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スイスの馬飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、スイスの馬飼養数は1961年に95,071頭でピークを迎えた後、1970年代まで急激に減少し、その後は安定傾向を示しています。近年は2000年代に再び増加の兆しを見せましたが、2010年代後半以降には再度やや減少しています。2022年の飼養数は47,564頭で、ピーク時の半数程度に留まっています。

年度 飼養数(頭)
2022年 47,564
2021年 47,121
2020年 46,980
2019年 47,076
2018年 45,906
2017年 55,535
2016年 55,662
2015年 55,479
2014年 57,200
2013年 57,243
2012年 58,031
2011年 57,246
2010年 62,113
2009年 60,156
2008年 58,969
2007年 57,720
2006年 56,400
2005年 55,126
2004年 53,701
2003年 52,672
2002年 51,236
2001年 50,116
2000年 50,347
1999年 48,509
1998年 46,297
1997年 45,799
1996年 43,021
1995年 45,800
1994年 51,400
1993年 54,257
1992年 51,700
1991年 49,000
1990年 45,300
1989年 48,100
1988年 49,190
1987年 47,700
1986年 47,900
1985年 46,300
1984年 47,880
1983年 46,325
1982年 45,000
1981年 44,880
1980年 45,010
1979年 44,550
1978年 45,770
1977年 46,070
1976年 46,620
1975年 47,150
1974年 48,020
1973年 46,742
1972年 47,400
1971年 49,660
1970年 52,650
1969年 55,740
1968年 59,140
1967年 61,600
1966年 67,022
1965年 72,500
1964年 76,000
1963年 82,000
1962年 90,000
1961年 95,071

スイスにおける馬飼養数の推移は、国の経済、文化、農業の変遷を反映した興味深いデータです。1960年代は馬が重要な農業用の労働力や輸送手段として役割を果たしていました。当時、国内で最大95,071頭が飼育されており、馬の需要は経済活動や農村地域の生活を支えるために不可欠でした。しかしながら、同時期に農業の機械化が急速に普及し、トラクターやその他の農業機械の導入によって1950年代後半から馬の使用が減少していきました。この影響で、1970年代初めまでに飼養数は急激に減り、1969年には55,740頭と約40%の減少を記録しました。

1970年代以降、減少ペースは緩やかになり、一部の年では微増を記録するなど、飼養数は安定し始めました。この時期、馬が実用価値からレジャー、スポーツ、文化象徴の対象へとシフトしていったことが背景にあります。特に欧州全般では、乗馬スポーツや趣味として馬を飼う文化が徐々に広がっています。しかしながら、1980年代から1990年代前半は経済的要因や飼育環境の整備不足などの課題が影響し、飼養数は45,000頭前後で推移しました。

2000年代に入ると再び増加の動きが見られました。特に都市部や農村地域でレジャー目的の馬の飼育が拡大しました。2008年から2010年にかけては飼養数が60,000頭を超え、近年のピークを迎えました。しかしながら、2011年以降は再度減少の兆しが現れ、2018年には45,906頭にまで減少、2019年以降は減少から回復しつつあるものの増加幅は小さく、2022年には47,564頭に留まりました。

この動向は幾つかの要因に影響されています。第一に、飼育コストの上昇が、特に都市部での馬の所有を難しくしています。餌やマニュアル(手入れ)、施設費用は年々高くなり、気軽に馬を所有することが難しい状況となっています。また、環境規制の厳格化により、大規模な飼養施設の整備が求められる一方、小規模な牧場や個人経営の馬主が減少する傾向にあります。さらに、近年の新型コロナウイルスの感染拡大といった社会的影響によって観光や乗馬関連施設が一時的に閉鎖されるなど、馬に関わる需要が弱まったことも無関係ではないでしょう。

将来的な課題としては、飼育コストの軽減と飼養数の底上げが挙げられます。具体的には、地域単位での補助金政策の導入や、レジャーや観光分野で馬を活用する取り組みの強化が考えられます。また、環境に配慮した牧場の運用モデルを推奨することで、農業とレジャー双方のバランスを取ることが必要とされています。飼養コスト削減を目的とした地域共同型の飼育施設の建設や、より簡便で持続可能な飼育方法の研究も重要です。

地政学的には、スイスの隣国であるフランスやドイツとの文化交流が馬の需要や価値観に影響を与える可能性があります。特に近年では、観光やレジャーの分野での国際協力が注目されています。地域衝突や疫病の影響を受けにくいスイスの中立的な立場を活用し、輸出用サプライチェーンや育種技術の共有化等も一つの方策となるでしょう。

結論として、1961年から2022年までのスイスの馬飼養数推移は、社会構造、農業、文化の変化を如実に映すデータであると言えます。政策や地域活動の支援を通じて、今後も持続可能かつ文化的価値のある飼養の在り方を模索し続けることが重要です。これにより、スイスは欧州での馬文化の裾野をさらに広げるリーダーシップを発揮する可能性を持っています。