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スイスのナシ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)の最新データによると、スイスのナシ生産量は1961年に200,000トンを記録した後、長期的には大幅に減少し、2023年には28,078トンまで減少しました。特に1970年代後半からは減少傾向が顕著であり、近年もその低迷が続いています。一方で一時的な増加も見られる中、全体として安定的な生産基盤の維持が課題となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 28,078
-16.33% ↓
2022年 33,556
6.17% ↑
2021年 31,607
-28.28% ↓
2020年 44,067
16.02% ↑
2019年 37,981
-34.66% ↓
2018年 58,131
87.19% ↑
2017年 31,054
-10.5% ↓
2016年 34,699
-20.77% ↓
2015年 43,798
-9.82% ↓
2014年 48,570
10.01% ↑
2013年 44,152
-8.45% ↓
2012年 48,229
-19.53% ↓
2011年 59,937
49.61% ↑
2010年 40,062
-40.9% ↓
2009年 67,788
107.95% ↑
2008年 32,598
-61.14% ↓
2007年 83,879
38.54% ↑
2006年 60,546
-5.82% ↓
2005年 64,290
-10.68% ↓
2004年 71,980
-20.94% ↓
2003年 91,042
74.52% ↑
2002年 52,166
-26.17% ↓
2001年 70,656
-39.48% ↓
2000年 116,745
49.88% ↑
1999年 77,894
-51.86% ↓
1998年 161,797
145.47% ↑
1997年 65,914
-27.07% ↓
1996年 90,381
-26.91% ↓
1995年 123,663
38.95% ↑
1994年 89,001
-33.33% ↓
1993年 133,494
-18.85% ↓
1992年 164,509
107.71% ↑
1991年 79,200
-10.33% ↓
1990年 88,324
-9.87% ↓
1989年 98,000
-50.43% ↓
1988年 197,700
200.46% ↑
1987年 65,800
-61.74% ↓
1986年 172,000
35.43% ↑
1985年 127,000
-9.29% ↓
1984年 140,000
-20% ↓
1983年 175,000
-2.23% ↓
1982年 179,000
32.59% ↑
1981年 135,000
11.57% ↑
1980年 121,000
-28.4% ↓
1979年 169,000
94.25% ↑
1978年 87,000
-3.33% ↓
1977年 90,000
-25% ↓
1976年 120,000
-37.5% ↓
1975年 192,000
97.94% ↑
1974年 97,000
-41.92% ↓
1973年 167,000
75.79% ↑
1972年 95,000
-17.39% ↓
1971年 115,000
-32.35% ↓
1970年 170,000
-5.56% ↓
1969年 180,000
-5.76% ↓
1968年 191,000
-19.07% ↓
1967年 236,000
57.33% ↑
1966年 150,000
50% ↑
1965年 100,000
-44.44% ↓
1964年 180,000
32.35% ↑
1963年 136,000
-38.18% ↓
1962年 220,000
10% ↑
1961年 200,000 -

スイスのナシ生産量は、1961年の200,000トンをピークに、年ごとの大きな変動を示しつつも減少傾向が鮮明になっています。データによると、この減少にはいくつかの要因が影響していると考えられます。気候変動が農業生産に与える影響は無視できません。特にスイスのようなアルプス地帯は気温上昇や豪雨・干ばつといった極端な気象現象の変化を直接的に受けやすい地域です。1970年代以降の減少をみると、安定した農業基盤を確立する難しさが背景にあることが見て取れます。

ナシを含む果樹園農業においては、土地利用の変化も重要な要因として挙げられます。スイスでは都市化の進展や他の農産物への転換が進行しており、ナシ栽培に充てられる土地面積は縮小しています。また、農業従事者の高齢化や労働力不足、小規模な農家への支援不足など、構造的な課題も影響しています。この傾向は他国とも共通している部分があり、日本やドイツも果樹園農業における似た課題と向き合っています。ただし、これらの国々では品種改良やテクノロジーの導入による効率向上の取り組みが進められており、スイスにおける参考事例となり得るでしょう。

さらに、1970年代と現在の生産量を比較すると、価格の国際競争力や輸入品に圧されている事実も浮かび上がります。ナシは必需品というよりも嗜好品としての意味合いが強く、安価で収穫量の多い国々、たとえばアメリカや中国といった主要ナシ生産国からの輸入が増加する中で、スイス国内生産は相対的に縮小しています。

将来的な対策として、まず気候変動に対応した持続可能な栽培技術の開発・導入が急務です。品種改良によって気候変動に強い耐性を持つものや、高温でも収穫が安定する品種の育成が望まれます。また、先進技術であるスマート農業を普及させることが有益です。具体的には、ドローンやセンサー技術を活用して効率的に収穫や水やりを行い、生産性を向上させることが期待されます。

さらに、農業教育の充実や若者の農業参入促進に向けた政策も必要です。例えば、スイス政府が若手農業従事者に対して補助金や税制優遇を提供することで、労働力不足という深刻な課題に対応できます。その際、地域間の連携強化も重要です。他のEU加盟国との知見共有や市場の拡充により、スイス産ナシの付加価値を高める機会が生じるでしょう。同時に、国内マーケティング戦略を強化し、地域性を生かしたブランド化を目指すことも成功の鍵となります。

最後に、新型コロナウイルス感染症やその他の疫病の影響にも配慮が必要です。2020年から2023年の間にも農業労働力や物流が影響を受けたことが生産量に関与している可能性が指摘されています。このようなリスクに備え、より柔軟で強靭なサプライチェーンの構築が重要です。

結論として、スイスのナシ生産には多くの課題が存在していることがデータから明白であり、その多くは地球規模の気候変動や国際市場の動向と深く関わっています。しかし、これらの課題に立ち向かう具体的な対策を着実に実行することで、環境持続性を守りながらナシ生産の回復と発展を実現することが可能です。国際共同体の協力を求めながら、スイス独自の農業文化を守りつつ、新たな価値を生み出す戦略が必要とされる時期に来ているといえます。