% ↓
|
2018年 | 69,961 |
-9.12% ↓
|
2017年 | 76,985 |
12.5% ↑
|
2016年 | 68,433 |
-4.89% ↓
|
2015年 | 71,952 |
10.11% ↑
|
2014年 | 65,345 |
5.21% ↑
|
2013年 | 62,111 |
-8.38% ↓
|
2012年 | 67,793 |
-10.41% ↓
|
2011年 | 75,673 |
23.69% ↑
|
2010年 | 61,179 |
-12.02% ↓
|
2009年 | 69,539 |
-4.73% ↓
|
2008年 | 72,990 |
17.33% ↑
|
2007年 | 62,211 |
17.16% ↑
|
2006年 | 53,097 |
-10.02% ↓
|
2005年 | 59,009 |
2.39% ↑
|
2004年 | 57,629 |
27.57% ↑
|
2003年 | 45,176 |
-24.55% ↓
|
2002年 | 59,874 |
16.83% ↑
|
2001年 | 51,249 |
4.53% ↑
|
2000年 | 49,029 |
-11.8% ↓
|
1999年 | 55,588 |
4.89% ↑
|
1998年 | 52,997 |
2.86% ↑
|
1997年 | 51,525 |
-1.78% ↓
|
1996年 | 52,457 |
6.81% ↑
|
1995年 | 49,112 |
-6.71% ↓
|
1994年 | 52,644 |
-1.06% ↓
|
1993年 | 53,210 |
-1.21% ↓
|
1992年 | 53,860 |
9.34% ↑
|
1991年 | 49,257 |
-18.04% ↓
|
1990年 | 60,099 |
-4.03% ↓
|
1989年 | 62,621 |
-9.39% ↓
|
1988年 | 69,107 |
44.34% ↑
|
1987年 | 47,879 |
-16.07% ↓
|
1986年 | 57,045 |
14.17% ↑
|
1985年 | 49,965 |
-14.48% ↓
|
1984年 | 58,424 |
19.61% ↑
|
1983年 | 48,847 |
9.12% ↑
|
1982年 | 44,766 |
-15.32% ↓
|
1981年 | 52,864 |
-6.77% ↓
|
1980年 | 56,700 |
57.5% ↑
|
1979年 | 36,000 |
-12.2% ↓
|
1978年 | 41,000 |
-12.77% ↓
|
1977年 | 47,000 |
30.56% ↑
|
1976年 | 36,000 |
-14.29% ↓
|
1975年 | 42,000 |
15.07% ↑
|
1974年 | 36,500 |
58.7% ↑
|
1973年 | 23,000 |
21.05% ↑
|
1972年 | 19,000 |
-20.83% ↓
|
1971年 | 24,000 |
9.09% ↑
|
1970年 | 22,000 |
10% ↑
|
1969年 | 20,000 |
5.26% ↑
|
1968年 | 19,000 |
5.56% ↑
|
1967年 | 18,000 |
-10% ↓
|
1966年 | 20,000 |
25% ↑
|
1965年 | 16,000 |
-33.33% ↓
|
1964年 | 24,000 |
-14.29% ↓
|
1963年 | 28,000 |
-15.15% ↓
|
1962年 | 33,000 |
-19.51% ↓
|
1961年 | 41,000 | - |
スイスのニンジン・カブ類生産量の長期的なデータを分析すると、1960年代には減少傾向が顕著であり、特に1961年の41,000トンから1965年の16,000トンへの急激な低下が見られます。この大幅な減少の背景には、工業化や都市化の進展に伴う農業労働力の転出や国内需要の変化が影響を及ぼしたと考えられます。しかし、1970年代以降は徐々に回復を見せ、1980年代から2000年代にかけて50,000~70,000トンの安定した水準を維持しました。この間の回復には、農業技術の進歩や環境にやさしい農法が普及したことが寄与していると推測されます。
特筆すべきは2008年以降の生産量の上昇で、特に2011年には75,673トン、2017年には過去最高となる76,985トンを記録しています。この増加の背景には、地元産の需要の高まりや政府の農業支援政策が成功を収めたことが挙げられます。しかし、2021年以降、再び急激な減少が観測されています。2021年には47,512トンと大幅に減少し、2023年でも50,203トンに留まる結果となっています。
この急減の可能性の中には、気候変動が重要な要因として挙げられます。近年、欧州全体で観測された酷暑や極端な乾燥が作物に悪影響を与える事例が増加しており、スイスでも例外ではありません。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で農業労働力の不足や供給網の混乱が生じたことも、生産量に影響を与えた可能性があります。さらに、国際的な市場の動きによって競争が激化し、一部の農業生産者が他作物への転換を余儀なくされたことも考えられます。例えば、収益性が高いワイン用のブドウや乳製品生産が優先されることが増えました。
このような状況を踏まえると、スイスのニンジン・カブ類生産にはいくつかの課題が存在します。まず、気候変動に適応する農業手法の導入が急務です。耐乾性のある品種の採用や、灌漑技術を効率化するための投資が必要です。また、農業従事者に対する研修や教育を強化し、新しい気候条件に即した農業方法を浸透させる取り組みが有益でしょう。
さらに、政府と国際組織による支援策も重要です。市場価格の安定を図るための補助金や長期的な契約制度が導入されれば、生産者の経済的な安心感が高まり、持続可能な農業経営につながるでしょう。また、地域間での協力が進むことで、例えば、隣国であるフランスやドイツとの緊密な協定を結ぶことで、地産地消の促進や輸出の活発化を実現する可能性があります。
結論として、スイスのニンジン・カブ類生産量は一見すると安定しているように見えますが、急激な環境変化や社会的要因が今後の生産量に重大な影響を及ぼす可能性があることを無視するべきではありません。スイス国内だけでなく、国際的な視点も踏まえた持続可能な農業推進のための政策策定が求められます。